第198話 リベンジ開始

 合体が完了した<カイゼルサイフィードゼファー>は深紅の眼を光らせながら上空から<オーベロン>を見下ろしていた。

 白き聖竜機兵のパワーアップを目の当たりにしてジュダスは全身をわなわなと震わせていた。


「合体した……だと? なんなんだよそれは!?」


「これが<サイフィードゼファー>の最終形態だ。この機体の力でお前を倒す。――行くぞ!!」


 <カイゼルサイフィードゼファー>は背中の翼からエーテルフェザーを放ち、高速飛行であっという間に間合いを詰めると飛び蹴りを<オーベロン>にお見舞いする。

 倍近いサイズ差がありながらも、その赤い巨躯は蹴り飛ばされ後方の建造物に勢いよく衝突した。


「くっ、この程度で調子に乗るなよモブ風情が!」


 <オーベロン>の周囲に無数の魔法陣が展開されすぐさまエレメンタルキャノンの発射体勢に入った。


「――来るっ! エーテルフェザー散布、前面展開」


 ハルトが機体前方にエーテルフェザーを集中させ半球状の障壁を形成すると、そこにエーテルの砲弾が次々と当たっていった。

 その攻撃は球面状の障壁に受け流され周囲に拡散し消滅していく。


「そんなバカな! <オーベロン>の攻撃を凌ぎ切っただと!?」


「確かに<オーベロン>は文句なしの最強の機体だよ。でも、それはあくまでゲームの中での話だ。この世界は俺たちが知っている『竜機大戦』とは異なる道を辿っている。ゲームとは違うんだよ――これはお返しだ!」


 妖精王の攻撃を防いだエーテルの障壁に拳を打ちつけると、それは勢いよく吹き飛び前方にいる敵に命中した。

 それにより<オーベロン>の動きが一時的に麻痺しハルトはそこに追撃を加えようと左腕にエーテルを集中する。


「本命はこっちだ。術式解凍――バハムートォォォォォォォ!!」


 <カイゼルサイフィードゼファー>の左手が輝き魔法陣が展開されると高密度のエーテルが弾丸のように発射された。

 弾丸形態のバハムートは<オーベロン>の腹部に直撃し装甲を削りながら、その巨躯を奥へと押し込む。攻撃を受けた部分では抉られた痕が残り自己修復が追いつかない。


「この程度のダメージじゃ<オーベロン>はやられはしないよ。遠距離攻撃が効かないのならこれで斬り刻んでやる!」


 ジュダスは機体の両手からフォトンソードを出してハルトに向かって行く。

 一方のハルトは機体の右前腕に装着した剣のつばを開くと、そこから黄金の光を帯びる刀身を出現させた。


「エーテルカリバーン刀身固定――ぶった斬る!!」


 両機は互いに翼からエーテルを放出して空中で刃を交えた。ジュダスの二本の光剣をハルトは一本の聖剣でさばいていく。

 互いの刀身を形成するエーテルエネルギーが衝突する度に干渉し合い激しい火花を散らせる。


「くそっ、なんで押し切れないんだよ。こっちは二本の剣で攻撃しているんだぞ、向こうよりも攻撃の手数は二倍のはずなのに――」


 事が上手くいかずジュダスは怒り冷静さを失っていく。それによって攻撃の精彩さを欠き剣が大振りになっていく。

 百戦錬磨のハルトはこの隙を逃さずコンパクトに敵の斬撃を切り払ってカウンターの袈裟懸けを浴びせた。

 それを何度も繰り返し<オーベロン>の胸部装甲はずたずたに斬り裂かれていった。


「ま、まだだ! まだ僕はやられちゃいないぞ」


 <オーベロン>が再びエーテルの弾幕を放つ。今度はハルトを狙ったものではなく、周囲に無差別に放たれ一面に炎と煙が立ち込めた。

 

「視界が……<オーベロン>が消えた? 何処から来る!」


 炎と煙で視界が悪い中、ハルトは姿をくらませた敵機を捜す。そんな彼の後方で燃え上がる炎の中から<オーベロン>が出現し襲い掛かって来た。


「バーカ、後ろががら空きなんだよ。落ちろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 <オーベロン>がフォトンソードで斬りかかろうとした時、<カイゼルサイフィードゼファー>の尻尾が伸びて後ろから接近する卑劣な敵を叩き伏せる。

 赤い装甲表面が削られダメージでたじろぐと、ハルトは機体を振り向かせながらその動きを利用して再び勢いよく尻尾を敵にぶつけ吹き飛ばした。


「ぐはっ、たかが尻尾のくせに何だこの威力は!?」


「後ろからとは卑怯じゃないか、ジュダス。――このブレードテイルはワイヤーブレード参式が変化したものだ、飾りじゃないんだよ!」


 ブレードテイルによって体勢が崩れた敵に対し今度はハルトが接近戦を挑む。エーテルカリバーンの刀身にエーテルが集中し黄金の光が溢れだす。

 同時並行で<カイゼルサイフィードゼファー>の尻尾がいくつもの刃に分かれて飛行し本体よりも先に敵を急襲した。


「逃がすものかよっ! ブレードパージ――術式解凍、スターダストスラッシャー!!」


 無数の流星となった刃たちは<オーベロン>の身体と頭上で輝くエーテルハイロゥを何度も攻撃していき、ダメージを与えるとともに動きを封じる。

 その隙に間合いに入ったハルトは剣に込めたエネルギーを解放し光の斬撃を妖精王に浴びせるのであった。


「いけぇぇぇぇぇぇぇぇっっっ! 術式解凍――コールブランドォォォォォォォォォォォ!!」


 聖竜機皇の放った光の斬撃を妖精王は右手のフォトンソードで受け止める。両者の光剣が衝突する中、その鍔迫り合いを制したのは聖竜機皇であった。

 コールブランドは妖精王の光剣を砕き、更に右前腕を斬り裂き破壊した。

 右腕を失いバランスを崩した敵に、ハルトは更に追い打ちを掛けようと機体を肉薄させる。

 エーテルカリバーンでフォトンソードを受け止め左手で敵の身体を掴まえると、左膝の先端に魔法陣を展開しつつ膝蹴りを放つ。


「そんなただの蹴りが効くわけ――」


「今更そんな攻撃するわけないだろ。この間合いなら外さない――エーテルパイルバスター!」


 <カイゼルサイフィードゼファー>の膝部排気口から勢いよく煙が排気されると、敵に打ちつけた膝の魔法陣からエーテル金属製の杭が発射され零距離で<オーベロン>の腹部に突き刺さった。


「かはっ! なん……だと!?」


「ちっ、浅い……ならさっ!」


 ハルトは敵を掴んでいた左手を離すとエーテルを集中し追撃に入る。


「こいつはアフターサービスだ、しっかり受け取りな! 術式解凍――バハムートォォォォォォォ!!」


 高密度のエーテルを集中させた左手を杭に思い切り打ち込むと、杭は敵機の身体を貫通した。

 更にバハムートが追い打ちをかけ<オーベロン>の腹部に大ダメージを与えると、損傷箇所からは火花が発生しエーテル循環液が噴き出していた。

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