87 心境
本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい
8/23 13:50
ギルド一行は王都の南門付近で馬車を止め、円となり打ち合わせを始める
「ここから少し行った所に旧王都の城があるんですけど、ソコを根城にしている魔物達がいるみたいですね」
「知恵持ちなのか雨避けなのかは分からん」
従者が地図をなぞりながら巫女が説明を始める
「報告からするとクソめんどくせぇが昨日言った様にかなりの数がいるらしい」
「かなりって、随分アバウトじゃない? この人数でどうにか出来る系なの?」
「あくまで旧城跡地だ、残ってるのなんて少し大きい廃墟の砦みたいなものだ まぁ、何がいるか分からないから赤鬼投入って訳だ」
アルの当たり前の意見に自然と返答するシエルは何か新鮮に見える
「お~、あっしの扱い雑じゃないかの? しっかし、こんな近くで兵を出せないとなると国としてどうなんじゃ?」
「、、兵をこっちに割けないとは書いてあるが恐らくは、『天狗山』が理由だろうな」
「う~む、やっぱり国ってのはアホじゃの」
「はいはいは~い! 俺にも分かる様に噛み砕いてプリーズ」
いつも通りにジンが従者に助けを求めるが
「地域の把握ぐらいしておけよ、あれじゃないか? お前良い機会だからその砲台で砦に王国万歳してみたらどうだ?」
いつも通りに巫女の悪態が止まらない
南街区からすぐに見えるか見えないかの旧王都城
そのまま南へと進むと『天狗山』という山道に続いている
これは以前カセンから聞いていた 王都より【もっと大きな山ならあるぞ?天狗が住んでるとかなんとか】と言っていた山だ
どうやらこの山から先が火の国の領土なのだとか
「え?待って待って、それって魔物とかじゃなく火の国から侵略って可能性は無いの?」
「ありえんよ、火の国は領地拡大なんぞ望んでおらん」
「う~ん、そういう事では無く その奥が火の国の領域だから王都からは兵を出さない、、いや『出せない』って言うのが正しいですかね」
続けてシフがもっと砕いた追加の説明をしてくれる
旧王都城までが王都の土地 その先が火の国の土地
なので今回の旧王都城までは王都から兵を出しても良い物だとは思うのだが、天狗山の住民はエルフの森と同じく『独立している存在』なのだとか
その為王都側の考えとしては余計な火種が生まれるのを懸念し、大人数を動かす事を怖がっているんじゃないか?
と言うのが巫女らの見解だ
「はぁ~、なんか歴史の中のやり取りみたいだな~」
(ゲームや漫画みたいにモンスター出たー倒したーじゃダメなのね)
「なので今回は跡地の処理までが任務となります」
「私も一つ良いか?」
エルフが手をあげ、口を開く
「その魔物は何故そこにたどり着いたのだろうか? 山から自分達の住処を追われて、、と言う事は考えられないか?」
全員が少し間を置いた
そんな中頬杖をついていた巫女がチラリとラフィを見て返答する
「あるかもな」
「だとしたら、根城の主とカラス山の人達と話をした方が、、」
「自分達と関係の無い土地で魔物と他国の大規模な同盟条約ってか?」
間髪入れずに大人の言葉が理想論の様な思いに突き刺さる
「う、うむ 出過ぎた真似かもしれないが」
「ちっ、、めんどくせぇ」
頭を掻き、ぶっきらぼうに吐き捨てる巫女だが、、
「じゃあお前が赤鬼と先陣切れ、殺そうが殺されようが好きにしろ、ただし! 話し合いをするのは知恵持ちだった場合のみだ」
もしかしたら視野に入れていたのかもしれない
「巫女殿!」
エルフの表情が明るくなる、が
「と言いたいところだが、今回はダメだ!」
上げて落とされる
!?
「、、一度うちのクソジジイも試した後でな、やりとりで頭まで届かなかった可能性はあるがソコソコ信憑性のある情報だ 十中八九危険度が増す、、それでも嫌なら帰れ」
「そうか ふむ、なるほど 巫女殿がそう言うのだからそうなのだろう、すまない 時間を取らせた」
「ちゃんと吹っ切れよ、、そんなんで怪我されてもシャレにならん」
「あぁ、大丈夫だ 承知した」
ラフィも生半可な気持ちで聞いた訳では無い
巫女がいくつか走らせているであろう思想に触れられた事で満足した様だ
そしてシエルも心境の変化なのか、シエルなりに 少しだけ 言葉を選んだ様に見える
「お~話はまとまったんか~?」
赤鬼がリッツから酒を受け取っている
(え、何その状況)
「最悪お前一人で片付きそうだから別に何も言わねぇが、、ガキら、頼むぞ」
「お~! あっしが頑張ってほんわかぱっぱしたらえぇんじゃな?」
赤鬼がにししと笑い、手持ちのモノを呷る
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