220 慈愛
本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい
赤鬼が逸早(いちはや)く気付き駆け寄るとその名を呼び、声を上げ揺さぶった
軽い身体は抵抗する素振りを見せずされるがまま
只々力無く揺れる
意識を戻さない巫女
それを、命懸けで助けてくれたのが
神父ゼブラだ
文字通り
命を懸けて
王都の、国の重役
民の救い、宝である
神父は死んだ
俺の代わりになった巫女の代わりに
・・・
微弱な魔力だった筈の全てをシエルへと与えたらしい
息を吹き返した巫女を見届け終えると微笑み
シフと老紳士ジルバに言葉を残した
そして役目を終えたかの様に、安らかな表情で眠りへと就いた
、、らしい
俺は馬鹿だ
流れではあったが役目が出来た事に対して特別、、と言うか
心のどこかで (何とかなるんじゃないか) と思い込んでいた
この世界がそういうモノじゃないって事は分かっていた筈なのに
それに、失望はそれだけじゃない
シエルが意識を取り戻したのは俺とそう大差無い
その間に起こった事
まずはロゼの館だ
グングニルを相殺(そうさい)し終えて数分もしないうちに大きな音がした
それは今この場の建物から、、と思った時には足場が崩れた
何処かで爆発が起こったらしい
透明な奴らの別動隊がいたのだ
屋上にいた一行はロゼの魔法でなんとか全員脱出に成功
老紳士ジルバは崩れ行く建物の中『祭壇』を確認しに向かったが時すでに遅く
瘴気を吸う為の場所が失われた
ピンと来なかったがそれはどうやら大変な事らしい
ロゼとその特殊な木が吸わないと瘴気は止めどなく溢れ、国、いずれは世界をも飲み込み
崩壊、破滅が始まるであろう、、と
すぐには実感が沸かなかったのだがパンデミックが起きるのはいつだってウイルスやら自然災害の類な訳で、想像だけは出来た
そんな中、声を上げ提案したのはエルフの族長ラフィだ
「バァ様は凄腕のシャーマンでな、木々や薬の事にも詳しい、もしかしたら瘴気を薄めたりだとか吸うだとかする手段を知っているかもしれない」
と
老紳士ジルバはディーン王国の動きに思う所があるらしく別行動を取る、のでロゼだけを連れシャーマンに会いに行く事が決定した
神父ゼブラ、巫女シエルの件もある
何をするにしてもまずは一度聖堂、ギルドへと戻り体制を整える事となった
のだが
一日をかけてギルドへ戻った一行は驚愕した
店先では大きな何かを灰になるまでひたすらに焼く猫達
店内、座敷には集められた誰かの破片や手足、それとエルフの男が横たわっている
柱には括(くく)られたツインテールをしていない少女
ソレを尋問するかの様な体勢でカウンターには烏天狗が酒を呷(あお)りながら座っている
その光景を前に赤鬼が烏天狗に食って掛かるが白と黒のエルフが迎え、説明をしてくれた
化物、それと例のだんまりを決め込んでいるツインテールでは無い少女の襲撃でアルとエバが負傷した事
二人共に今は此処にいないが一応無事だという事
化物もそうなのだがどうやら全てライアが片付けたらしい
アルを担ぎ、首だけとなったエバを抱え知り合いの薬師の元へと向かってくれたのだとか
食って掛かった赤鬼が似合わない顔でへたり込み、謝罪をすると大男は軽く手を上げる
「あ~の生首っこが連れて行ってほしいって聞かないからさ~持ってったけど動けないだろうにな~ あぁそっちの事も俺は何となく知ってんだ、、だからそうなんのもなんとなく分かるよ、まぁ駄賃として少し飲ませてもらってっからよ」
気前良さそうに、だが少し悲しそうにグラスを傾け、続ける
「まぁカセンも飲めや、しょうがねぇさ色々見えて来たんだ擦り合わせといこうや」
もしかしたら一番人?が出来ているのはこの烏天狗なのかもしれない
勝手に人の酒を飲んでいた事以外は
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