74 飲処

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



8/15 21:30


カランカランカラン


「こんばんわ~ 今回は何を捌いてきましょうか?」


行商人は輸入元の店にて挨拶を交わす


「あぁ、リッツさんかい 今回も野菜が大量に取れたからコレをお願いしたいんだよ~」

しっかりした体格の亭主が奥から顔を出す


「これまた大量ですね~、積むのも一苦労になりそうな」


「ははは、それは大丈夫だよ 丁度良い!サービスするんでリッツさんは酒でも飲んで行って下さい」


「え?良いんですか!? 嬉しいな~」


「お得意様ですんでね、お~い!坊主言ってたもんリッツさんの荷馬車に積んで来い」



「はい! ただいまお持ちします!」

明らかに働くにはまだ若い少年が木箱を運ぶ


「中身は野菜、ナマモノだからな 雑に扱うんじゃないぞ? 嬢ちゃんの方もお得意様が来たんだ、隣でお酌してみるんだ」


「ぁ は、はい!」

ドレスを着慣れていない少女がおずおずとリッツの隣へと座る


「随分と若い子達を雇ったんですね~、、、って いやいやいや若過ぎませんか?大丈夫なんです?」


「そう見えますよね? 信用、、するしかない恩人様に紹介状ももらってるんで大丈夫ですよ~」


「そ、そうなんですか」

(いや、絶対違うと思うけども)


「はっはっは、まぁ人手も欲しかったんでね!! いや~敵いませんよ~」



そんな事は重々承知なのだ

ただ、そんな事がどうでも良いと思えるくらいの恩人の頼み

それとこの子供達の真っ直ぐな所が亭主は気に入っている







「さ~て、そろそろ宿へ戻りますね?」

リッツは席を立つ


「そうかい あ、そうだ 今度寄る時で良いからこの辺の物も追加でお願いしたいんだけど」


「あ、了解です 明日にはディーン大国に向かいますんでその辺なら揃えられると思います   では、また来ますね」

亭主から輸入依頼書を受け取ると表へ出る



「無事、荷台へ積み終わってますので ご、ご確認お願いします」


「また、いらして下さい」


「あ~、わざわざありがとう あ!そうだ」

リッツは先程買い取った商品の中からいくつかの小物を手に取り

「コレどうぞ!」

出迎えをする姉弟へと渡す


「え、いや!受け取れません」


「そうです、私達来たばかりでお金も無いですし」


「そんな深く考えなくても  ただのプレゼントだよ、お給金が出たら僕から何か買ってもらえるようにって お近づきのご挨拶みたいなものだから   さぁ選んで」


「で、でも、、、あ! そうしたら お給金が出たら! お酒を売ってもらえませんか?」


「え、君達が飲むの?」


「いえいえ、贈り物なんですが  なんなら配送もして頂けると助かります」


「あ、あぁ それなら良いか」

(流石に本当に何か買ってもらうつもりは無かったんだけどなぁ)





「ありがとうございました~」


「また、お待ちしております」


大事そうに本を抱く姉弟は馬車が見えなくなるまで頭を下げ続ける





(やっぱりあれくらいの年齢の子達だと本なのかな~、良い子達だったなぁ   若過ぎるけど、、、)



(時間が出来たら僕もチエさんの本読んでみようかな?)



(明日はディーン王国か、あそこも大手様だから宿に着いたらもう一回伝票まとめないとな~)












(ふぅ、あれ? これって昨日のお城宛の伝票?  発掘品の運搬だったはずなんだけど 確認してもらったしお金もあってるから、、良いのかな?   あっちに戻るのはまだ日にちあるからメモだけしておくかな)







「えっと 品名? これで良いのかな?」

































「グングニル   っと」












こうして商人のいつもの一日が終わる

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