第27話 竜機覚醒
「これは……? <サイフィード>? 俺と一緒に戦ってくれるのか?」
相棒の白い竜から力強い意思を感じる。それは、恐怖と戦いながらも勇気を出して踏み出した第一歩のように感じた。
すると、モニターに<サイフィード>と俺のステータスが表示され、追加情報が出現する。
俺のパッシブスキル欄の一番最初にある『???』が『竜を駆る者』に変化した。
その内容は、『<サイフィード>搭乗時、操者の各ステータス+20%及びステータス限界突破、<サイフィード>のステータスHP+1000、EP+100、火力+1000、装甲+500、運動性能+100、ハルト・シュガーバインの固有スキル』というものだった。
「俺の固有スキル? なんつー、ぶっ壊れスキルだ! 各ステの伸びがハンパないぞ!?」
続いて<サイフィード>のステータス画面においても、アビリティ欄に『飛竜形態』に続いて『ドラグーンモード』が追加された。
その詳細については<サイフィード>が俺の頭の中に直接教えてくれた。これを使いこなせたら、どんな相手とも互角以上に戦える!
<サイフィード>が光り輝くこの数秒の間で、一気にこちらの戦力が向上した。白い竜機兵は雄雄しく、目の前の黒い竜機兵と相対する。
『これはいったい何が起きたというんだ? さっきまで震えていた竜とはまるで違う。ふ……ふふ、そうか<ベルゼルファー>。嬉しいのか……ならば、ハルト・シュガーバイン! 行くぞっ!!』
「来るかっ!? やるぞっ、<サイフィード>!!」
二体の竜機兵は、走りながら互いにエーテルブレードを装備し同時に斬り合う。互いの刀身が激しくぶつかり合い、火花が発生する。
剣越しに睨み合い、同時に離れながら斬撃を浴びせようとする。しかし、その動作もまるで鏡に映したように同じであり、剣がぶつかり合いながら二体は後方に跳び退いた。
「やるっ! 色々生意気なことを言うだけはある。でも、こっちもパワー負けしていない! 動きも軽い! これなら戦える!!」
『いいぞ、予想以上の動きだ! もっと、俺にお前の力を見せてみろ!!』
再び接近し、何度も鍔迫り合いが行われる。一撃一撃に殺意とマナをのせて斬り込むが、それを通すことを敵は許さない。
同様に黒い竜の攻撃のことごとくを、俺はしのいでいく。
「なんてヤツだ! まともに一撃を入れることも出来やしない!」
焦りが俺の心を
他のステータスは判明したためHPだけが鑑定できなかったわけではないだろう。ということはゲームと同じ仕様なら、こいつのHPは十万以上あるということになる。
『竜機大戦』では、十万以上のHPは『????』となっており、ダメージを与えて残りHPが十万をきると初めて数値化されていた。
「くそっ! 兄弟機なのに、どうしてHPにこんなにも差があるんだ!? こっちは全ステ込みでHP7400なのに、その十倍以上って詐欺だろ!?」
焦りにより、敵の攻撃への処理が甘くなる。それをアインは見逃さなかった。
『甘いっ!』
<ベルゼルファー>の斬撃が<サイフィード>の左肩に直撃し、装甲が悲鳴を上げる。HPは7400から6500まで低下した。
ダメージとしては大きくはなかったが、向こうにはもっと強力な術式兵装が複数ある。
追加でダメージを受ければ、パワーアップした<サイフィード>でも無事では済まない。
「ここは手堅くいくか。バトルスキル『修復』!」
左肩のダメージが治っていき、HPも7400に完全回復した。『修復』は自機のHPを20%回復する回復系のバトルスキルだ。
ゲームでは竜機兵<アクアヴェイル>が他機体への修復機能を持っているのだが、不在の現状ではHP回復手段はバトルスキル頼みなので計画的に使わなければマナが底をつく。
それに、HPが十万以上あるであろう<ベルゼルファー>に大ダメージを与えるには、大量にEPやマナを消耗する術式兵装を使わなければならない。
これだけ隙がない相手なのだから一発の攻撃が大事になってくる。
攻撃系のバトルスキルも織り込んで短期決戦に臨まなければEPの残量も危険だ。
最悪、HPやマナは回復手段があるのだが、EPに関しては飛空艇で補給する以外に回復の術がない。
「守っていてもジリ貧になるだけだ。一気に倒すしかない! アレを使うぞ、<サイフィード>!!」
精神を集中、マナをドラゴニックエーテル永久機関に送り、発生した大量のエーテルを<サイフィード>の全身に送り込む。
白い竜騎士の全エナジスタルが輝き始める。その様子を目の当たりにして、<ベルゼルファー>が怯んだように後ずさりした。
『この光はいったい何だ? 今度は何をしようとしている!?』
仮面を着けているので分かり難いが、アインにも余裕はなさそうだった。驚くのはこれからだ、覚悟しろよ!
「……行くぞ! 全術式解凍! ドラグーンモード!!」
<サイフィード>の両前腕の装甲が開き内部のアークエナジスタルが露出、機体に装備されている全てのエナジスタルが共鳴し出力が上がっていく。
頭部、両肩、両前腕、両脚部にストレージから追加装甲が施され防御力が向上。
背部のメインエーテルスラスターは、飛竜形態時の翼に形状が近いエーテル光の翼へと変化した。
こうして、<サイフィード>の火力、装甲、運動性能が向上し、ドラグーンモードが完成した。
「くっ! まだ、まともに動いていないのにすごいパワーを感じる。これなら……やれる!!」
<サイフィード>両翼の出力を上げて突撃を敢行すると、一気に<ベルゼルファー>との距離が縮まった。
「うおあっ! あぶねっ!!」
『なっ! 速い!』
両機体の操者から驚きの声が出る。俺は正面衝突する寸前で急停止し、そのまま上空へ退避した。
上空から黒い竜機兵を見下ろすこの状況は、<サイフィード>が空から不時着した時と互いの位置が逆になった構図だった。
「予想以上のパワーだ。ドラグーンモード……使いこなしてみせる!」
急降下しながら再び敵に接近する。悠長にしていたらあっという間に時間が過ぎてしまう。
何としてもドラグーンモード開始から五分以内に決着をつけなければならない。
この形態は強力なぶん、機体と操者の負担が大きく五分のリミッターが設けられている。
ドラグーンモードが終了して、再び使用可能になるのは十分後。しかし、この形態は発動時、マナを五十も消費するので二回目の使用は現実的ではない。
それ以前に、あの黒い竜機兵と操者のアインがそれを許さないだろう。こっちが元に戻れば、
疲弊した状況でその猛攻に耐えきれる自信はない。だからこそ、この五分……いや、三十秒経っているから、残り四分三十秒で仕留める!
「行くぞ、アイン!」
『来い! ハルト・シュガーバイン!』
二体の竜機兵が幾度目かの剣戟を再び行う。だが、今回の内容は今までとは異なり、一方的なものだった。
<ベルゼルファー>の斬撃を切り払うと同時に一気に懐に入り、膝蹴りを腹部に入れ後方に吹き飛ばす。
エーテル光の翼で加速し、吹き飛んだ敵が止まった瞬間に間髪入れずエーテルブレードの斬撃を浴びせる。
普通だったら、この一撃で<ガズ>程度の装機兵はオーバーキルしているところだが、<ベルゼルファー>は訳が違った。
装甲表面に傷はついたが決定打には程遠く、モニターに映る敵のHPバーを確認すると最大値の十分の一程度が減ったぐらいだ。
だがこれでハッキリした。こっちの攻撃はちゃんと効いている。問題なのは敵の異常な耐久値だ。
互いの最大HPの差に対して疑問や不満が頭をよぎるが、そんなことはもうどうでもいい。
<サイフィード>の攻撃が効いているのなら、もっと大ダメージを与えるまでだ。
「スキル『超反応』、『抹殺』! 術式解凍! コールブランドォォォォォォォォォ!!」
バトルスキル『超反応』で命中率と回避率を上げ、『抹殺』によりコールブランドで与えるダメージを二倍に強化する。
攻撃を受けて動きが鈍っていた<ベルゼルファー>は、光の斬撃をまともにくらって各部装甲にヒビが入り、ついに現在のHPが姿を表した。
今の一撃で<ベルゼルファー>のHPは八万まで低下した。まだまだ撃破への道は遠い。
『抹殺』+コールブランドの組み合わせでは、敵への与ダメージは約三万というところだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます