第三章 死闘第四ドグマ

第18話 第四ドグマ防衛戦

 フレイア・ベルジュがドMだと発覚した翌日、とうとうその時はやってきた。

常に巡回をしている索敵班から、『ドルゼーバ帝国』の飛空艇三隻が『第四ドグマ』に向かって来ているという報告が入ったのだ。

 飛空艇の移動速度から計算して、あと一時間ほどで『第四ドグマ』の防衛圏内に入る。

 現在こちらの戦力は<サイフィード>、つい数時間前に完成した<ウインディア>、<アルガス>六機、という顔ぶれだ。

 敵は飛空艇三隻。一隻あたり装機兵を最大六機搭載できるので、最大十八機の敵が予想される。

 敵が最弱の装機兵<ガズ>だけであれば驚異の数字とは言えないが、ここは「竜機大戦ヴァンフレア」の世界。

 楽観視=死を意味する世界なのだ。恐らく敵の中には、高性能を誇る装機兵<ヴァジュラ>あたりが複数いてもおかしくない。

 <ヴァジュラ>は『ドルゼーバ帝国』の高性能型装機兵で部隊の隊長格が搭乗している機体だ。

 ステータスがかなり高く、竜機兵と言えどなめてかかると普通に落とされる。武装は豊富で剣を装備していたり、槍を装備していたりと操者に合わせてチューンされている。

 特に名前のある操者が乗り込んでいる個体は、HPが一万を超えていたりと「ホントに同一機体なの?」と目を疑ってしまうほどだ。


 今回の作戦は、<サイフィード>と<ウインディア>の二機を戦力の主軸とした防衛戦だ。

 <ウインディア>は俺がゲームのフリーシナリオでお世話になった相棒で、<サイフィード>並みのステータスを持っている。

 しかも、この機体にはフレイアが操者として乗り込んでいる。ドMで性格には難があるが、操者としての腕は折り紙付きなので非常に頼りになる。

 それに<ウインディア>は接近戦主体の機体なので、近接攻撃のステータスが優れているフレイアとは相性がいい。


【ウインディア】

HP2800 EP150 火力1800 装甲1800 運動性能120

属性:風

武器:エーテルブレード

術式兵装:リアクターブレード


【フレイア・ベルジュ】  

年齢:18歳  性別:女

Lv:10   

近接攻撃:190  遠距離攻撃:144  防御:150  反応:172

技術:168  マナ:185

【バトルスキル】

勤勉  抹殺 

【パッシブスキル】

免許皆伝  インファイター(Lv2) 


 フレイアのパッシブスキルには『免許皆伝』という固有スキルがある。固有スキルは竜機兵の操者たちに設定されている強力な専用スキルだ。

 ゲーム内でもフレイアにこの固有スキルがあったことから、最初は竜機兵チームの一員となる予定があったのかもしれない。

 ちなみに、『免許皆伝』の能力は、近接攻撃+30%、技術+20%、火力+300、運動性能+40という中々強力なものだ。

 これを加味すれば、かなりステータスがアップする。俺もアバターにたくさんのスキルを習得させたが、固有スキルのような唯一無二のものはやはり惹かれるものがある。


 作戦の続きだが、敵飛空艇が『第四ドグマ』の防衛圏内に入ったら、この二機で先制攻撃を加える。

 <アルガス>隊は俺とフレイアが突破された時の保険として『第四ドグマ』に待機するという配置になっている。


「フレイア、<ウインディア>の操縦に慣れる時間がなかったけどやれそうか?」


『問題ない。戦闘中に馴染ませていけばいいだけの話だ。それより、お前の方こそ問題ないのだろうな? 分かっているとは思うが、この戦いでは私たち二人が戦力の要となる。片方でも落とされれば、一気に形勢は不利になる』


 <サイフィード>のモニターに映るフレイアは、真剣でありゲーム内での彼女そのものだ。

 その言葉にプレッシャーが重くのしかかる。


「分かってるよ。<サイフィード>の調整は終わっているし、あとは俺がヘマをしなければいいんだろ?」


『やはり分かっていないか。いいか、よく聞け。戦いは一人でするものではない。仲間と共に支え合って乗り越えるものだ。共に戦う以上、私はお前に背中を預ける。だから、お前も背負っている重荷の半分を私に預けろ。そうすれば、多少は軽くなる』


「フレイア……」


 昨日はドMなんて言ってごめんなさい。今のあなたはめちゃくちゃカッコいいです。

 それに、重くのしかかっていたプレッシャーが本当に軽くなったような気がする。仲間がいるとこんなに気持ちが楽になるのか……知らなかった。

 

『! 来たぞ!』


 モニターに空に浮かぶ船の機影が三つ映る。間違いない、『ドルゼーバ帝国』の飛空艇<カローン>だ。

 こっちの<ロシナンテ>とは違って、HPが高く撃墜するのに時間がかかる。むしろ<ロシナンテ>、お前はどうしてそんなに脆弱なんだ? 

 飛空艇の性能差を呪っていると、<カローン>から装機兵が投下される。モニターをズームし『鑑定』しながら敵機の機種を確認すると、俺はギョッとした。

 『鑑定』結果の中にHP一万越えが三機もいたのだ。俺の予想通りに<ヴァジュラ>が投入されていた。

 明らかに<ガズ>とは異なるマッシブな外見。重騎士という言葉がピッタリ似合うこの装機兵は火、水、風の三種類の属性を持ったタイプが存在する。

 今降下しているのは、火属性である赤い機体が二体、水属性である青い機体が一体。

 ゲームでは属性による相性で弱点となる属性で一気にたたみかけたが、<サイフィード>は無属性でどの属性の装機兵とも無難に渡り合える。


 操者情報も併せて確認するが、<ヴァジュラ>に乗っているのは全員エリート兵らしい。だが、そのステータスは高めであり油断をすれば命取りになる。


「フレイア、<ガズ>とは違う機体が三機いるけど、そいつらは俺がやる! そっちは<ガズ>の方を頼む!」


『それは構わないが大丈夫なのか? あの三機は明らかに他の機体とは格が違う。かなりの手練れだと思うが?』


「だからだよ。無強化の<ウインディア>じゃ分が悪すぎる! <サイフィード>は多少強化しているし、追加の武器もある。任せろ!」


『……分かった。なら、任せる。死ぬなよ』


「お互いにな!」


 かくして俺は地上に下り立ったばかりの<ヴァジュラ>目がけて急接近する。

 幸い、あの三機はそれぞれ離れた場所に降下したので<ガズ>を無視すれば、それぞれサシで勝負できる!

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