95 傷跡

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



8/23 20:40


「ジンさん、無事で何よりですよ~」

バルが5人分の飲み物をトレイに乗せ部屋に入って来た


それを

「お~気が利くのぉ~、、おぉん? なんじゃ酒では無いんか」

受け取った赤鬼が一気に飲み干し、不満そうな顔で出迎えた


「む? お酒もあるのか?」

続いてエルフも余計な一言を放つ


「ありがと!  え、コレコーヒー? あたしブラック飲めないよ~」

ツインテールがトドメとばかりに我儘(わがまま)を言う



「、、、もうなんか、日頃ジンさん苦労してるんだな~って気持ちになったよ」

ジンにもドリンクを渡すと壁に寄りかかり、自分の分を口へと運ぶ


「ハハ、だろ? シエルは~、、寝てるんだっけ  シフは?  シエルのトコ?」


「えぇ、巫女様とあの子を診てます 最悪またすぐに神父様を呼べる様にって」


「そっか、、やっぱり危ない状態 なんだ、、、」


ジンのドリンクを持つ手は小さく震えている

痛みはもう無い ハズ、、と潰れたマメの痕、掌を確認する




(助かってくれないと)





(俺、どうすりゃ良いんだよ、、、)




自分よりも若い連中を前に



そんな事はお構いなしに



悔しさと、申し訳無さから男は涙を流す


























8/23 17:40


「ゴロロォォ」


飛び掛かる魔物の声


「うらあああ」



ガギャーン



喫茶店のマスターが渾身の一撃とばかりに振り回した鉄の棒が魔物のエラ部分にヒットする


「いってぇ   は~?鬣(たてがみ)とかの類じゃね~の!?」


運良く?固いエラに当たり両者 距離が離れる



「ゴロロォ! オアアアア」

衝撃を受けた魔物だが弱っている様子も無く、すぐ体勢を整え雄叫びをあげる


(くっそ、どうする どうする)


先程の一撃で手も痺れ、マメが潰れた掌からは刺す様な痛みが走る


「ゴロロォォ」

魔物は容赦無く 再びこちらへと加速する


「だらああ!」

振りかぶる  が指が痛みと刺激で震える


(いってぇ   けど!)


男は強く歯を食いしばる



ガイィン!



二発目


頬を引っぱたくつもりだったがまたもエラに当たる


「いっつぅーー」


ガラガランと音が鳴り男の手から鉄の棒が落ちる


一方魔物側のエラはへこみすらせず体勢を立て直し

目と言える部分は無いがこちらを睨む様に少し様子を見ている



(あ、あの子は?)


震える手で落とした棒を拾いながら後ろの少女の様子を伺うとそこにもう影は無い


(良かった、逃げれたかな)



その瞬間



「ロロロー」

魔物が飛び掛かる



「うあ!」


ドヅン


ビシャシャ



咄嗟に向けた鉄の棒が魔物の大きく開けた口に突き刺さる



(や、やったか?)

「ロロラアア」



バギギィン!



刺さった鉄の棒が閉じた顎の力で両断される


「うっそ、だろ!?」

ジンは咄嗟に2、3歩程後退りをし割れた断面を見る

、、と同時に自分の両腕にかかった魔物の血液から痛みを覚える


「い! あっつ!」


(なに!? 毒? またそういう毒系!?)

素早く服で拭った手首と腕には赤く跡が残る




(焼けた跡?)



(、、、これ   マジでヤベーんじゃね)

指先、掌、手首、腕から様々な痛み

それと、脳へ アドレナリンが駆け巡る

(次は えっと、どうするんだ?)

再度 割れ短くなった鉄の破片は、、、もう握れず、、革紐を右腕に巻きつける


(こういう時、どうするんだ   カセンとかシエルだったら?)


男は思考する



思考する




のだが




考えよりも先に


魔物が飛び掛かる


「ゴロロォア」


大きな口の中にはまだ鉄クズが半分残っているのが見える






(くっそ、腕の一本で何とかなるか?)







男は無意識に




右腕を前へと伸ばす




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