129 贈物
本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい
12/1 8:10
「ルイ ハヤク」
大きな尻尾を揺らし犬耳はまだ支度途中であろうオッドアイの袖を引っぱっている
「待って」
「イソゲ イタイノヤダ ハヤクハヤク」
「、、うん」
明らかに嫌そうな表情を浮かべながらも準備する手を早める
「オワッタラ キーロクル」
「うん」
その名前を口に、耳にするだけでも二人の中で何かが違うのだろう
二人は扉を出ると眼鏡の青年が向かった方向とは逆を向き、歩き出す
奥へと続く床はひんやりと冷たく、壁は薄っすらと青白い光を発している
約10分程度、ペタペタと言う足音を鳴らし真っ直ぐ進むと見えてくる大きな扉
そこから微かに聞こえる電子音は犬の耳をピクピクと反応させる
ウィーン ウィーン ウィーン ウィーン
重めな扉が4つ開き、二人が中へ入ると自動で閉まる
広い実験室
辺りにはガチャガチャと動き回る機械人形
宙を浮いている小さな円盤と光る球体
壁のガラス越しには頭から爪先まで分厚い服を着たニンゲン
コイツラハ
嫌いだ
何処から聞こえてくるのかは分からない、いつも通りに高圧的な言葉が部屋中に響く
奥からは様々なモノ達がぞろぞろと出て来る
そのまま歩いてきたり、檻に入っていたり、箱に入っていたり
本当は
ゼンブ
壊してやりたい
コロシテヤリタイ
あぁ
今日も辛い、イタイ時間が始まる
「冬だからね~、時期的に置いてないね~」
二足歩行で喋るトカゲ、リザードマンの亭主が首を振る
「あぁやっぱりそうですよね 分かりました、いえ すいません」
軽く頭を下げ、眼鏡をかけた優男は店を後にする
王国内の花屋、本日4件目である
もちろん冬に咲く花だってあるのだが、どれもしっくりと来ない
(大きな花か~、どっちみち植木鉢じゃ限度があるだろうし~)
王国の北東、外れにある研究施設から馬車を走らせ1時間程
中心地まで来るとディーン城を囲む様に何処も賑やかな通りになっている
警備や見回りの騎士達もちらほらと見られる為こんな所で誘拐事件など起こるはずがない
ジンやカセンが立ち回った西側やラフィの向かった北街区とはまるで世界が違う
(先に鳥の方を探しておこうかな)
キーロは専門店だけではなく露天商らにも聞いて周り買物を済ませて行く
のだが
(う~ん、困った)
比較的に世話の楽そうな小鳥、餌は買った
自分の予定していた小物も揃えた
ギルド宛に贈り物と手紙も出した
研究所から言われていた材料も調達した
やはり、花だけがどうにもならなそうだ
念の為、代替え案として部屋に置けるサイズの植木鉢とひまわりの書かれた絵画を購入した
(ガッカリするだろうか)
時間も時間なので帰路へと足を向けた所だ
小さな子供が三人仲良く椅子に座っているのが見える
真ん中の子が本を開き持ち
少し大きな子が音読をしながらページをめくる
(はは、懐かしいなぁ)
子供達は一ページ開く度に三人してきゃっきゃと笑う
(もしかしてあれって、飛び出す絵本かな? 先程の小物店にも何冊か置いてあったような)
店頭のガラス越しに置かれたソレは外にも見える様に飾られていた
(う~ん、でも絵と被っちゃうかな)
・・・
「あ!」
ついつい声が出た
黒髪の青年は何かを閃いたかの様に絵画を購入した画材屋へと急ぐ
いや
思い出したかの様に
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