298 風道

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



2/25 16:30


「うわっ なんだ?  急に、、風?」


進む先、前方方面から急な突風が吹き寄せる


「お~お~こりゃ~あれか? どっかに通じてるっちゅう事かの  こんなん火ぃ焚(た)けんじゃろうし一度帰るか?」

自称神様の言い回しはこんな時でも呑気(のんき)に聞こえる

だが荷が随分と軽くなってしまったせいなのか若干帰りたそうな空気を醸(かも)し出している


「え、えぇ まぁ通じてるとは思いますが急過ぎません? 流石にこの風圧は    まるで」

「今『開いた』んじゃね?」

突如(とつじょ)ビュービューと吹く風に銀髪の少女?が迷惑そうに声を上げる


「って事は、タイミング的に仕組まれてますかね!?」


「さぁどうだか、雰囲気的にそろそろ居るんだろうしありえるかもな」

巫女はまだ灯ったばかりの火を「消すまい」と自ら風除けに立ち直す


そして不機嫌そうに眉を寄せ



両手を擦る



「えー緊張感が仕事してない!  いや余裕なのは良いんですけど巫女様の体積じゃどちらにせよソレ消えちゃいません!? とりあえずこっちで油足すんで感知お願いします」

伊達にこの面子(めんつ)らと一緒にいる訳では無い

締まりの無いリアクションにツッコミを入れつつ荷物を漁(あさ)る


「ちっ、しゃ~ね~な~」

口惜しそうな表情で前方を向き直し、一度舌打ちをすると目を瞑り




詠唱を始める




奥へ奥へと進む三人に怪我という怪我は無い

言うならばここまでが狭い空間だった為、青年と赤鬼が何度か頭を打った程度だ

シエルの発光、詠唱に合わせカセンとバルは準備運動を始める


巫女の考察ってだけでは無いのだが『何かが居る』のは分かっていた


そもそもドワーフ王とのやりとりでは「開発地区付近を魔物に住み着かれてしまってな」 だった

それに対し、案内役 ギンからの依頼は「奥の、元凶までやってくれないと困るからね?  あ、そうだ 証拠として心臓を持って帰って来てよ、そうしたら土産に一つ魔宝具をあげるからさ」

と 親玉がいる前提な事を吐いていた辺り『何か』は知性持ちでは無いかと踏んでいた訳だ


、、台詞を聞いてから別の内容の方が引っ掛かったのだが(帰ったらじっくり尋問してやろう)と考えているのは言うまでも無い



巫女の発光が弱まった辺りで赤鬼が手甲を装着した


バルも灯した火が消えぬ様、出来る限りの風除けを設置してから



構える





「駄目だ  全っ然分からん」


巫女は字の如く、お手上げと小さな両手を広げ憎たらしいトホホなポーズで舌を出す


「エー」


「ぷ、ふふふ あっはっは、シエルは此処に来てから何もしとらんのぉ」


「うっせぇよ 存在してるだけでも有難く思えボケ」


悪びれる様子などある筈も無く、赤鬼の方もスルーして続ける


「どうしたもんかのぉ、穴か何かが開いて通り道になったんじゃこの風止まんじゃろ」


「俺が少し様子見に行って来ましょ、、」



「え?」


松明を掲げ


前方を照らした青年は目を見開いた


「なっ?  は!?」


確認出来たソレに巫女も間抜けな声を溢す


「カカカカそうかさっき穴が開いたって訳じゃあ無かったっちゅう事か」


赤鬼だけはいつも通り、いや、寧(むし)ろ合点(がてん)がいったとばかりにスッキリ顔である



考えてみれば成程納得(なるほどなっとく)の答え


もしこの先が行き止まりであるのなら今まで倒した魔物だって異形と同じ様に『沸いて出た』と言う事になってしまう


それは違う  そんな事はあり得ない


単純明快(たんじゅんめいかい)であり至極(しごく)簡単な事


トンネルの様な幅、穴は最初から開いていたのだ


ただ


ソレを塞いでいた



巨大生物が先程向きを変え隙間が出来ただけ



あちら側も別の入口ってだけの話だ



「しっかしこりゃまた」


トカゲの様な黒々とした鱗


「とんでもないのがおったもんじゃのぉ」


蛇の様に長い首




そう











ドラゴンである

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