93 天狗

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



8/23 17:30


「、、で?  取り逃がしたと」

小さな銀髪少女?が大きめの二人に詰め寄る


「あ~すまんの、タイミングを見計らったかの様に異形連中が出てきおってな~」

合流するや否やリッツから酒を受け取る


「申し訳無い!  カセン、俺も貰って良いか?  いや~、すまんね」


詰められてる側の二人は謝罪を口にしてはいるが悪びれている様子は微塵も無い



「隊長~、やっぱりあたしらも行った方が良かったんじゃないの~?」

猫のうちの一匹、りんがふわっとした話し方で大柄の男に問う


「知らないよ~今更 お前達が耳が~とか言うからだろ?」

隊長、、と言うには責任感が無さそうな発言である


「お~じゃが、にゃんこ部隊もおったらあの数相手でも何とか捕獲出来たかもしれんのぉ」


「いや~、どうかな~ まぁこっちは出て行ってくれたんなら何でも良いんだけどさ~」

男は面を口元だけ外すとカセンと共に酒を飲み始める


「ちっ、本当にコレがライア隊か?」


「、、、なんか凄く意外ですね」

舌打ちをするシエルの近くに苦笑いのシフが歩み寄る





烏天狗の面をした大柄の男

名はライア・ヨイチ 身長、推定180後半から190㎝程

腰には刀、手には薙刀を携えている

天狗山最強の一角と呼ばれるライア隊のリーダー

時には王都からの隠密依頼をこなしているとの事だが、その素性を知る者は少ない

白装束に下駄を履き、背には大きな翼があるので他の猫達とは別の種族である事が目に見えて分かる



「か~、美味いねごちそうさん 久しぶりだからゆっくり飲みたいけどさっきの後処理とかあるから行くわ」


「お~、オサキの件もすまんが頼むぞ」


「そんな余裕無いよ~、つっかえない爺さんらがのさばってるから今にもバッチバチしそうだしさ?」


「むぅ、しかしオサキにも何かしら言い分があると思うんじゃよ」


「ソレも俺に言われてもね~   まっ、とりあえず出来るだけは動くよ! じゃ、また飲ませて」

身内ネタをしたかと思えば挨拶を交わし

その翼を使いあっという間に天高く舞い上がる



「にゃ~! ももが帰って来てないのに?」


「姉さんはいつもの事! 急ごう」


「お仕事お仕事~」


「え~もう寝たいんだけどな~」


まったりとしていた四匹も一言づつ喋ると物凄い速さで烏天狗を目印に地を駆ける




「何、、あの台風みたいな連中」


「可愛かったな~」

アルとエルフがお菓子を頬張りながら衣類を叩き立ち上がる、、と巫女が近づき 手を出す

「む、巫女殿どうした?」


「、、、私の分」


「ん?」


「私の、分」


「ん?」


「わ・た・し・の」

「あ、え~っと、あ!お菓子だ?  あたしの分半分あげるから!」

アルが割って入り自分が齧っていた分を半分に千切り、シエルの手に持たせる

「でもそれはアルにあげた最後の、、うむむぅ」

そしてもう半分を一気にエルフの口へと詰め込む


「あたしはお腹いっぱいなの~、もう逃げちゃったんでしょ~ どうにもなんないんだし帰ろうよ~あ~あ~報酬無しか~」



巫女は王都方面に歩き出すツインテールと手の平に置かれたお菓子を交互に見ると、小さく笑い 口の中に放る




「むむぅ~、み もご、み み みず~」


「何?見てる分には面白いけど、今日ラフィは虐められる日なの?」

後ろで見ていたバルが慌てて水筒を持って来る




「リッツさんは、今回どうでした?良い体験になりましたか?」

従者がリッツの肩を叩き顔色を伺う


「あ、、え、えぇそりゃ~もう」


「次回も一緒に来てもらえますか?」




「ご遠慮させて下さい~!」



こうして

シエル、カセン、バル、シフ、の見解によりリッツへの疑いは無事晴れた為


一同はそのまま王都へと帰還する
















のだが
















8/23 18:00


「、、え」


「ちょっと  何、、アレ」



リッツとアルが目の前の光景に立ちすくむ



「カセン、バル、ラフィ!! お前らは周りを警戒しろ!」

巫女が声を上げる

「シフ! お前はそいつ持ってジジイの所に急げ」



八つ裂きとなった馬車



それと






短く割れた鉄の棒が無残に転がる

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る