430 縷縷
本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい
3/8 13:50
「チッ、どうなってんだ クソが」
機嫌の悪そうな声がする
「むぐむぐ むぐむぐむぐむぐ」
怒号等では無く
只々、興味が失せたかの様な温度で周囲を見渡しながら片方の掌を発光させているのは銀髪の少女?だ
彼女は先ほど与えられた屋台飯、、と呼ぶには質素過ぎる乾燥芋を頬張り、欠けた石畳の上を歩く
現場となったであろう場所は聖堂からさほど離れていない舗装されて『いた』平坦な道だ
特定の地面だけが破裂したよう奇麗に禿げてしまってはいるのだが、何の変哲も無い至って平凡な街角
周りからも人目が付く、これといって変わったところなんて無い
平和な王都の一角
そこへ若干遅れて到着したのは初老の男
容姿端麗なエルフに手を引かれ
「ちょ、ぜっは 巫女様達はっやいよ」
肩で呼吸を整える
しかしまぁ、聖堂へ通っている年数はだてに長くないらしく
勝手は分かっている
「はぁ はぁ 全く~ こちとら一般人なんだよ~?」
巫女では無く、中世的な青年の方へと寄って来た
「ご苦労様ですキウエさん、騒ぎ的に此処なんでしょうけど詳しく分かる人はー、、あの人達とかですかね?」
中身の少ない財布を胸元へと滑らせ
従者は端の方で騒がしい連中を指差す
「ふぅ、あーそうそう彼ら いや、それが出たって言うか出た後なんだそうでさ?立ち向かったは良いけど足をやられたとかなんとか あ、呼んでくるからちょっと待っててね おーい!」
そう言う割に
「君らだよね?化物と戦ったって言ってたの ちょっと良い? こっち、ほら、巫女様達に詳しく伝えて」
支えはするものの雑に
びっこを引いた男達を連れて来た
どうにも彼らが言うには
「化物を追い返した」だとか
その働きは
「王都を守った」だとか
しかし、浅はかではあれど
今、この王都で起こっている状況に乗っかっているだけの発言では無い様に思えたのだろう
勘を頼り
「なぁ、血痕どころか魔力どうのも残ってねぇんだが、お前らの言う『化物』ってのはどんな形をしてたんだ?」
少し口早に問う
「形?形って なぁ?」
その答えに
「あぁ、えっと女だよ女」
咄嗟、歯を食いしばった
貴族相手だったのなら従者が間にでも入っていたのだろうが、相手が相手だ
何も考えずに自衛したに過ぎない
だが、目付きはしっかり変わっていたのだろう
「ふ、二人組でした!片方は二つ結びで」
「もう片方は見るからに機械人形の」
「そ、そうですよ だからこの槍で一撃決めt」
最後まで発する間もなく
「どっちを刺したって」
大柄の男へと急接近した少女?が冷たく呟いた
・・・・・・
血痕が無いんだ
考え無くても分かるだろうに
何を素人相手に牙剥いて
何を人形相手に、、腹立ててんだ
クソが
3/8 19:00
「 へ ぇ、あ、あ の 不気味な 変な形をした方 です」
なんて言葉を溢し
事情を聴取すると彼らはそそくさと居なくなった
一行は城へと向かい
王との面会を終え
そこそこの時間が経った後の事
「でも今回は意外でしたよ~」
少女?へ向け従者が声を掛ける
「ぁ?」
「エーまだご機嫌斜めです?圧が強いですよぉ 自分が言ってるのは人選の方ですって」
顔面付近への攻撃を注意しつつも顔を寄せ微笑む
「 ロゼの事か?」
容赦無く従者の目を突き
少し後ろ、エルフの表情を軽く確認する
「ひぎゃあああああああああ ちょ、シエっいっ えぇ、久々に間が 無い」
従者はリアクションを挟みながらも
「いっつぅ、今じゃないでしょう? もう、戦力が明らかに足りていないのにあちら側で良かったんです?」
進行役を買って出る
「あぁ、カセンだって四六時中ジンを見てらんねぇだろ それに」
「私があっち側だったらまずはカセンから消すしな」
険しい表情で聞いていた森の姫が一回り瞳を大きくしたのを他所(よそ)に
、、いや、少しだけ分かりやすく、羅列し始める
「私を狙う奴が居るくせにあちらさんの国に居た時、態々(わざわざ)生かした奴が居る」
「やり方的に見りゃ今回王都強行をして来たヤツの狙いは私じゃねぇからな ロゼには悪いが戦闘要員として向かってもらった」
「カセン狙いしながらもついでに賢者の石であるジンが手薄なら欲張るだろ? っつぅ訳だ」
回りくどい言い回しを強引に終わらせる様、軽く嫌な顔をし
近くで火を灯していてくれた『門番』から瓶を奪う
「わわっ、巫女様」
「けっ?命拾いの礼にしては安上がりだろうが」
鼻を鳴らし
「ちょ! シエル様!」
従者が止めるも
一気に飲み干した
王との対話も
【巫女ともあろうものが愛を語らずにこの世界をどうしていくと言うのだ】
埒がいかなかったらしく
日々拷問を受けている禿げた悪魔の様子を見るも収穫など無く、帰路に着けない所だ
正直
打てる手が限られ過ぎて中々にお手上げ状態でもある
それはそれはイライラもピークというもの
(今更悠長に別の国を巡ってもらんねーだろうし、唯一ジルバらの情報と合致しそうなのは、、ドワーフか?)
などと
次の手法をグルグルと巡らせ
「そ、それ」
脳内を
巡ら せ
「燃料用なんです」
気絶する様
勢い良く倒れた
九章 完
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