48 魔女

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



8/16 8:00


天気も良いので食事は外で食べようと提案したのは戦姫だ


ラフィを中心に何百のエルフが円陣で囲む


「昨日は気付かなかったけど、結構な人数がいるんだね?」

モーズは周りを一周見渡す


「この集落は他の所より少し多いからな」

ラフィは最後にまわって来たスープを受けとる


「モーズには詳しく知ってもらいたい事も沢山あるし良い機会だが  だが、その者達は知ったら外へは出せないが、良いのか?」

バル王子は山賊達を懸念する


「うむ、大丈夫だここまでの道のりでな 少し話をしたんだ  では話をまとめて行こうか」




まず、山賊連中 計26人  身寄りのあるものはいない

最後の最後に大儲けが出来ると言う噂に集まっただけのゴロツキ達だ


多額の情報に釣られ山に潜伏していたらしい

依頼内容は






【白銀の巫女暗殺】



依頼は遺跡の村で受けた との事

だがそこに現れたのはモーズとラフィ

自棄になり名のある戦姫を拉致しようとしたらしい


「なるほど、ジンさんから受けたこの依頼は本来巫女様が来る様に仕向けられたものだったのか?」


「巫女の暗殺か、、その村 気にはなるが何よりも巫女本人に知らせなくてはな」

王子も難しい顔をする



そしてどこも当てが無く

最悪自害をも考えていたゴロツキ連中は戦姫の対応に胸を打たれ共存出来ないかとラフィに話したらしい


「えぇ!」

これには周囲のエルフ達もざわつく


「都合の良すぎる事は百も承知だ、だが町に帰った所で打ち首 逃げたって依頼主連中に追われるだろう  だからなんとか! 頼むよ」

大男は悲痛な顔つきでエルフを見る


「あぁ、私は問題無い  なのでここにいる皆に聞こうと思ってな」

ラフィが静かに話し出すとざわつきはすぐに消えた

「それとお前はまず味方を敬う心を持ちなさい、私達を追って来ていた時もそうだったが酷い言葉ばかりを使っていた   あれは良くないぞ?」

最後の一言が無ければ締まって聞こえたのだが山賊の胸には響いた様に見えた


「皆がダメだと言うのならしょうがないので樹海に捨て置くとして、受け入れてもらえるのであれば何なりと使ってやって欲しい!」




多少の間はあれど、すぐにささやかな拍手が鳴り渡る


エルフ達の答えは当たり前の様に出ていた


恐らくこの集団で姫の提案する事にNOと言う者はいないのだ







無骨な男達は地に頭を擦り付け涙を流した













8/16 9:00


ほとんどの者が軽めの朝食を食べ終え

外周から食器が回収されていく


「バルの話は恐らく長くなるのでな、少しモーズの話を聞かせてはくれないか?」

ラフィは若いエルフの娘達と共に飲み物を注いで回っている


「俺の話、、なんてほとんど無いよ?」


「ではどうやって私を見つけ出してくれたんだ?」


王子への返答には少し困った


「いえ、え~っと  たまたま   なんですよ」






バル王子が誘拐された事は国の機密事項なのか表には出されてない

この事はディーン王国内でも軍事に携わる者達の間では暗黙の了解になっている


毎日の様に一緒にいたモーズはある日を境に王子と会えなくなった

個人で所構わず調査を始め、しばらくの間城にも通い詰めたが日に日に態度を豹変させて来る大人達に不安を覚えた


(王子の身に何かがあったんだ)

その日からモーズは町を出た


他の国でも情報が全く無かった為モーズは自らをバルと名乗り始めた


王子が亡き者になっていない事を信じ『向こうから』接触して来るのを待ったのだ

何かあっても守れる様に腕っぷしを磨いた

あらゆる所で武功を立て、自ら噂を立ていろんな国を回った






10年間







何一つ成果が出ないまま時だけが過ぎた






4/9 10:00


もう何度周ったか分からない、王都へ立ち寄った時だった



大きな帽子を深く被った、魔女の様な女性に声をかけられた



「すいません、ちょっと聞きたいんですが~ って!?取り憑かれた様な顔をしてるね?  どうしたの?」



彼女は何年かぶりに人里に下りて来たらしく、迷子になっていたとの事



「あっはっは、ありがとうね~  こんなにも世間様が変わっていたなんてね~少しの間街で何かを売ってから材料を探そうと思ってね」



名はムラサと言うらしい



「助かったよ~気軽にチエと呼んでくれても構わないよ?  あ、お礼と言ってはなんだけど何か商品をあげようか、薬が良いかな? それとも私が書いた本が良い? あ!ぬいぐるみとかどうかな?  そうだ!」



「占いをしてあげようか」



「結構当たるって評判なんだよ」



ただの気休めくらいに思っていた



「もう少し暖かく そうだね~夏頃になったら  此処、王都から西に行った所に喫茶店が出来てるみたいだからそこに行ってみると良いよ」






藁にも縋る思い


自然と足が向いた

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