109 誘拐

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



8/29 15:20


「うわ~ん、やめてよ~」

巫女は幼気(いたいけ)な演技をしながら駆け出す


「くっそ、すばしっこい」


「ほら!怖くない!! だからこっちに 来い」


伸ばす手首を外側から払い上手い事男達の手を躱(かわ)す


(はっ、まるで素人集団だな、誘拐下手糞か?)

路地裏の方へと走り小声で詠唱を始める


(尻尾を掴むには捕まっておいた方が無難だな、一旦この辺で合図だけ送っておくか)

角を曲がった所で空へ向かい



光の矢を放つ



コォーーー    キィン



他のメンバーへの救難信号  なのだが



キューン



「なっ!?」


別の方角からも上空に弓矢が飛ぶ


(ラフィの方も、だと!? 方角的にはカセンらの居た位置とそう大差無い、同じ連中か? いや それはあり得ない)


他の連中には名目として服を着せた

だがラフィやカセンでは潜入捜査など出来ないと踏んでいたので比較的人の目につく位置を指定していた


そんな場所で誘拐なんて素人でもしないだろうと



、、、って事は



(魔族か こっちは中止だな)


巫女は足を止め、行き止まりを背にし追手の輩を待つ


「ぜぇ はぁ、随分と はぁ 足の速い子だな」


「はぁ はぁ  どっかの貴族とかの子か?」


「さっさと袋かぶしちまえ!」


麻袋を構えた男が巫女に這い寄る

「ケガさせたくないから良い子にしてね~ 大人しくしぶは!」

喋っている途中の男に小さな拳のアッパーが入る


「な!?」



ガン! ゴッ!!


ドッ



二人目、両足の脛を二連打で強く蹴ってからすぐに三人目の、、急所を蹴り上げる


「ぐああああ」


「おおおおお」


「こ、こっの」

四人目の伸ばす手首を外側から払い、脇腹と肋骨の間に膝を入れる

「あっが、ぅぅ」


「てめぇさっきと同じ払い方だぞ? こりね~な~」

少女?は容赦なく転がる連中の顔面を踵(かかと)で踏む

「あとは、、6人か どうする? クソ素人共」


残りを一人一人指でなぞり小首を傾げる


「怪我はさせたくなっぶ!」

またも喋りかけの男にアッパーが入る

「ご~」


「くっそが~」

隣の男が振り上げ、拳が頬に迫る


が当たるはずも無く


「よん」

右ストレートに合わせて巫女の右ストレートが男の鼻に決まる

リーチ的にあり得ないので躱(かわ)してから殴っただけ

正確的には別なのだが形的には


クロスカウンターである


「あががああ」


「うっわ、きったね~な~  女の子の顔を殴ろうとするからこうなるんだぞ?」

顔を顰(しか)めしゃがみ込み、右拳に付いた血液を転がる連中の服に擦り付ける



「なっなな、何者なんだよ」


「う、うああああ」


一人、二人、、三人と逃げて行く


(こっちが本命じゃなきゃ良いんだが)


「あああああ」

残った一人が棒の様な物を振り上げる


「はっ、武器使うとか最低だな クソが」

右手を強く振ると包帯に隠し持っていた薄い小さなナイフが飛び出し、男の太ももへと突き刺さる

「いっ、っぐあぁ あ! ぐぁ」

前屈みになった男の持つ棒の様な物を掴み取り



ゴス! ゴス! ゴシャ! グシャ!



柄の部分で鼻、頬、眉間 へとめり込ませる



「ふぅ、まぁ自業自得だ  復活されるのも面倒だしな」


その可愛らしく、整った顔を持つ少女?は転がる7人の男達の足を見下ろし








手に持った棒の様な物を振り下ろして周る








(さて)


持っていた物を放り手を叩(はた)くと隠しナイフを太ももから回収し


(急ぐか)


合図のあった方角へと足を向ける





















のだが


「な、ぅむんん」


行き止まりだった筈の後ろから、居なかった筈の者に鼻と口を塞がれた


「んんん! むぅうううっ!」

咄嗟に塞ぐ手の甲を回収した薄いナイフで抉る! が ビクともしない

「ん!  ぐっ! んんん」


二度刺した後、手の甲は諦め


仕方なしに、、


後ろの首に目標を変え



手を伸ばす  が



(これは)




(毒粉 か!?)



カララン、カラン


酷い臭いを吸い込むと徐々に手足が痺れだしナイフが地へ落ちる




ままに巫女の意識は薄れていく



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