341 布陣

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



3/6 15:10


しんどっ きっつぅ


左側の臓が悲鳴を上げているのを十分に感じ

今にもゲーしてしまうんじゃないかと思いながらもその足は止められない


くっそ、こんなん無理だ

この歳じゃなくても十分はおろか五分だろうと全力ダッシュなんかした事無いんじゃないか?



いや



そんな事も無いか


からくり人形に追われた時以来? はたまた誘拐事件の時なんかも走ってたっけ

それを考えると吸血鬼の館で赤鬼に手を引かれた時が一番ヤバかったか?

言うてアレはアトラクションに近い感覚

そんな事を言い出したら今現在だって幼女の介護があった

と言うか



後半からは女性二人にも引っ張られてた訳で、、



こっちに来てからは比較的健康優良体のくせに


情けねぇ




「はぁはぁ  はぁ はぁ はぁ っぅぷぁ」


大通りを抜けた辺りで路地裏へと入った


両膝に手を置き、息を整え

もはや汗で大半が流れたであろうヌタヌタを改めて拭う


「ほらジン君、これ飲んでもうひと頑張りだよ」

魔女が荷物の中からまた違った色をした小瓶を選び差し出す


「はっ はっ  あ、あざす」


「あいつ等空を飛んでいなきゃそれ程の速度じゃないのだわ、何なら私が二人共倒しちゃっても良いのに」


「んっ ぐっぁ いや いやいやそれは駄目だ  はぁ 引き付けて 判断を仰ごう  ってまっずぅ!」

一気に呷(あお)り

緑色の頭に手を置いたくらいで味覚が駄目になった気がした

がその代わりに思考とお目目はパッチリだ



そう


確かにお嬢一人で何とかなるんじゃないかとも考えたさ

だが以前の件があったから、伏兵が潜んでいるんじゃないかと思い逃げる選択をした


『聖堂まで向かえば何とかなる』


そう考えたのも



シフがいる  と一番に思いついたからだ



俺には戦力差なんて分からない

ましてや数値化されている訳でも無いもんだからバードマン相手に誰なら勝てるかなんて分る筈も無い

戦闘能力で言えば多分カセンなんだろうが、距離があり過ぎる


じゃあどうする?


あまりにも身勝手な考えだろう


戦力、判断力共に優れ頼りになる存在

いや、それだけじゃない

単純にシエルやロゼの様な娘達に頼れない感覚があった


それは、、、


「あのぉ!」


「んぶ?  おあ、え、あ えっと、だ、大丈夫?」

決して牽引してもらっていた側から出る台詞では無いのだが

「怪我とか、あ~なんだ? 気分とか~悪い所無い?」


随分と心配性になったもんだ


少女は半分不思議そうな顔をしながらも

「え?あっ、その辺は全っ然っ! 自分は余裕ですし怪我なんか一切、、何なら機材のが心配ってゆ~ね」

キラキラした瞳であどけなく微笑んでからぶーを垂れ

分かり易い表情を浮かべる


「そっか、それなら良かっ、、た?」 のか?


よくよく考えてみれば


狙われているのは自分な訳で


咄嗟の判断、勝手に連れて来た挙句巻き込んでいるまであるこの状況


コレダカラ


上手く、賢く生きれる連中が羨ましいったら無い


「ジンジンジン! じゃあどうするの?こっから先に高い建物なんて無いのだわ? 空から見てたらすぐ見つかっちゃうけど、頑張れる?」


きっと介護に慣れて来たのだろう

こんな時でも一番気を使ってくれている様で泣けてくるってもんだ


「あぁあのさ? そういえばなんだけどロゼの魔法ってどういう事まで出来んの?」


「へ?」


「いや、なんって言うんだろ 詠唱とかもしてなかったし呪文?とか魔法名を叫んだりもして無かったよな?  って、その辺は後でいっか えっとさ」



・・・



「うんうん、うんうん うん出来る、大丈夫なのよ?  お~ おおおお~!」

幼女は耳打ちをされ何処か嬉しそうに

「その手があったか」的な顔をしてから聖堂方面を向き


両手を地へとつける


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る