26 森林

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



8/13 18:30


ギルドから水質調査の依頼を受けたバル

まず初めに北へと向かいエルフの森に入ると北西方面に進んだ


(えっと、この辺が遺跡の村付近、、だから水源はこの辺りから深く入れば良いはずだ)

森への侵入はまだ浅く、最悪村に戻れる程の距離である


(とりあえず今日はこの辺で野宿かな  しかし、依頼表には『遺跡を調査した者が水源も破壊した可能性が』 ってあるけど わざわざ森まで入るかな?)

古代遺跡自体は遺跡の村北部に位置する為わざわざ森に入る意味が無い


(あるとするなら『森が帰る方角?』『最初から村自体への破壊工作?』 もしそうだとしたらどちらにせよ対人戦になるかもなのか)

簡易テントを張り終えると荷物を一通りまとめる


(少し早いけど明日に備えよう)

ジンお手製の弁当を開けると素材がバラバラに包んである

(カラシマヨネーズと燻製肉のサンドイッチ?  わざわざ傷みにくい素材で、、、マメだなぁ)


早々に食事を済ませ 横になる



(ん?)

地に耳が近い為なのか、微かに音が聞こえる



(一人二人じゃないな、、数十はいるか? 早速エルフだろうか?)

襲われないとも限らない バルは剣を腰元に携えテントを出ると大木の陰に身を潜め様子を伺う



・・・



(なんだ? 金属音? 戦闘中か?)



「おおおお」  「ああああ」


徐々に声が聞こえ始める



(近づいて来ている? いや  これは 反響?)


ガキン!! ガチャン! 



(!? 森の外か?)

手頃な木に足をかけ身軽に背の高い木へと飛び移り


森の外  明かりのある方へ目を凝らす






「、、、え?   戦争!?」


南西の方角に港町の明かりが見えるのだが辺りも暗くはっきりとは見えない

その方向からの集団と森から出て来ている集団で争っているのが分かる


(森からの集団はエルフか?  明らかに押されているな なんだ?あのスピード)

そうこう考えていると瞬く間に森の方へと進行して来る



「な!? 化け物か」

やっと確認出来る程の距離ではあるが人間では無い事が分かる


(数は、3~40か?     エルフは森の中にどれだけいるかは分からないな)

木から飛び降りると戦の方面へ駆け出す




「そこの! 止まれ!!」

凛々しく力強い声が聞こえるとバルはビタリと動きを止める



(こんな近くに居たのか? 気配が しなかった)

弓を構えエルフの女性がゆっくりと近づいて来る



「む、人間 か?     戦を見ていたな? 目的はなんだ、あの異形の関係者か?」


「違う! 依頼で森に入ったんだ」

咄嗟に依頼書を懐から取り出す


「今の状況で簡単には信用出来ぬのでな   少しの間拘束させてもらう」


「まって! まって巫女様からの手紙もある  けどそんな場合じゃない  かな?」


「ん?巫女?」


「いや、今は良い! 俺も戦うって事でどうだろう そもそもエルフ達が危なそうだったから助太刀しようと下りて来たんだ」


「助力? 人間が?」

少しだけ考え 頷く

「うむ、分かった 時間が惜しい共に来てくれ」

エルフは弓を降ろし警戒を解く


「あぁ  良かった」


「急ごう」

二人は足場の悪い森林を凄い速さで駆け抜け戦場へと向かう











「姫様!?  なんですか?その人間は」

何人かのエルフ達が後方から弓での援護射撃を行っている


「事情は後だ 監視しておいてくれ  敵の数は?」


「な? 監視って 俺も戦うぞ」


「35といった所です  クモの様な足が鋼の様な物で出来ていますので上半身を狙った方が良いかと」


「ふむ、あの速さ 森に入られたら厄介だ剣を抜く  持って来てくれ」

女のエルフは若いエルフへ弓を放ると体格の良いエルフから大きめの剣を受け取る



「すまんな人間 助力はいらぬので少しここで待っていてくれ」


「ちょっとま」

呼び止めるバルをよそに姫と呼ばれていたエルフは飛ぶ様な速さで異形の大群の前へと出る




「全軍!  下がれ!!」

号令と共に合図なのだろう 角笛の様な音が戦場に響く



戦闘中のエルフ達も音を聞くと次々に後ろへと避難を始める


だが女のエルフは大剣を地に構えたまま瞳を見開き微動だにしない




「姫様!」




ガシャシャシャン


ギッシャアアアアア


クモはもう目と鼻の先だ




「うむ、ギリギリだったな」

全員の避難を見届け

やっと剣を鞘から引き抜く






ヒュン  ヒュン  ヒュン  ヒュン






舞う様にクモの足を掻い潜る


クモの足をかわしたと同時にその鋼の足がバラバラと崩れていく



遠めでは振り回すだけの様にも見えるその動きは素人のソレとは別でどこか美しくも見える


縦に振ったと思えば宙を舞い

横なぎと共に地を駆ける

一振りする毎に地面は抉れ

周囲の景色さえ変えて行く



「流石、凄まじいな」


「戦闘とは思えん」

援護班のエルフ達は手を止め彼女の舞に見惚れている





20分程が経った

森はいつもの静けさを取り戻し  もう異形の姿は残っていない




「ふぅ、大分馴染んで来たが まだまだだな」

華奢なエルフには不釣り合いの厳つい剣を鞘に納める


「お見事です! 姫様お身体は!?」


「大丈夫だ、問題無い    念の為異形が向かって来た港町へ向かう! 皆は負傷者の手当てと異形の処理を頼む」


「え、待って下さい! 町の者と関わっては駄目ですよ!」


「いや!放っておく訳にもいかんだろう  討伐後すぐに戻る!」

そう言うと馬に飛び乗り返事も聞かずに走らせる








「あ~あ、行っちまったよ」


「姫様は突っ走る癖があるからな~」


「森から出た事も無いのにな」



「最近の異形、人型ばかりじゃないか?」


「あぁ、今日のやつなんか足 鉄だったよな」


「お~い! 重症者はいなそうか?」 

エルフの面々はこなれた様に後処理を始める






(凄まじいな、これが噂で聞く戦姫か?)





「ほら、人間 とりあえずこっち来い」


「え、あ  あれ?」





まさか





(あのこが帰ってくるまで俺 何も出来なくない?)


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る