251 動力

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



2/22 6:00


(さみ~  うは~  やべ~)

黒髪黒眼の純日本人 亭主の新島 仁 (にいじまひとし)三十路

通称ジンはキッチンの火で暖をとっている


・・・と始めたい所だがここは森の中だ


季節はまだまだ冬、で朝だ、、クッソ寒い

有難い事に先に目覚めたエルフと吸血鬼が火を焚いてくれていたので即座に火の前を陣取り、味噌汁の準備に入る


「ジン殿!キノコ余ってるので入れるか?」


「ん~あぁ~良いか、もぉお!?」

まだ寝ぼけた頭が手渡されたキノコで一気に目が覚めた

傘部分、キノコの裏っ側(かわ)でゾワゾワしっとりした何かを触った

「うえはああ!?」


「む? あぁ、こいつめ」

美人のエルフが高い声を出すジンの手を素早く払う

「噛んだりする虫じゃないから大丈夫だ、すまない驚かせてしまったな」


払った手の甲を暖かい掌が優しく撫でる


「あ、あぁありがと、、ラフィも虫とか全然平気なのね」

情けないと思いながらも平気な顔で済ませるがそんな事されたので内心キュンキュンである


「うむ、食べれるぞ?」

(返答が思ってたのと違う!)


そこは美女なので怯えて欲しい男心もあるのだが得意な方では無いので素直に心強い限りだ

そしてもう一人


「クックックッ、にん、、じゃない、ジン!今度なんか変なの出たら私がギットンギットンのべったんべったんにしてあげるから大丈夫なのよ?」


「あ、あぁロゼもありがとな」

(でも昨日のGの事は忘れてないからな!?)

「ってか何それ?ぎったんぎったんって言いたいの?混ざっちゃって油まみれみたいになってんじゃん」


「ふふ、ギットンギットン、ふふふふふ、、あは、はははは、それだと身体から何か滲み出ているみたいだな?」

変な所でエルフがツボったがいつもの事だ


「え、想像するとそこらの怪談よりよっぽどこえ~けど、何出してんの? あ、でもだからお前ら良い匂いするのか」


って調子に乗ってフォロー、いやツッコミを入れただけなのに『何言ってんの?』みたいな顔で見られた

、、ので大人しくキノコ汁を作る事にする






食後、まだ辺りは暗いのだが俺達は出発した

今日は少し山を登るらしい


ラフィが重いリュックを担ぎながら前を行く

ちょっとした段差や崖面を通る際には手を引いてくれるのでテンポ良く進んでいる様にも思える

ついでに言うのなら登り切れない様な石壁等ではロープを使いながらロゼが尻を押してくれてもいる訳だ

至れり尽くせりと言うべきか、介護と言うか(情けない言うな)


気付けば昼を過ぎたくらいか、水辺を見つけたので休憩となった

へたり込みながら直接頭を突っ込み、顔を洗いながらガブガブと補給する


幼女のケラケラ笑っている声が聞こえるがそんなもん気にはしない

火を焚き、お湯を沸かしながらシャツを替え、着ていた物をざっくり水洗いして火の前に置く


しばらくするとエルフがどこからか果実を持って来た


「本当に凄いな~サバイバル生活慣れ過ぎでしょ」


「さばいばる? なんだ?何か凄いのか?」

エルフにとっては普通の事、こんな事なんて生活の一部なのだろう

言葉にピンと来ないどころか純粋に『凄い』が分かっていないらしく周りをキョロキョロ見回している


「いや、何でも無い  ありがとね」


「む? あぁ、うむ」

良く分からない顔をした後にニコッとする笑顔が本当に眩しい


(こんなんされたら、、そりゃ姫様人気者な理由分かるマンだわ)


躊躇(ためら)い無しに謎の果実に齧(かじ)り付くと


「ねぇねぇジン」

逆のもう片方の手、左手を幼女が引っ張る


「んぁ?え?何、何  今度は何」


ジンの左人差し指を持ちながらロゼはこちらを見ておらず逆の方向を指差している


「うおおぉおいバッカおまっおぉお!折れる折れる!そんな持ち方したら折れちゃうよ」

指が逆を向いてしまわないうちに自ら場所を移動し痛みを逃がす

「いって~な~、何してんの~」


「あれなぁに?」


「え~」





「え?」





「あぁ、ずっと昔からあるんだよアレは此処を通る時の目印でもあるな」

ラフィは自分の分を食べ終えるとジンがしていたのと同じ様に水辺へと向かい


頭から突っ込む


本当は

「女の子が、ましてや美人さんがそんな事するもんじゃないよ」

とツッコミたかったが


幼女の指差す方向

少し向こうにある鉄の塊への興味、驚きで違う言葉が出た


「え、ちょ、、あれって」





















「車じゃん」

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