第42話 インターミッション竜機兵チーム合流編
飛空艇<ロシナンテ>は王都にある『第一ドグマ』を目指して『第二ドグマ』を出発した。
<ロシナンテ>は修理が終わった竜機兵<アクアヴェイル>と<グランディーネ>の二機も一緒に搭載しており、四機の竜機兵が並んでいる姿は圧巻だった。
残り一機の竜機兵である<ヴァンフレア>や操者であるはずのフレイの姿が無かったが、それらは機密に触れると思ったのでクリスティーナたちに聞くのは止めた。
錬金技師長のマドック爺さんによると、先の戦闘で得られた資金は三十万ゴールドということで、現在恒例のインターミッション中だ。
「本当に俺が全部決めちゃっていいの?」
「はい、お願いしますわ。あと、まだ正式に発表はされていないのですが、王都到着後ハルトさんと<サイフィード>は竜機兵チームに組み込まれることになります。そして、これはわたくしの判断なのですが、ハルトさんにはわたくしたちの隊長に就任していただきたいと思っています」
「俺が? だって、俺は竜機兵チームの新参者だよ? それが急に隊長だなんて……」
「この件に関しては、シオンもパメラも同意していますわ。先の戦いでハルトさんが見せた単機での戦闘力。フレイアやシオンに的確に指示を出して敵を殲滅して見せた指揮能力。これらどれを取っても、ハルトさんに勝る者はいませんわ」
俺は今まで集団の中でトップに立って色々やるタイプではなかったので、〝隊長〟という響きに萎縮してしまう。
「ハルトさん、わたくしが副隊長として支えますので安心してください」
俺の表情から心中を察したのか、クリスティーナがフォローを入れてくれる。
美人な姫さんにここまで持ち上げられるのは正直いい気分だ。
もし彼女が下ネタ好きのド変態でなかったら、恋に落ちていたかもしれない。
「分かった。竜機兵チームの隊長を引き受けるよ。こういった立場になったことが無いので色々拙い部分があると思うけど、皆よろしく」
「よろしくお願いしますわ」
「頼んだわよ、隊長!」
「よろしく頼む」
ということで俺は竜機兵チームの隊長となり、その最初の仕事として竜機兵チームの機体強化をすることとなった。
ふと見ると、フレイアが期待の眼差しで俺を見ていた。今、あいつの考えていることは大体分かるが、それには応えられない。
「フレイア、ごめん。今回も<ウインディア>の強化は無しだ」
「あぅん! 私だけでなく<ウインディア>にも放置プレイを強いるというのか!」
「そういう言い方やめてくれない!? それだと俺が<ウインディア>に放置プレイかましてるみたいじゃん!」
まさか自分が乗っている装機兵にまで性癖を関わらせるなんて、いよいよこいつは末期だ。
「フレイア、俺は別に嫌がらせとかで言っているんじゃないよ。既にフル強化寸前の<ウインディア>より、強化があまり進んでいない<アクアヴェイル>と<グランディーネ>の方を優先しないといけないと思ったからだよ」
「具体的にはどうするんだ?」
「この二機は<シルフィード>と同じように各ステータスが全部三段階ずつ強化されている状態なんだ。だから、まずは二機ともEPを最大まで上げる。問題はここからだ」
「私たちの機体と同じように火力と運動性能を上げればいいのではないか? 装機兵強化の基本はそれだと以前お前が言っていただろう?」
そう、確かにそう説明していた。装機兵の戦いは基本接近戦だ。機体の機動力を活かして敵を翻弄したり攻撃を回避したりして、強力な攻撃で倒す。
だが、今回仲間になった二機の特性を考えると今までと同じようにはいかない。
RPGのパーティーで例えるなら、今までは〝戦士などの攻撃系〟のキャラ育成の話だった。
一方、<グランディーネ>は最前線で敵の攻撃を一手に引き受け味方を守る〝タンク〟、<アクアヴェイル>は味方を回復させる〝僧侶〟にあたる。
パーティーの屋台骨を支える職業として、とても重要な役割だ。まずは、強化項目がはっきりしている<グランディーネ>から強化しよう。
「まずは<グランディーネ>の装甲を八段階まで上げよう。これだけで、生存率がかなり上昇する。HPは五段階まで上げてこっちは終了。次に<アクアヴェイル>は運動性能と装甲を五段階に上げてHPは四段階まで強化する。現時点ではこれでバランスが良くなったと思う」
「ハルトさん。今回強化した二機の火力は上げなくて良いのですか? この状態では、あまり攻撃力は高くないのですが」
「もしも、サシで敵とやり合う事態になればこれでは心もとないけど、元々この二機は部隊におけるサポート的な役割の機体だ。攻撃は他の機体が担当し、<グランディーネ>は敵の攻撃から味方を守り、<アクアヴェイル>は遠距離から援護しつつ傷ついた機体の修復に徹する。火力に関しては今後の入手資金と相談しながら、余裕のある時に上げていこうと思う。それでどうかな?」
「なるほど、分かりましたわ。チーム運用を重視しての強化ということですのね。今までは皆バラバラで戦う場面が多かったものですから。わたくしの指揮能力が未熟でしたわ」
「それは仕方がないと思うよ。今までの竜機兵チームの編成じゃ、アタッカーが<シルフィード>のみで明らかに火力不足だった。それを補うには、残りの二機にも積極的に攻撃に参加してもらう必要があったと思う。今思えば、このバランスを重視した強化は理にかなっていたと思うよ」
暗くなっていたクリスティーナの表情が一気に明るくなった。彼女は何やかんやで責任感が強いようで、今まで竜機兵チームを引っ張っていくのに相当プレッシャーを抱えていたようだ。
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