270 捜索
本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい
2/25 20:00
「アルゥゥー!!」
美人には似合わない大声
「ん、んん˝!ジ ン˝どっ あ˝っあ う˝ ん!」
その喉はガラガラと涸れ
カスカスと、途切れ途切れになるほど擦れている
それでも尚
「ジン殿のぉおぉお˝!!」
声を張り上げる
ラフィが捜索を始めて三、四時間
背負った大剣で薙ぎ払えば少しは早く進めるのだろう
それでもむやみやたらに森林伐採(しんりんばっさい)をしないのは自然を考えて、、と言うだけでは無い
緊急事態でもそれは出来ない、何せ彼女の携えているのはダーインスレイヴ、、魔剣だ
振り回し、制御が利かずに二人を斬ってしまう可能性だってある
配慮しての、歯がゆい、動きだ
涙目でバッサバサと勢い良く草木を掻き分ける
その綺麗だった白い手は擦り傷に切り傷でまみれ、この時間にもなると流石に冷えで震えている
だがそんな事を気にする暇など
両の手を擦っている時間など
無い
「うぅ˝私がぁ!私がっ もっとはや˝くぅ、帰ろうって言っていればぁ!」
情けない声で後悔を叫び
エルフの姫はひたすらに森を進む
それから無情にも
二時間が経過した
酷い声でガサガサと、茂みの方から音がした
!!?
ので
急いで駆け寄り
「ラフィ?」
ひょっこりと、少し惚けた様に顔を出す
「ア˝ァ!アル˝ッ!!」
顔中、いや、全身きったない友人がきったない声で口をひん曲げている、、
「うわぁ、、あんたなんって声してんのよ」
眉を下げ、苦笑いをして
様々な感情が込み上げるのを誤魔化すのだが
「よ˝おぉがっう˝っぐ よかっだぁあ˝あ」
「だ~も~、泣くな泣くな~」
「っだっで だってええええ˝ う˝えっ、ぐうぅあ˝あああぁぁああん」
強く抱き付かれ
「泣くな˝ってば~ も~ばかぁ も~も˝~」
ブルドーザーの様にグアーンと
豪快に、素直に号泣されては押さえていた感情も崩れると言うものだ
ツインテールはいつも通り
牛の様に、、哭きながら
冷え切った両手を包む
・・・・・・
「っっでぇ、あっち、あっちにジンいるから」
擦(こす)って充血した瞳
二人して泣いた後なので隠せもしないのだが、それでも照れ隠しの様に先導しエルフの手を引く
「うっく、ぅう˝ん無事 なんだな˝?」
「あ~うん?う~ん、でもね~んと~ちょっと困ったって言うかなんって言うか~」
歯切れの悪い少女の言葉に首を傾げ
手を引かれるままに着いて行くと目を丸くした
「な˝?」
「ね?」
アルは軽く口角を上げ、少し困り顔のどや顔をする
「ね?ってなんだよ いや!ね?じゃねえよ ラフィ!ロゼは?ロゼはどうなった」
至って真面目
ふざけている訳でも無い、真剣なトーン
なのだが
三十路が大樹の樹洞(じゅどう)で嵌(はま)っている
樹洞(じゅどう)とは所謂(いわゆる)木のうろだ
ソコに間抜けな格好で嵌(はま)り、身動きが上手く取れないでいる
どうやら手首だけが動くらしく、妙竹林(みょうちくりん)にバタつかせたその姿がエルフのツボに入った
「ぷっぎゃ かは! ぷくく、ふふふ ジン殿˝な˝んって格好˝」
耐えてくれているのは分かるのだが明らかに「ぐはぁ」とばかりに吹き出した
「ほんっとにね、何回見てもウケる」
ツインテールも半分呆れ顔だ
「いや待って、そっちも大概(たいがい)よ? え?殴り合ったの?ってくらい結構ひでぇ顔と声よ?」
(特にラフィ!アルの倍は目ぇ腫れてんじゃん)
恥ずかしさもあり早口にツッコミを入れながら
再び手首を回して見せる
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