88 戦闘

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい。



8/23 15:20


「、、っでなんで俺だけが留守番かな~」


南門入口でギルドのマスターが一人、馬車の番をしている



(確かに戦力にならないし? むしろ守られるポジションだから邪魔にはなっちゃうかもだけど、、なんでリッツは良いんだよ)

ジンは若干不貞腐れ気味に先程王都で購入した荷物達の中から一本の鉄の棒を取り出し、しっかりと革紐を巻きつけていく


「よし、完成」

馬車から少しだけ距離を置き、ソレを握ると野球のバット感覚で素振りを始める



(戦い方っての見ておきたかったんだけどな~   いざって時に怯みたくないし)


(そもそも魔物ってどんなのがいるんだろうな~ 機械人形は魔物じゃないんだろうし、スライムくらいしか見た事無いぞ?)


(あの異形、カマキリの化け物は魔物じゃないって言ってたし、、、)



自然と



(こんな鉄の棒一つじゃ何も変わらないか?)



素振りをする手に力が入る



(くそ、くそ!  ちくしょう!!)




物語の主人公であるこの男

先程王都内での買物にて初めて武器屋へと足を運んでみたところだ


様々な物を見て触り、実際


手にも取ってみた


まぁ情けない  と言うよりソレはごく普通の、当たり前の話なのだが、、



一般男性平均だ

米俵であれば腕を振るわせながら腰辺りへ持ち上げる事が出来る程度


しかしそれは『持つ』と言う行為だけの話であって

少し考えれば分かる事だ


鉄で出来た長さのある剣

通称ロングソードの重さは約5キロ

槍はおろか、一般の武器でさえも『振り回せる』気がしなかった


(カセンやラフィは別として、シフやバルもあんな物を腰に下げて飛んだり跳ねたりしている訳だ、、鍛錬したんだよ な)


片手剣と呼ばれる物であっても思っていたより重く、とてもじゃないが正確に扱える気がせず

ナイフや短剣の様な短い物ではこちらがやられる可能性が高い

そう考えている中で目に付いたのが店内で売られていた鉄の棒である



(考えても しょうが  ない!)


良くある物語の様に、都合良く剣を振り回す事も出来ないのだと痛感した


(毎日 素振り!  だな!!)


すぐには強くなれないとも分かっている





だけど





身体を動かさずにはいられない















悔しくて堪らない





男は歯を食いしばり、ただひたすらに


何の変哲も無い棒を振り回す


ひたすらに



















「はぁ  はぁ」


何時間振り回していただろう


手のマメは潰れ、汗だくになり無心に鉄の棒を振り続けた


「はぁ  はぁ  今日は、このくらいで はぁ 勘弁 してやるか」

誰がいる訳でも無いがつい言葉が出る


「あ~、疲れた」

ジンジンとする手の平を見つめながらゆっくりと腰を下ろし一息つく


(なんか途中デカイ音聞こえた様な気もしないでも無いな~ あぁ~明日筋肉痛だろうな~、、誰も怪我なんかしてなきゃ良いけど)

ぼけ~っと首と腕を回し、ふと後ろの視線に気付く


「わぁ! びっくりした~  ど、どどどうした? こっちは魔物が出るって事だから戻りな~」


どこかのロリ巫女よりも小さな少女が体育座りをしながらじっとマスターを見ている


「いつからいた?  ははは、運動不足で素振りしてただけだから! 怪しいもんじゃないよ」


・・・・・・


返答は、無い  のだが


ガサササ


横の林から音が聞こえ、犬が顔を出す





いや、犬では無い


「うわあ! なんだ? 気持ち悪!」


大型犬程のサイズのソレの頭部には目と呼べる様なモノが無く

ライオンの鬣(たてがみ)の様にけばけばしたエラの様なものが生えている


「ま、魔物  だよな」


「ゴロロロロロローーー」

何処から音を出しているのかも分からない気色の悪い声がすると同時に少女に向かって駆けだす


(やっべ!)

「あぁあ! くっそぉおお」



「やってやんよおお!」



普通の男が

何の変哲も無い鉄の棒を握り


少女の前に立つ

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