59 族長
本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい
私が族長になったのは10年前だ
10年前のあの日
両親は魔族に殺された
母は先代のエルフの長だ
優しくて、美しくて、どこかふわふわした様な人だった
【うんうん、今日もラフィは可愛いな~食べちゃうぞ~】
父は常に大きな剣を背負っていた
あまり喋らない人だが強く、勇ましい 私の憧れだった
【強くなりたい?、、、お前がそうならない様には努めたいものだ】
そんな様な事を言う人達だった
二人の出会いは
森で大怪我をしていた父を族長の母が助けた、そんな昔読んだ絵本の様な内容だ
異質な父の存在はジィ様方にはめっぽう忌み嫌われた
【姫様、外の者と関わるのはどうかお止め下さい】
【貴様はさっさと森から出て行け!】
しかしエルフの長である母の優しさには誰しもが敵わなかった
意見する者はあれど、反発する者など誰一人いなかった
しばらくして私は生まれた
無論、生まれたばかりでも純粋なエルフでは無い私はジィ様方に色々と厳しく躾けられたものだ
父はエルフの為に一生懸命働いた
弓の扱いに長けており、狩りをすれば誰よりも活躍した
危険が迫った時には一番に立ち向かい仲間を守った
寡黙な父だが村での評判も良く、徐々に父と私への非難は気にする程でも無くなっていった
外の者としての扱いが無くなってからは村の者達と話す事も遊ぶ事も楽しかった
柔らかな母が大好きで、父を誇りに思った
この世界は素晴らしい物なんだ、そう思っていた
7歳になったある日
怪我をした男を母が連れて来た
父の様な前例がある為村全体でもそれ程気にされる事は無くむしろ歓迎されていた様にも見えた
すぐに事件は起こった
私と父が狩りから帰った時だ
村の入り口で何人かが無残な姿で死んでいるのを発見した
それを目にした父はすぐに母の元へと急いだ
待っていたのは最悪な光景だった
怪我をしていたハズの男が
母を食っていた
その時が最初で最後だ
父がこの剣を抜いたのを見たのは
初撃で男は首を落とされると奇声を上げ大きな亀の様な化け物に変貌した
加勢出来る者はいない、、村全員が見守る様な激しい戦いだった
結果、父は魔族に勝利した
化け物の猛攻で深手と共に毒を負っていた為
バァ様が森の奥地から呼ばれた
しかし
薬に効果は無く
父は半月持たずに亡くなった
亡くなるまでの数日間
普段喋らない父は傍で泣く私に気を使い色々な話をしてくれた
森の外には『ウミ』と言うそれはそれは大きな池がある事 『サザナミ』を聞かせ『イソノカオリ』がするのだとか
『神』と言う者が存在し世界のバランスとやらをとっているだとか
それと
【ラフィ、お前にはこの剣が扱えるはずだ 強力なモノだがコレは血を欲しがる 必ず、守る為の力として使うんだ】
父から剣を受け継いだ
私はその後しばらく薬師のバァ様に預けられる事になった
恐らくは、村を守った英雄の娘でも『外から来た者』への不安要素もあったのだろう
【族長があの男を連れて来なければ、、】 聞こえてしまった
あの男がどちらなのかは分からなかった
バァ様は私の手を引き言った
【恨んではいけない】と
【立派な両親の生き方を間違いの様に思わないでね】と
バァ様には色々な事を教えてもらった
薬の事はもちろん ハーブや野草 森の中での生き方、、、生きると言う事
沢山本も読んだ、少しだけ縫物も教えてもらった
欠かさず鍛錬も行った
・・・
・・・
・・・
『血を欲しがる』?
「血が、、欲しい」
私はいつも通り、守る為に剣を抜いたんだ
「血が、、欲しい」
あぁ、、、そう言う事か
「血が、、欲しい」
だったら!!!!
眼前に噴いた怪物の血を貪れ!!
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