100 在来

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



8/27 8:10


「ん!」

おかわりをよこせとばかりに皿をジンの目の前に置く


「ん! じゃないでしょう、おかわりってちゃんと言いなさい、天下の巫女様なんだろ?」



「    おかわり」

少し間が空いたが照れる仕草も無ければイラつく様な顔もしない


「うむ、素直でよろしい」

(あれ?前にもこんなやり取りした様な)





魔物討伐から4日が経った


あの日喫茶店のマスターは尻に大きなアザを作り、従者は軽い火傷を負った


翌日の朝には猫娘ももの姿は無く、そのお礼とばかりに聖堂の庭に大型の猪の様な生物が転がっていたのでラフィが捌いて食料やら毛皮やらに解体した

エルフは自慢気にドヤ顔を決めていたがあまりの臭い、獣臭にしばらくは「臭いエルフ」と呼ばれていた


かなりの量があった為二日目の夕方まで訪問客にも振舞い、残りは干し肉にした

一応この日にカセンが天狗山まで向かったがライア隊とは合流できず無駄足になったが

「義理堅い連中じゃからいずれ店にでも現れるんじゃないか?」との事だ


三日後には巫女もロボットの様なぎこちない動きではあるのだが、勝手にジャーキー食べ歩きをかまし出したあたりで話の共有を行った

ジンが狙われた理由は憶測だが巫女暗殺の口止め、或(ある)いは巫女陣営側の崩壊を狙っての事、、と言う話で流され「良いから酒、肉」と騒ぎ始めたので一同はギルドへと戻った

ちなみにゼブラ神父様には「干し肉は出来上がり次第送れ、私のだ」と念を押していたのでもものお礼はちゃんと本人にも渡るのでしょう


そして

四日目の朝である




「身体とか平気なのかよ? 昨日もあんだけ飲み散らかした癖に」


「ん、うまいうまい」

昨日大量に仕込んだひじきと大豆の煮物、切り干し大根炒めをおかずにもりもり米を掻き込む巫女


「あれ、聞こえてらっしゃらないのかな お麩(ふ)とワカメの味噌汁はいらないのかな?」


ピタリと箸を止め咀嚼(そしゃく)する



・・・



「散らかしてない、今日も綺麗な店内だろうが 良いから早くよこせ病み上がりの喉が詰まるだろうが」


「俺が片付けたんだろがい! ってか病み上がりの自覚はあったんだ」


「見かけによらず巫女様はタフなんですね~ では、俺らはこの依頼を片付けて来ちゃいますね」

バルが食器を下げ席を立つ


「うむ、巫女殿は小さいのに強いんだな    その調子で血肉の為に沢山食べるんだぞ?」

エルフが巫女の分の水を注ぎ立ち上がり、何を思ったのか少し間をあけてから軽く頭を撫でる


ご飯中の為だからなのか巫女はそれを特に気にせず再び箸を進める



「帰って来て早々無理はしなくて良いんだよ?」


「いやいや全然、むしろ動かないと鈍っちゃいますから、、あとこのエルフのお姫様に『普通の依頼』と言うのも教えておきたいですし」

バルの後ろで腕を組み、うんうんと相槌をするエルフの背中には必要の無さそうな厳つめの大剣が背負われている


「そっか、、ちなみに俺の特訓に付き合ってくれてもええんやで?」


「ははは、良いですよ?早めに帰って来れたら少しやりましょうか では、行って来ますね」


(ほんっと良い子)




「ジン~リッツが来たよ~?」

先程食べ終わったアルが入口の扉を開け入って来る


「お~、今日は何を持って来てくれたのかの?」


「まてまて!カセンの分は配給が来てるでしょうが」

失礼な赤鬼のおかわりを目の前に置いてリッツを出迎える

「あと、アルは『さん』を付けなさいってば」


契約商人とは別で契約金を払っている訳でも無いのに『言葉通り』来てくれるリッツ

元営業マンの亭主にとっては中々大事な存在である


「本当に来てくれたんだ、ありがたいな~」


「おはようございます~、本日は皆さんに頼み事があって参りました」




茶髪の青年は店内に入ると早々に、深々と頭を下げる



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