第2話 どうやら転生したらしい
とても長い夢を見ていた気がする。こことは違う世界。無機質で巨大な建物が世界を覆う、そんな世界だ。
その世界で俺は――――。
「ハルト! ハルト・シュガーバイン!! そこで何をしている!!」
「へ?」
突然の大声によって、まどろんでいた俺の意識は一気に覚醒した。
「あっ、あれ? ここはどこ!? 俺の部屋じゃないの!?」
「何を寝ぼけているんだ! 今がどんな時なのか分かっているのか!? お前たち訓練生の卒業試験、その実技試験中なんだぞ!! それなのに、お前ときたら……」
芝生で寝転がっている俺の目の前には、顔に青筋を立てて激怒している中年の男性がいた。額に手を当てて「はぁ~」とため息をついている。
既に怒りを通り越して呆れているようだ。そんな彼に俺は見覚えがあった。確か「竜機大戦ヴァンフレア」のストーリーに出てくるキャラで主人公フレイの教官ランド・ミューズだ。
しかし、なんだってこの人がこんなリアルに俺の目の前にいるのだろうか? このゲームはいつからVR仕様になったんだ? てか、うちにはVRゴーグルとか置いていないはずだけど、どうなってんの?
しばらく目の前にいるランドを見た後、俺はゆっくり彼に近づいて見る。疑問に思っていても何も解決しない。そんな時は即行動だ。
「どうした、シュガーバイン? 私をジッと見て、何か顔に付いているか?」
「ふむ」
「何が『ふむ』だ! いつまでバカをやっているんだお前は!!」
怒号と共に俺の頭に衝撃が走る。彼の怒りの鉄拳が雷のごとく俺の頭頂部に落ちたのだ。そのあまりの痛みに俺はその場にうずくまってしまう。
「ちょ……何てことするんですか教官。頭悪くなったらどうしてくれるんですか」
「安心しろ、もうそれ以上悪くなりようがない。もう……手遅れだ」
あまりにも酷い一言だった。だが、このやり取りにどこか安心するような感覚がある。今までに何度も同じようなことをやってきたような気がする。
ついでに俺は今とっさにランドを〝教官〟と言った。それにさっき〝訓練生〟や〝試験〟と言われていた。
「いつまでも寝ぼけていないでさっさと起きろ! もう少ししたらお前の番だ。私は先に行っているぞ!」
「は……はい、分かりました!」
そう言うとランド教官は向こうに走って行ってしまった。このやり取りに既視感を覚えしばらく考えてみると、その理由が判明した。
「そうだ……この流れ、確かフリーシナリオの始まりと同じなんだ……一体何がどうなって……」
その時、俺のすぐ近くで「ピロリン」と音が鳴り、びっくりしてその場から飛び退くと、俺の目線の高さの何もない場所にメッセージウィンドウが浮いていた。
そのあまりにもシュールな光景に俺は何度も目をぱちくりさせるが、そのウィンドウはそのままそこにあった。どうやら幻ではないらしい。
というか、この状況が夢なのか現実なのかわけが分からず混乱している今、これ以上混乱の種が増えるのは勘弁願いたいのだが。
「このウィンドウは何なんだ? ん? 何か書いてある」
そこには『あなたは『竜機大戦ヴァンフレア』の世界に転生しました。ちなみに元の世界には帰れないのでこの世界で頑張ってね。――この過酷な世界で君は生き延びることができるか!?(笑)』と書かれていた。
次の瞬間、俺はそのウィンドウを掴んで地面に叩き付けていた。掴めた瞬間に「掴めるんだ!?」と内心驚いたのは内緒だ。
ってか(笑)って何だよ(笑)って! バカにしてんのか!?
しかし、ふと冷静になってさっきのメッセージの内容を思い返すと、とんでもない事態に陥っていることに気が付く。
「俺……まさか……本当にゲームの世界に来ちゃったのか?」
呟きながら空を見上げると、そこには何隻もの飛空艇が空を飛んでいた。
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