368 曇天

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



3/7 8:00


「あ~、くそ  眠ぃ」

銀髪の少女?が不機嫌そうに首を揉みながら、、急ぎ足で馬車を降りる


「着くまで寝てたじゃないですか~」

くせ毛の従者は軽口を叩きながら一度運転席から巫女の居た荷台へと移り

ざっくりと薬品関係を抱えてからその後を歩く



二人は見知った喫茶店にたったの今到着したところだ

入口付近の血溜まりや破壊された外壁には目もくれず

口に出す台詞とは真逆の表情で扉を開いた


「おお、来なさったか」


「数は?重傷者から診せろ」

開口一番に目が合った者へ問う


「王都でも大変でしたでしょうに、ご苦労n」

「シエルちゃん!ありがとうね 重症なのが三、軽度、、では無いけど命に関わらない怪我が二人」

今回は突き飛ばすまでしないまでも

魔女は大柄の老兵を強めに退けてから巫女の腕を引く


「意識は?」


「ある、短いけど皆少なくとも一回は目を覚ましてる」


「死者数は」



「一人 だけ」



「分かった  先、いや、後にするのはどいつのが良さげだ?」

座敷へ靴のまま上り

とりあえずとばかりに腫れた族長へと触れてからもう片方の手を上げる


「え あ、後にって、、こんな酷いのに、同時に治すの?」


シャーマンの瞳が揺れ動くのはラフィの頭部

特に額部分は割れているのだろう、包帯越しでも分かる程に熱が帯びており、、酷く変形しているのが分かる


「けっ、綺麗に治してやるから心配すんな  一刻を争うんだろ?」

透き通るような水色の瞳は他を看病している軽症者を視る


「お、おかえりちゃん、レディーファーストってので大丈夫だぜ? オルカはこんなんじゃ死にゃしねぇから さ」


「、、どの口が」


エルフ二人が会釈をしてから場所を空けた

ので


巫女は静かに




色黒の腹部に手を当てる








数分もしないくらいだ


外から来たばかりの冷えた手には心地が良かったのか

発光し終えた後にも二度三度と撫でられ


そのまま

意識も無いのに、腫れの治まった頭へとバァ様が飛び付き


四度 五度 六度、、、と


火が付いた様に泣き   撫で回す




その音に目を覚ましたのか

最後に治療されていた大柄のエルフが意識を戻し

自らの片腕を確認すると同時に巫女が口を開く


「残念だが腕は無理だったわ、ぐちゃぐちゃな上に時間も経ち過ぎて壊死(えし)が酷過ぎる、から くっつかねぇ、、まぁ恵まれた体格があんだし守りたかったモンは『全部』守れた訳で、気にすんな」

厳しい言葉が投げられたが


もはやそれくらいの事


「では、皆  無事 なんですね?」


覚悟の上らしく



・・・



張り詰める空気


それはそれは耐えがたい

一心不乱に鬼気迫る気配


ソレは


「まぁ、、皆、ではねえが」







「エルフは全員生きてんよ」







巫女の一言で静かに終わりを告げた
















のだが
















「ジルバ様!?」


「シフ、申し訳無いです もう少しだけ早くに到着出来ていれば彼女らもここまでにならずだったでしょうに」


「、、いえ、無事で済んだ、それだけできっと本人らも十分だと思っていますよ」


「まぁそう言う事ですわな!全ては個々の力不足故 しょうがなしなしと言うモノ   それよりも」

老兵がドカッと座り

紫煙を燻らせる中

「それよりも状況把握をしたいのですが」

従者は老紳士に普通の顔で尋ねる


「おおい!若造! 功労賞が誰か分かっとらんな?」


関係無しに


「誰が何の為にこちらを狙ったのか分かりますでしょうか」

日頃鋭い従者が少し可笑しな事を口走った



「  え?」

これには左右の老士が不思議な顔をした


そして当人も周囲を見回し

厨房を眺めている主を目にし


察した




「おい、ケイは何処居んだ?」




「何を言う? あの少女があんたらを呼びに行ったんだろうが」


老兵の発言に


「ちっ」

巫女は舌打ちを鳴らし

「おい、流石に眠ぃから後は任す  だが、ちゃんと王都には戻っておけ よ」

自分を優先するなと警告してから意識を飛ばした



「、、只の行き違いであれば良いのですが」

老紳士が呟く



「え、どう、、  マジ かよ?」

途中から話を聞いていたチャラ男も思考が繋がった様子だ


真剣な眼差しで従者を見る



「はい」











「我々はケイちゃんに会えていません」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る