123 選択

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



8/29 18:10


「ジン! うるさい、無事じゃ 息はある」


膝から崩れる三十路がメイドに一喝を食らう


「ぶ、無事って お前」


少女?の呼吸は浅く、ぐったりとしている


「急ぐぞ」

カセンは鎖を全て外し終え軽々と巫女を抱える


「待て、恐らく出血が原因だ まずは止血を、、」

ラフィは一度周囲を見渡すが適当な物が無かったのか

「う~、え~っと、カセン殿 すまん!」」

一番清潔だと判断したカセンのスカートを引きちぎると次に背負っていた弓に足を掛け圧し折る

器用なものでテキパキと簡易的に固定する為の器具を作り出し

「巫女殿、辛いと思うが少し辛抱してくれ」

魔法を詠唱、水の魔法で患部を洗浄する


そして


「ジン殿、ソレも固定してしまうので渡してくれないか」


「あ、あぁ そ、そうか そうだ な」

ずっと大事に抱き抱えていたシエルの腕をラフィへと渡す



「完了した! 止血した所で時間の問題だろう、どうする」


「どうするって!  医者、、じゃろ?」

(今から医者に診てもらって何とかなるのだろうか?)

そんな言葉が浮かびカセンの語尾は自然と疑問形になる


「か!回復魔法  なんてものが出来るのって神父さんくらいなのかな!?」


「遠過ぎる、もたんじゃろ」


「すまない、私も巫女殿の様な事が出来る者など聞いた事が無い、バァ様がいたとしても、、助かるとは 思えない」


「、、とりあえずこんな所さっさと出て街の方に向かうんじゃ」




カセンとラフィの走るスピードに追い着ける訳も無く

折れた手首で梯子を登れるハズも無く


二人の荷物になりながら、考える



登った部屋の中を見た時は意識を失いそうなった



異世界転生って何だっけ



ファンタジーって何だっけ



怪我とか、簡単に治るんじゃなかったっけ



違う



そういう事じゃない




何も出来ない自分への悔しさ



今にも消えてしまいそうな大切な鼓動



あまりにも胸が痛い



気持ちが悪い



自然と涙が出て来る





・・・・・・





路地を出たくらいか


「な、なぁ」

エルフにおぶられながら少し間の抜けた声が出る


「む?」

片手に大剣、片手でジンの尻を掴み背負うラフィ  大概この娘も怪力だ


「向かって欲しい所がある」


「それは  私達だけか?それとも     巫女殿もか?」


走りながら、、と言うだけでは無い

少し間のあったエルフの返答にジンも生唾を呑む



時間が無い


いや、時間が無いなど言ってられない

もう

すぐにでもどうにかなってしまうのかもしれない


シエルを失うかもしれない



でも


自分の選択が


自分の選択で



・・・



覚悟を決める




「そこを  右」




「、、そうか  カセン殿! そこを右だ!!」


少女?を抱き抱え先を走るメイドが振り向き



「分かったぁ」



泣きそうな大きな声が響いた














一度だけ店にも来たか?

ツンツンした青い髪の青年と入口で目が合った 気がした


関係無い


ラフィの背中から飛び降り

ビリビリと神経を刺激する振動を余所に扉を開く


「すいません!」

少し汚れた格好で大きな声を上げる


逆の手でその折れた右手首を抱える男を見て周りが少しざわつく


関係無い






























「室長」
















「キドナ室長はまだいらっしゃいますか!?」















三章  完


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