245 熾烈

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



これは一昔前の話だ


若くして騎士となり

一つの騎士団をまとめ上げるまでに成り上がった男がいた


性格は愛想の無い者が近くにいた分、その倍は愛嬌良く育った

それは外交役としても他国を廻り様々なやりとりを任されていた程だ



幼少期は苦労をした


勉強はしなかった、、いや、出来なかった

そういう環境では無かったからだ


その分別の努力をした

時間が許す限り棒を振り、木に登り、走り込んだ


志願兵としても子供ではそう簡単に入隊等は出来ず、幼いながらに付近の魔物討伐から始めた


運良く人より恵まれた体格があった


怪我をしても治してくれる人がいた


そう考えると無茶が出来た


だからこその成果とも呼べるのだが、直接口が掛かるまで時間は然程(さほど)かからなかった



入隊後、誘いが掛かったからといって胡坐(あぐら)をかいてる暇等無い

訓練後は醜い大人達からの嫉妬、新人いびりの対象になった


割に合わない雑用から八つ当たりは当たり前だ

だが、そんな生活でも


しっかりとした設備、普通に剣が振れる事


それと




毎日三食、物が食べられる




それだけで十分だった




彼には目的と呼べるものがあった


己の育った環境の様な場所を無くす事

孤児や貧困、せめて王都内の、自分の周囲だけでも、、


その為にはまず騎士の中、いや、王国の内部を変えていく事が必要不可欠である


それならばと、まずは重要な役職になる事が前提な訳で、、



多少の昇格をしても穏やかに


徐々にではあるがろくでもない連中は薄くなった


それどころか、歳を重ねていく毎に慕う者が増えていった


淡々と仕事を熟(こな)し、着々と実力を磨いた



騎士団の長に任命されたのが十年前


慕う連中がそのまま一つの騎士団となった形だ

喜びもそこそこに、初仕事は大臣からの命が下った


『天狗山に巣食うとされている巨大な魔物の討伐』


長きに渡る策に嵌(はま)り随分と弱っているらしい


好機、実力を過信する訳では無かったのだが隊全体としての活躍、ネームバリューとして申し分無い








愚かだった








隊は野営中を襲撃され、一晩で壊滅した




魔物どころか




暗殺者一人を相手に




情けを掛けられ、隊の長だけが逃がされた




悔やむが、めげてなどいられずに


二度、三度と兵を借り、討伐へと向かった



壊滅

壊滅

壊滅



四度目には単独で、魔物を目にした所で終わった


魔物?


真っ白な女



九つの



尾がある女




しばらくすると否が応でも噂は立った


いつも生き延びるのは独り、生きて帰って来るのは一人だけ


それはそうだ



人殺し


死神


魔族だ人喰いだ



策に嵌(はめ)められたのは魔物でも何でも無かった訳だ



力を持ち過ぎた個人をワカラセルタメ



この汚い世界は権力

正当な方法や願い、ちっぽけな武力なんかじゃどうしようもいかない事を知った


生き残ってしまったからこそ


死んでいった部下や仲間の為にも


アイツの為にも折れる訳にはいかない







見ていろよ







その後、自らの意志で退任した彼は十年間

外交で得た知識や人脈、伝手を頼りに





財力で戦う事を決意した

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