182 開錠

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



2/13 9:00


「あの、聞いて良いのか分からないんですけど、、巫女様の言っていた『何か』っていうのは?」

王子は聞きづらそうに従者の後ろから声を掛ける


「あ~、あははやっぱり聞いちゃうよねそこ、シエル様も流石と言うか、まぁそんなに隠す事でも無いんだけど」

気まずさは無さそうに、照れた様に頭を掻く

「此処のお屋敷、なんて言えば正しいかな、えっと~、、実家?」


「実家!?」


少し大きな声を出すバルに向かい人差し指を立てる


「嘘嘘、実家~では無いか、うんまぁちょっとめんどくさいと言うかややこしいと言うか 挨拶したら皆さん揃った時にでもしっかり説明するよ」


「は、はぁ、、え、って事は此処に危険は無いと?」


「  いや」

シフは立ち止まり、庭園を見渡すとバルに手招きをする


正規の入口では無い、勝手口とでも言うのだろうか

建物の脇の影になっているガーデニングフロアを進み地下に通ずる道へと足を進める


「石畳に土の跡があった、侵入者がいるかも」


(いや、俺達が侵入者なんですけどね?)

「先客、ですか?」

バルはあえてツッコみは入れずに足音を消し、シフの2、3歩後を歩む


「う~ん、襲撃狙いだとしたらわざわざ館内に入らないと思うんだけどね?」


「確かに、もしかしたら懸賞金狙いの?」


「、、あぁ、広く見るならギルドにだけ依頼している訳では無い、か」

シフは足を止め思考する



(まさか本気でやり合うつもりなのか? 手練れだろうが何だろうがそういう次元の話では無い、それは分かっている筈)



「、、、だとしたら」


「え」


「バル、ちょっと急ごうか、順に部屋を調べて行こう」

シフは足早に駆け出す


「あ、はい ってそんなに足音立てて良いんですか? ここ響きますよ?」

バルは出来るだけ音を消しながら速度を合わせる


「どちらにせよ見つかった方が手っ取り早いかもしれない」


「大丈夫なんですかそれ、いきなり襲われません!?」


「襲ってきたとしたらそれは多分」








「王国側だ」








・・・・・・








「嫌な予感がする」

横になっていた銀髪の少女?が上体を起こす


「お~?乗り込むんか」

巫女を膝枕していた赤鬼は酒瓶を置き、砲台に手を伸ばす


「んえ? 何、ごめん、なんて?」


従者達が門を飛び越えてから一時間が経過したくらいだ

移動中も何だかんだ集中し起きていたのだが胃に物を入れたせいかウトついてしまった

わざわざ答えてくれる筈もないので顔を強めに叩き、一気に目を覚ましてから荷台を下りる巫女を追う


「む?巫女殿~何かあったのか?」

庭先の木の上から声がするのだが巫女はその問い掛けにも答えてはくれない



門の前まで来るとシエルは瞳を閉じ、詠唱を始める


感知魔法だ


しかし、規模の問題なのか距離的なものかすぐに詠唱を解き、瞳を開く


「弱い魔力持ちが一体、だけ」

報告とばかりに呟くと少し難しい顔をして黙り込む


「良く分からんが魔力量と腕っぷしは別じゃろうしの、とりあえず開けて良いんじゃろ」

誰の返事を待つでもなく、空いてる左手で門を掴む



ゴジャン!



強固な筈の格子状に組まれた門

いや、ソレに伴う外壁が、聞いた事の無い音を鳴らし剥がれる


「ちっ、ホントてめぇはどうなってんだ」


「うん、まぁ俺はもう驚かないよ?」

(シエル救った時に似た様なの見たし)


「な、なんだ 向かうのか?」

エルフが上から飛び降り、着地すると同時に大きな音が鳴る



タァン タァン!



「なんじゃ?」


「破裂音!? この音って」

(火薬玉? いや、銃声?ってありえんのか?)


「急ぐぞ!」


豪華な庭園に見向きもせず、入口の扉目掛け走り出す


「正面突破で良いんか?」


「あぁ」


「はっ、はぁ 気を付けて、もしかしたら飛び道具持ってるかもだから」

懸命に巫女の後ろを追いながら頭の中の情報を口に出す



ドゴォン!ガジャアアア



カセンの右腕から振り下ろされた砲台が綺麗な木製の扉をぶち破る


粉が舞い、欠片を踏み、そのまま一同は絨毯の敷かれた廊下を走る



自分から音がしたのかといまだに驚いているエルフだけが目をパチクリさせながら




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る