第276話 オーベロン無双
再び<量産型ナーガ>との戦いが始まった。ガブリエル達は高みの見物を決め込んでいる。
『今は何とか持っているけど、このままじゃジリ貧だわ。ハルト、こうなったら!』
「そうだな、こうして敵の親玉も出てきた事だし戦力の出し惜しみをしてやられたら元も子もない。やるぞ、ティア! ――ブリッジ!!」
『そう言うと思って<カイザードラグーン>と<オーベロンアーマー>の出撃準備は既に終わっているわ。すぐに発進させます。二人は指定した座標に移動して!』
「了解!」
シェリンドンの言った通りに間髪入れずに<ニーズヘッグ>から二機が射出された。俺とティリアリアは合体シークエンスに入るため空へ移動を開始し、他の皆は敵を遠ざけるために援護に入ってくれた。
『――来た! 早く合体して皆を助けないと』
<ティターニア>と<オーベロンアーマー>が合体のため飛行軸を合わせていると、地上から凄まじい速度で上昇してくる機体が一機。
「あいつは新型のうちの一機か。あの方向は……まずい!!」
頭部から赤い髪みたいな物を生やした
奴の目的を察した俺は合体シークエンスを中断して飛竜形態でティリアリアの方に飛翔した。
『第二特異点ティリアリア・グランバッハ……そして、<オーベロン>……ウリエルに関係する物は全てこのマルティエルが排除する!!』
『――敵!? このタイミングじゃ躱せない。……やられる!?』
合体シークエンスに入っていた<ティターニア>に接近して二振りの刃が振り下ろされる寸前、俺は<サイフィードゼファー>を人型に変形させてそいつに体当たりした。
「この野郎ッ!! やらせるかよ!!」
『ちぃっ! 貴様ァァァァァァ!!』
マルティエルの機体と一緒にきりもみ状態で落下していていく中、エーテルスラスターを全開にして体勢を立て直すと蹴りを入れて距離を取った。
『ハルトッ!!』
「俺は大丈夫だ! ティアは先に合体を済ませて皆の援護に回ってくれ。俺はこいつを抑える!」
『分かったわ!』
<ティターニア>と<オーベロンアーマー>の合体シークエンスが再開され高度を取り始めた。
『行くわよ! 妖精合身、ゴォーーーーー!!』
ティリアリアの気合いの入った掛け声と共に<オーベロンアーマー>が
胸部装甲が開くと両脚を背部に折りたたんだ<ティターニア>がそこに向かっていく。
<ティターニア>が<オーベロンアーマー>の内部に収納されると胸部装甲が閉じて頭部の
背部のエーテルフェザー発生翼からエーテルの翼が放出され始め、頭上ではエーテルハイロゥが展開される。
『合身完了! 妖精王、パーフェクトオーベロンッッッ!!』
光の羽を舞い散らせながら純白の装甲を纏った妖精王が誕生した。
くぅぅぅぅぅぅ! でっかいロボットの中に組み込まれるパターンの合体もやっぱりいいなぁ。
ティリアリアの掛け声も板に付いてきたし見ていて満足だ。――さて、それじゃあ俺はこの合体を妨害しようとした不届き者をぶっ潰すとしようか。
俺とマルティエルが睨み合いを続けているとコックピットモニターにティリアリアが映りアイコンタクトを取るとお互いに頷き合う。
『はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』
ティリアリアの気合いの雄叫びと共に<パーフェクトオーベロン>は急上昇し高度を取った。
その行動を危険と判断したのか何機もの<量産型ナーガ>がティリアリアを追っていく。
「全機、<パーフェクトオーベロン>の真下から離れろ。聖女様が本気を出すぞ!」
聖竜部隊の各機に指示を出すと、それでティリアリアが何をする気なのか皆分かったらしく蜘蛛の子を散らすように逃げ始めた。
「ティア! 皆は退避したから気にせず思い切りぶちかませ!!」
『了解! いくわよぉぉぉぉぉぉ!! シャイニングゥゥゥゥゥゥ! フェアリアル……キィィィィィィィィッッック!!!』
右脚部に膨大なエーテルエネルギーを集中させ<パーフェクトオーベロン>が急速下降を開始した。
下方に群がっていた<量産型ナーガ>の集団はその圧倒的な蹴り技によって一瞬で撃破され、その勢いのまま<パーフェクトオーベロン>は大地に降り立った。
高高度からの必殺キックによる衝撃で大地には巨大なクレーターができあがり、その中央部では土煙から姿を現した妖精王が威風堂々の佇まいで立っていた。
『お爺さまとお母様とお父様が遺し、聖竜部隊の手で蘇った<オーベロン>。この子を只の装機兵と思わない事ね。この子には皆の想いがこもっているんだから! フォトンレーザァァァァァァァァァ!!』
<パーフェクトオーベロン>の額から高出力のエーテルエネルギーがレーザー砲として発射され、射線上にいた敵機を次々に灼き払っていく。
レーザーに直接触れなくてもその衝撃波に巻き込まれた機体もダメージを負い戦況は一気に俺たちの側に傾いた。
『次はあなたよ、ガブリエル!』
『ティリアリア・グランバッハか。その手で家族の仇を打つ事にこだわるかね? 復讐心に囚われるとは聖女らしからぬ行為だな』
ティリアリアが攻撃をガブリエルに向けると奴は動揺するどころか煽ってくる。そんな挑発行為に対しティリアリアもまた皮肉で返す。
『あら、お生憎様。あんたみたいな、いい歳して金髪ロン毛しているキモいおっさんにそんな感情抱くほど私、暇じゃないの。とっとと私の前から消えてくれると嬉しいわ。――っと言う訳で早速ぶっ飛ばしてあげる! エーテル集中、フォトンレーザーーーーー!!』
躊躇なしのフォトンレーザーが<インドゥーラ>に向けて発射されると、その間に<サーペント>が割って入り巨大な氷の壁を形成すると角度をつけて前面に展開した。
フォトンレーザーは氷の壁に直撃すると角度に応じた方向に射線を逸らされて遙か彼方の空へと消えていった。
『フォトンレーザーが逸らされた!?』
『<オーベロン>の額から発射されるレーザーは光属性のエーテルエネルギーを収束して放ったもの。言わば荷電粒子砲の類と考えられます。直撃すれば驚異ですが、こうして軌道を逸らせてしまえば無力化できるのですよ。そんな事よりも……ガブリエル様を侮辱するだけでなく傷つけようとするとは、身の程を知りなさいこのメス豚!! あなたはこの手で抹殺して差し上げます!!』
『誰がメス豚ですって!? 上等よこの蛇女! フォトンレーザーが効かないのならフォトン八卦掌でボコボコにしてやるまでよ!!』
『ティリアリア様、私も加わります。共にあの蛇女に灸を据えてやりましょう!』
『……さっきから蛇女蛇女と……黙って聞いていれば調子に乗って……! その四肢をもぎ取り抵抗出来なくなった後にコックピットを抉り殺してあげます!!』
こうして殺意をたぎらせるメタトロンに対してティリアリアとフレイアのタッグが戦う構図が完成した。
巨大ロボットによるキャットファイトの始まりにドルゼーバの大地が震えていた。
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