210 神風

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



2/13 15:30


「急ぐからちょっとこの辺にでもいてくれや、エルフの姉ちゃん達!狙いはどこでも良いから注意をこっちに向けれるか!?」

エルフの男を地へ降ろすと弓兵二人に向けて声を上げる


「、、注意、ね  カエデ」


「うん」

二人は顔を合わせ頷くと腰元の箙(えびら)から合図用の鏑矢(かぶらや)、小さな仕掛けの付いた物を選ぶ



ポーン!



コーン!



少し変わった高い音を鳴らし

猫達が喫茶店の扉を閉じた頃合いで化物の腹と尾の落ちた尻へと刺さった


「ブロォゴォアアァ」


建物を丸々焼く予定だったのかライオンの口から多少の火が漏れた


「お!良いね~ナイス」

天狗の面をした白装束の男は軽口を吐くと背に携(たず)えた矛を構える





その後は早かった



エルフ達は目を疑った


いや、刮目(かつもく)した



先程までの苦戦は何だったのかと呆れてしまう程に圧倒的な



スピード



ソレはほんの数秒の事だった



翼を大きく羽撃かせ、空へと戻る烏天狗

化物は矢が放たれた方向に向き直し、叫ぶ声と共にエルフ達の元へと駆ける

モミジとカエデ、弓兵二人は(コレ 大丈夫なんだよね?)と不安になり腰元の矢に一度手を伸ばすが、、


目線の先


それはまさに神風

まるで戦闘機、ゼロ戦が如く落下した


急降下したソレは激突と同時、特大サイズの鷲(わし)が狩りをしたかの様に再び斜めに空を上がる


その一撃、と言う言い回しで良いのだろうか

ライオンの首元を抉りながら肩方面へ進み、山羊の頭が生えている根本部分から燕(つばめ)の様に宙へと反転した


随分な量の肉と同時に首を撥ね、円を描くように滑空すると腰から後ろ足までを斜めに切断した





「マジかよ」


「何、アレ」


「死んだ、よね?」


フラグかの様にライオンの頭部が悲鳴を鳴らし前足をバタつかせるのだがそこから火を噴く様子は無い

半分以下になった上半身は見るも無残に辺りを汚しながら這いずり回る


しばらくすると一度だけ詰まった雄叫びを上げ、動きを止めた



「魔族とかそういうのだったのかな?」


「でも魔族って再生するとか聞いてたけど、、生き返る、とか無いよね」


「あぁ、念の為燃やすか、、ってえ いって!いっててて」

スティルは足を引き、起き上がろうとして自らの痛みに気が付いた


「あ、怪我人なんだっけ」


「どこ?どこ折れた?」

モミジが駆け寄り触診を始める



白装束、いや見事に染まった男は少し距離のあるエルフ達をちらりと確認してから矛を振り

片足の折れた少女の元へと足を向ける



「はぁしかしまぁこんなにもか、おいそっくりさんよ、どうせ聞いても喋ってくれないんだろうけどしばらくは  っと、よっ!」


もちろん反撃して来るのだが軽々といなし、そのまま手首を掴むと強く引く



ブキン



と肩か肘から骨の動いた様な音がした


「いっ! ぐぅ、ああぁ」

脱臼したのだろう、もう片方の腕で抱く様に固定する


「いやそんな動きじゃ勝てないでしょう、あんまり怪我させるのもなんだから動くなって、お~いキビ!もう大丈夫だから紐持って出て来~い」


「了解です、けど隊長! 隊長!!」

喫茶店の扉が開き


キジ柄の猫が騒がしい






ライアの参戦によりキマイラの討伐と少女の拘束に成功した


建物、喫茶店自体には傷一つ無い


無いのだが、、、


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る