第277話 激戦始まる


 ティリアリア達がロボキャットファイトを始める中、他の対戦カードも決まり始めていた。


『……あたしの相手はお前らか。はんっ! どいつもこいつも雑魚ばかりじゃないか。さっさとぶっ倒して姉貴の援護にいかせてもらうよ!』


 目の前に立ちはだかる三機の機体――<シルフィード>、<グランディーネ>、<ドゥルガー>を眺めると<パールバティ>の操者サンダルフォンは肩透かしとばかりにため息を吐いた。

 その覇気のなさに三機の操者たちは苛立ちを見せる。


『誰が雑魚だって!? 上等よ、やってやろうじゃん!!』


『『ワシュウ』で戦った時は遅れを取ったけど今度はそうはいかないわ。私の<ドゥルガー>でぶっ壊してあげる! 覚悟しなさいよ、このドリル野郎!!』


『……気が重いな。こんながさつな女共に混じって戦うのか。はぁ……』


 敵味方の気性の激しい女性陣に囲まれシオンは辟易していた。




 その一方ではバラキエルが搭乗する<ナーガラーゼ>に対し<アクアヴェイル>、<クラウ・ラー>、<フェンリル>の三機が立ち向かっていた。


『ふぅん、アタシの相手はあなた達って訳ね。第一特異点のカーメル王にクリスティーナ姫か……国が違うとは言え王族が二人もいるなんて中々に豪勢ね。あとは転生者が一人いる様ね……』


『あら、あなたもしかしなくてもオカマですか? 奇遇ですね、私も元オカマです。もっとも私はオネエと言う表現の方が好きですが』


 現役オネエのバラキエルと転生し女性の肉体を得た元オネエのロキの対面によって何が起こるのか予想不可能な二人の王族は静かに見守る。

 そのような不可思議な空気の中、先に口を開いたのはバラキエルの方であった。


『元オカマ……ねぇ。あなた、どう見ても女性にしか見えないけど、もしかしてアタシを混乱させる虚言だったりする? だとしたらこれまた随分と陳腐な――』


『以前の私はひげは濃い方では無かったのですが、それでも日々の体毛チェックは入念にしていましたね。それにスキンケアも大事です。ちなみに男性のセクシーだと思う部分は腕の浮き出た血管です』


『――同志! まさか、こんな場所であなたの様な人間と出会うことになるとはねぇ。非常に残念だわ』


『ええ、私も同じ気持ちです。このような境遇で無ければ友達になれたかもしれませんね』


 お互いに攻撃態勢に入る<ナーガラーゼ>と<フェンリル>。

 一方で何処か蚊帳の外に追いやられた感じになっていたカーメル三世とクリスティーナも武器を構えた。


『……カーメル王。わたくし非常に戦いづらい感じがするのですがそちらはどうですか?』


『奇遇だね。私も右に同じだ。バラキエル――話が通じる相手ではあるようだが仁義に厚い人物とみた。仲間を裏切るような真似はしないだろう。戦うしかない!』


『やはりそうなりますわよね』


 立場は違えど仲間の為に戦う姿勢は変わらない。そんな戦争の現実をひしひしと感じながら互いの正義をかけた戦いが始まろうとしていた。




 クロスオーバー幹部専用熾天セラフィム機兵シリーズとの戦闘が開始される中、<量産型ナーガ>を相手にしているのは<スサノオ>、<ドラパンツァー>、<ハヌマーン>二機とドラゴンキラー部隊だ。

 ドラゴンキラー部隊は飛空艇の防衛に回り、その他の機体は最前線で敵機を各個撃破していく。


『はぁぁぁぁぁぁぁ!』


 ジンは気合いの雄叫びを放ちながら斬竜刀ムラクモで巨大な敵機を叩き斬っていく。その鬼神の如き戦いぶりに無人のはずの<量産型ナーガ>達が恐れをなしたように動きをこわばらせる。


『うちのリーダーはさすがだねぇ。無人の熾天機兵どもがビビってるぜ』


『あれはもう勇者じゃなくて魔王の風格だな。<オーベロン>も味方にいるし、どっちがラスボス側なのか分からなくなってきたなぁ』


 敵を圧倒する<スサノオ>に感心しながらも<ハヌマーン>ヤマダ機とヒシマ機は伸縮機能を有するフリーダムロッドを巧みに操って<量産型ナーガ>の耐久力を削り、そこに<ドラパンツァー>の重火器を叩き込んで一機ずつ確実に破壊していった。


『今さらながらだけど、あんたら二人はどうしてそんな機体に甘んじてるんだ? あんたらの実力ならもっと強力な装機兵だって意のままに動かせるはずだろ』


 撃墜数を順調に稼ぐフレイはヤマダ機とヒシマ機の適確なアシストを受け、二人の確かな実力を肌で感じていた。

 

『あっはっはー! 原作主人公にそこまで言われるなんて嬉しいねぇ』


『真面目な話、竜機兵みたいな唯一無二な機体よりも<ハヌマーン>の様な量産機よりもちょっと性能が高いぐらいの機体が俺たちの好みなのよ。リアルな現場でのエース機って感じがするからね』


『そう言うもんなのか?』


『そう言うもんなのよ。それに俺たち二人はそこそこのおっさんなんでね、若人を差し置いて自分たちが目立つ事はしたくないんだよ。こうして若者たちのアシストをする位が丁度良いの。そう言う訳で頑張ってちょうだいよ、フレイ!』


『あんたらの言い分は分かったよ。それならその適確な援護を当てにさせて貰うぜ!』


 息の合った連携で順調に敵機を撃墜する中、<スサノオ>が一時後退しフレイ達に合流する。

 その際ジンは空で戦闘中の<サイフィードゼファー>の様子を心配していた。


『ハルトが今戦っている<ラクシャサ>という熾天機兵……『鑑定』で見た限りでは剣による白兵戦重視の機体のようだな。術式兵装に頼らない戦い方をする分隙が無い。あのままではハルトは合体することは出来ん。――ヤマダ、ヒシマ、フレイ』


『言いたい事は分かってるよ、大将。<ラクシャサ>の相手を買って出る気なんだろ。あの機体はまだ本気を出していない。その時一番対抗できるのは<スサノオ>だろうからね』


『ここは俺たちが食い止める。ハルトにはあそこでふんぞり返っている敵の親玉をぶっ倒して貰うのがベストな選択だ。こいつらはガブリエルを中心にしてまとまっている。頭を潰せば組織はガタガタになるだろうからな』


『そう言う訳だ。ジン、あんたはハルトの所に行ってやってくれ。雑魚どもは俺たち三人に任せておきな』


 ヤマダ、ヒシマ、フレイの三人に後押しされるとジンは<スサノオ>のエーテルフラッグをウィング形態にしてハルトの援護の為に飛翔するのであった。

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