355 細事

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



3/6 16:30


「ん、む ん、、ぁ ぃてて」

硬い床から頭を上げ


青年はまだ霞む目を指で拭う


「起こしちまったか? っつってもこんな所じゃそう長くは寝れないだろうし、今からでも夜の寝床を探した方が良いんじゃないのかい?」


「あ、ははは、いえ これから遠出しないとなので助かりました」

所々が傷む体をゆっくり捻ると背中辺りから良い音が鳴った


「これから!?あー止めときなって、王都内でバタバタしてるのに他行くのは面倒事として見られちまうよ?」


「へ?え? え!?何か あったんですか!?」


昼には一度魔女と落ち合い、何故か付いて来ていた巫女や赤鬼に集(たか)られたので寝入ったのは昼過ぎだ

ほんの数時間の仮眠、それこそこんなにも寝心地の悪い所で長時間意識を飛ばしていたとは到底思えない

この短時間の間に何があったというのか、何ならそういった情報には貪欲な方だ


なのでその分人より動揺した様に見えたらしく、今の今、新しく入って来た客?が嫌な顔をしている


それどころか


「エー」


堂々と口をひん曲げ、言葉を吐き出している


「あ、あぁいえ  すみません」

若者は顔を赤らめペコリと一度だけ会釈をする


「なんだなんだ?今日は変わったのばっかり来るなぁ、お嬢ちゃんは避難民かい? けど、、商人の兄さんはともかくお前さんみたいなのを泊めるのは流石にマズイって」


「宿だって聞いて来たんスけど、マジっスかー  スワっさんめーあの人場所選ばないからな~」


此処は宿などと呼べるレベルの『場所』では無い

当の亭主ですらそんな大層な名で呼ぶ事などありえない

なんせ


「此処はうちの職人連中が使ってる詰所ってだけだからもうそろ野郎だらけになっちまうし、どうしたもんか」


「自分は構わないっスけど、寝る時くらいは個室じゃないとヤバいですかねー」


「あー、あ! 個室ってだけで良いんなら知り合いの所がごっそりと空いてる筈だから後で聞きに行ってみようか?  ただソコだって元はおっさんらの寝床だった訳だから贅沢は言えない状態だとは思うが」

面倒見の良さそうな亭主は青年の方にも振り向いた

「あ~兄ちゃんの分も一緒に聞いてみようか?」


「え、ええと、状況把握したいのもあるんですが  お願い出来ますか?」

寝起きではあるものの『避難民』という言葉が引っ掛かった


「じゃあ夜までは待っててくれるかい? さっきも言った通りもうそろうちの連中が帰って来ちまうからこっちも仕事片付けちまわねーと」

そう口にすると机へと向かい

何枚かの設計図やら金額の羅列された紙達と睨めっこを始めた


(あれ?良い人なのは分かったけど、結局王都内で何が起こっているんだろう)


と言う疑問は続々と戻って来た威勢の良い者達から嫌と言う程聞かされる事となる



こうして行商人リッツ



それと









踊り子の少女は・・・









3/6 19:50


「、、って事なんだ、報告ついでにって訳じゃあ無いんだが一泊だけ泊めてやってもらえないかね?」


「あぁ部屋は余ってるから構わねぇけど、こっちも今日からお客さんが来ててなぁ、、一応顔見せしておいた方が良いよな ちょっと待っててくれるか?」


「恩に着るよ  二人共ー!大丈夫みたいだから入っておいでー」


「いやぁ野宿だけは勘弁だったんで助かったっス、なんだかんだ此処の国って良い人多いんスねー」


「本当に何から何までありがとうございま」

と言いかけた商人は腰を折ってから

「おーい、アルちゃん まだ起きてるよな?ちょっと良いかなー?」


「はーい、おじさん どうしたの?」


聞き覚えのある名前と声に


「す!?」


首を傾げ顔を上げた
















「ハッハー、運が良いのか悪ぃのか分かんねーがこの距離なら大丈夫そうだな?」


「ちょっ、お隣さんらがビックリしちゃうんで急に出て来るのはやめてもらって良いっスか? 壁薄いんで自分変な子だと思われちゃうじゃないですかー、、ってうぉおおおおお 着信来たっスよ」


「ケッ、テメェのがうるせぇじゃねえk」

「どもどもぉ!知ら番なんで多分お兄さんですよねー? 今日ぶりっスー甘い物だぁい好きのぉ~」





「ヴェヌちゃんでーす」










(隣の子)



(変な子なのかな)


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る