77 脱出

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



8/21 5:30


「、、、ぇ」





「ねぇ」




「起きて」



アル? の 声?



「ねぇ」



「ねぇ~え!」



「ねぇってば~」



「おら! 起きろ」



ドカ



無情に

亭主がうつ伏せで眠っていた机の脚を蹴るのはロリ巫女だ


「うえはあああ」

つい 変に高い声が響いた



見事に三十路がテンパる様子である



「うわぁカワイソ」


「ちょ、シエル様」


「ジンさん、結構頑張ってたのに、、」


「巫女殿、もう少し優しくふふ、起こしてあげても良くないか?  くっ ぷ、くすくす」


「あっはっは出たな うえはあああ 容赦ないのぉ ぷぷ、くふふふ」


「おはよう、マスタージン 話の途中で眠ってしまうなんて、アナタも失礼な人なのね」



「え、あ え?  あ、あぁ お、おはよう」

円形に囲まれ半分程の蔑(さげす)む視線に冷静さを取り戻す


「腹減った、さっさと帰るぞ」






一行は支度を整え、ドールエバの言う道順に従い早々に遺跡を脱出した

遺跡町からは少し距離がある場所に出たのだが腹ペコちゃんを先頭にグイグイと進む


途中森やら林、獣道にも出たが太陽の方角等を頼りにバルが先頭を変わる


「さっすがベテラン冒険者だな~」


「いや、これくらいはジンさんも慣れればすぐ分かりますよ?」



「そういえば? アルの目標は達成出来たんかの?」


「あ、えっと 帰ってから話すよ」


「いや、クソガキ てめぇは帰ったら説教なんだよ」


何をしたいのか分からないが涙目のアルにエルフが身振り手振りしている


珍しく従者は止めに入らず目的地の遺跡町まで辿り着いた




「さて、一旦どうしましょうか?」

到着と同時に従者が口を開く


「眠いけどまずどっかで飯食う? みんな昨日から食ってないんだもんね? あ!でも待てよ?  ヤッベ!お金そんな持って来てないかも」

三十路がマイリュックを引っ繰り返すが如く漁る


「あ、いや それもそうなんですが、、シエル様?」

従者は神妙な顔で確認する様に主の方を向く


「あぁ、考えたんだがな、、張り紙でもしておいた方が無難か?」


???


何人かが不思議な顔をしているので

「噛み砕いでプリーズ!」

ジンがいつもの様に従者の方を見る





そういえばそうか、と思う様な事なのだが

「王都から送られて来た村長代理が魔族でした」なんて言えるはずも無く

もちろん何も伝えずに帰ると言う事も出来ない

ここの村の中にまだ「そっち側」がいる事も考えられるので大げさにも出来ない

ソコでシエルが考えた策は張り紙

「急遽帰ります、次の代理は巫女様が選定してから来られる為何かあったらギルドまで」

コレを張っておけ! との事


安易だが動く人間がいれば振るいにかけられる為悪くは無いのかもしれない




「分かりました、代理の家自体は封鎖しておきますね」


「一通り調べて何かあったら報告で、、私は何か食う」


「何か食うって金無いだろが!」

さらっと食べ物屋に足を向ける巫女を咄嗟にジンが掴む


「あ! ありますよ  ほら、報酬は普通にもらったので、、、え?」

バルが自分の荷物を漁るが

「あれ? あれ!?」




どうやら落とした様だ




「いや、あんだけバッタバタだったんだししょうがないよ」


「くそ、使えね~な~」


「面目ないです、、働いて返済します」



「いやいやいや! 本当に! 元は嘘依頼だったんだし、ってか調査行ったのもバルだしさ アルも救ってもらったんだ大丈夫だって」


「巫女様の腹は大丈夫じゃないんだが」


「お~まえは関係無いだろ~」


「ある、治療した」


「なんならシエルの為にみんな動いたんでしょ~?」



軽口の様なジンとシエルの言い合いなのだが言えば言うほど一番ダメージを受けいるのはアルだ

エルフが気を使ってまたアルの目の前で意味不明な身振り手振りをしている



「お~お~お~、ま~ま~ま~」

赤鬼が困り顔で巫女らに割って入る

「一旦頑張ってギルドまで帰るしかないんじゃないかの? あっしももう酒切れでコレ持ってんのしんどいんじゃ、馬車に乗っけて来ていいかの?」

その右手には砲台の様な物をぶら下げている


「おおおおい! 何持って来てんだよ、それエバのじゃねえの!?」


「そうじゃが?」


「なんで疑問系なんだよ、、え、何?貰ったの?」



困惑する亭主をよそに聞き覚えのある声が聞こえる


「ああああ! 皆さん! こっちに来てたんですか~」





入口の馬屋で茶髪の青年が手を振っている

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