170 製菓
本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい
2/10 13:30
「も~! もお~」
ツインテールを揺らしながらカチカチと足を鳴らし、少女が牛の様に唸っている
「すまんって、ごめんごめん本買って来たら作れるから大丈夫だって、痛い 痛いってばそんな叩くなって」
痛がってはいるが顔はにやけている
「も~本のお金はジンが出すんだからね~」
「え~しょうがね~な~」
(まぁそれくらいは全然出させて頂きますとも)
「カカカ、なんじゃやっぱりここの男連中はドエムばっかりじゃの~」
赤鬼が茶々を入れつつおかわりとばかりにカウンターを横切り、保冷庫へと向かう
「いやいや、聞き捨てなりませんよ?ジンさんはまだしも、自分はそういう趣味じゃないんですよ?シエル様が勝手に暴力を振るうだけで」
「ぁ?作り方くらいお前が教えてやれば良いだろうが」
『甘い物』と言う単語に釣られたのか、猫達のおこぼれを横から摘まんでいたせいで少し汚れた手を拭いながら従者の頬をつねる
「っぃっててて ほら!見ました?頬っぺた油っぽくなっちゃったじゃないですか~」
理不尽ではあるのだが、もはや可哀そうなどと思う者は此処にはいない
「え?シフ作れるの?」
従者の頬には微塵も触れず、カウンターから声を上げる
「えぇ、簡単な物であれば作り方くらい分かりますよ?」
「本当!?な~んだ、ジンになんか聞かなきゃ良かった~」
「なんか言うな、なんか あとその顔ヤメナサイ」
残念な人を見る様な少女の口をむにむにと掴む、きっとコレも世間ではセクハラと呼ぶのだろう
「あ、ひょうら、ひえうもちゅくろうゆ」
ハラスメントに慣れてしまっているのか、はたまたどうでも良いとでも思っているのか
アルは三十路の手を雑に除け、気にせず言い直す
「ねぇ、シエルも一緒に作ろうよ!シフにあげた方が良いでしょ?」
・・・
「はぁん?」
巫女もまた残念な人を見る様に
いや、視線はそうなのだが
ひん曲がった口と何とも言えない表情、それはそれは酷い顔でアルを見上げている
「お~!?ぷっ くふふふ、あっはっは!なんって顔しとるんじゃ」
救世主が大きめな酒瓶を片手に豪快に笑う
「可愛い顔が台無しじゃぞ?ほれ、シエルも飲むが良い」
「ちっ」
舌打ちをしながらもくるりと反転し、足早に赤鬼へと向かう
「え~一緒に作ろ~よ~なんならカセンも~」
(折角助かったのにアルもめげないな)
「昼から飲むのは良いけどそっちの情報収集は良いの?」
直(じか)に聞くのは怖いのでシフの方を見ながら様子を伺う
「えぇ、ゼブラ様への報告 それから考察もお聞きしましたし、上手い事王都側からディーン王国への牽制(けんせい)もすると思いますよ」
「ん、う~ん?政治的な事はイマイチ分からんしあの人の良さそうなお父さんがどんな事を出来るのかも分らんのだけれど?」
真似した訳ではないのだけれど?ついつい猫達に翻弄(ほんろう)されているエバを見てしまう
「ふふ、そうですね~例えるのなら」
今回は簡素な例え話をしながら教えてくれた
「A君とB君は仲良しです、B君はC君が嫌いです、ですがA君がC君と仲良くなりました 簡単に言えばこんな所でしょうか?」
「雑っ! 先生~もうちょい丁寧に、物分かりの悪いお兄さんに中身も教えてくんなまし」
多分からかわれていると思ったので乗ったのだが
違うらしい
シエルが構想する内容
要するにだ
ディーン国側の誰かが本当にエルフ、いや バル王子を襲撃、殺害したのだとする
しかしそれが生きていて、エルフの族長と異形の討伐を始めた
しかも同盟先の名物みたいな存在の巫女までもがそのエルフ達と同盟を組んだ
極めつけにゼブラ神父が王都側の王、ディーン王国へと上手い事アクションを起こす
そりゃ一層簡単には手が出せなくなる筈
なのだが
「抑え込んだんだ、確実に、近々何かを仕掛けて来る」
飲みながら巫女が口を挟む
そう
此処、喫茶店『ギルド』は何処の国とも関係が無い
バル王子
戦姫ラフィ
巫女シエル
狙いたい人物が国同士の関係無い場所に屯(たむろ)している訳だ
襲うのには格好の場となっている
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