144 焦燥
本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい
12/14 5:30
「ほいよ、道中にでも食べて」
「わざわざありがとうございます、本当に毎度助かります」
「良いって良いって、ささっと帰って来て欲しいもんだけどとりあえず気を付けてね」
「えぇ、じゃあ そろそろ行くよ」
金髪金眼の青年が宿舎の方を何度も見返すエルフに声をかける
「む、あ あぁ」
「はは、あいつらには宜しく言っておくって、ラフィも気を付けんだよ」
「うむ、ジン殿も達者で」
・・・
(さ~てっと、俺も少し寝るかな~)
二人の姿を見送ると亭主は再び店へと戻り、座敷へと腰を掛ける
「普通にお店閉めて布団で寝たら良いんじゃないんです?」
「いや、それはダメ せっかくポロポロ来てるお客さんを裏切るわけにはいかないよ」
(言うても女子目当ての客は帰りかねないけど)
「今回は戦える人が誰も居なくなってしまうので本当は閉めておいて欲しいんですけどね~」
巫女の従者が困り顔で準備を進めている
「ん~、あ~まぁそうなんだけど~店には今まで特に何も無い訳だし」
「少なくとも一度殺されかけてるんですよ?」
「う˝ そう、なんだよ~な~」
ジンは気まずい表情で逃げる様に黒猫を抱き抱える
そう
注意すべきはいつ現れるか分からない異形の者だけでは無い
巫女暗殺を企(くわだ)てていた魔族
その件でもいる筈の黒幕は分からないままだ
それに
魔物討伐時に出会った男
ももに助けられていなかったらジンはすぐにでもやられていただろう
「閉めて、、おく~?」
「まぁ閉めておいてもそう大差は無いかもですけどね」
「手の平返しヤメテ」
実際そうだろう
そんな連中が来てしまったらジン一人で抵抗出来るハズも無い
だが今回は誰かに残ってもらう訳にもいかない
「さて、準備出来ましたので女性陣起こして出発して来ますね? 最終確認ですが、、」
「あいよ、うん、、そうそう ラフィならその辺、この辺りの位置で森の中での戦いをするだろうってさ」
地図に指を滑らせ、ディーン王国と大きな森を辿らせ大体の位置をシフに告げる
「こんな寒空だからこそ何でしょうかね~、エルフもたくましいな~」
「ホント、ソレナ」
「ラフィ」
「どうしたバル、、いや、モーズ」
「うん、まぁややこしいのはごめんだけど しかし、凄い獣道だね」
二人は草木を掻き分け、道無き道を拓(ひら)きながら一つ目の峠に差し掛かった所だ
「バルならこの道でも問題無いと思ってな」
「確かにこれじゃ馬は使えないね、、戦の件どう思う?」
(もうバルになってるけどめんどくさいから自由に呼ばせておこう)
「う~む、そうだな~、、百歩譲って頭の固いジィ様達だけならまだしも、モー、、いや、バル バル王子もいるんだ 私としては王国側から攻めて来たから防衛しているものと考えたい、無論どちらが悪くても私が止めてみせるから大丈夫だぞ」
何度も自分の中でエレベーター、エスカレーター現象と戦いながらも一応は長、始まってしまっている可能性も視野に入れている様だ
デコられた大きな剣に引っかかっている蔓(つる)や枝、雪を綺麗にはたき落としながらラフィはニコリと微笑む
「そう、、だね」
すんなりとその微笑みに答える事がどこかで引っ掛かった
彼は考える
王子がエルフを率(ひき)いて事を起こしているのなら恐らく、、キドナ関連
だが
何故王国と戦う? キドナは王国内とも通じている? だとしたら、止めるのだとしたら、キーになるのは、、王?
ディーン王とバル王子が会って話をすれば片付くか? 会える様に道を開ける、、ダメだ被害が大きくなる 攫う?
いや、まだだ、手法は後だ
どちらにしても王子に話を聞くべきだ、急がないと
だけど
もし、、
その時、俺は
誰と戦うのだろう
ギルドのコルクボード
目立つ様に張られた依頼表
目に入らないはずも無い
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