41 悪食

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



8/15 12:50


「あ、、じゃねえよ何フリーズしてんだこら」

止まった姉弟の下から喝が飛ぶ

「ったくよ~」


巫女はこぼれた具材とパンに近づく


「あ、あっ すいません もう一回巫女様の分だけでも買って来」

駆けだそうとする足が止まる


「あ?」




シエルは軽く砂利をはたき落とすとそのまま小さな口の中へとパンを放る




「シエル様~!?」

従者の声が広場に響く


「ん、うまいうまい」




その光景は明らかに異質で、姉弟達にとって衝撃的だった




「ほら! こっちは姉の分なんだろ?」


「え、あ あの」


「最近あるやつから学んでな、腹減ってるとイラつくらしいぞ」

まだ綺麗な面が残る方を少し不本意な表情で差し出す


「何かがあったから折れたんだろ?  そこまでいっちゃってる奴は簡単には治らんからな、誰かが助けられる訳もねぇから自分らでなんとかする以外無い」

シエルはベンチに座ると従者を見て「飲み物よこせ」とばかりに手を傾けて話を続ける

「だが運良く天下の巫女様が帰って来てんだ現状打破の方法だけは教えてやれる、とりあえず説明しろ   話が長いのは嫌いだからまとめてから話せ」


「だ、だから! もう足掻いたんです!!」

拒絶の様に否定する声は先程よりも大きさを増す



「うぜぇ、じゃあ死ぬまで足掻け 殺されるまで藻掻けよ」

面倒臭そうに頭を掻く姿


だがそれに似合わない目付きと声が空気をひりつかせる




「さっき 姉ちゃん、あの時の  母ちゃんと同じ顔してた」

涙ぐみながら弟の方が話し始める

「金が無いから   全部お金が原因なんだ」


「働け」


「姉ちゃんは頑張ったんです、家の事も 仕事だっていっぱいして、俺はまだ働けないから、、」



「、、、、、、その話長いk」

「わ~わ~わ~わ~わ~い わ~い ほ~ら わ~い」

早々にとどめを刺そうとする巫女にすかさず従者が割って入ると脇を抱え、有名な体勢へと変える






たかいたかいである






「あいた~ いてててて   あ、はいコレどうぞ、君等も飲んで~」

イラっとした巫女にかかとで蹴られた従者はタンブラーを姉弟にも渡す

「じゃあ詳しい話は俺が聞くから ゆっくりで良いよ、話してくれるかな?」


「、、なんと言うか、凄いですね?」

受け取るその顔は苦笑いを浮かべている


「あはは、そうだね~  シエル様は 凄いんだよ?」

別の意味と分かってはいる

それでも従者は素直に思う事をそのままに伝えた











8/15 14:30


スー スー


(嘘でしょ!?)


スー スー スー スー


姉弟達から身の上話を丁寧に聞く従者の後ろからは小さく寝息が聞こえる



「巫女様   寝ちゃいましたね」


「ご~めんね~! ここ連日大変だったんだ~」

(こんなんで信頼なんてしてもらえるのだろうか)



(、、だが、聞く限り、解決策が無い訳でも無さそうだ  でも、やっぱり 問題は)



ガタン ズシャァ!



バランスを崩した巫女がベンチから落ちた


「ええええええ シエル様ぁ?」


「ん、、話し終わったか?」

何も無かったかの様に顔と服を払う


「無理無理無理無理、無かった事にはなんなホグワアア」

低身長からのアッパーが従者のみぞおちを襲う










「、、で?」


一旦、姉弟二人を聖堂の庭園に向かわせた所である


「え~と、二人の住まいは23番地区の小さな家で 借金がある様です、額は詳しく分からないみたいですがかなりの嫌がらせを受けているみたいですね」

従者がメモ書きを開き淡々と説明を始める


ソレについて顔色を変えず即座に問答を続ける

「姉の方か」


「そうですね、危険な目にも何度か合ってます」


「親は」


「父親は飲んだくれですが今は働いてます、母親は少し前に消滅   姉が壊れ始めたのはこの辺っぽいですね」


「どうしたいって?」


「母親が正常な状態で戻って来てまた家族四人で仲良く出来たらベスト  ってところですかね」


「はぁ、、無理だな、そんな都合良く世界は回らない」

ベンチから足を降ろし伸びをする






「残念だ」






巫女は欠伸をしながら気だるそうに


聖堂とは逆方向へと歩き出す

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