第274話 ヘパイストを炎に染めて③

 少し離れた場所では<シルフィード>と<グランディーネ>がドラゴニックウェポンを装備して戦いに臨んでいた。

 対する<量産型ナーガ>は全身に強固なエーテル障壁を纏い突撃態勢を取る。


『ちっ、大技が来るか!』


『望むところよ! <グランディーネ>とどっちがパワーが上か教えてあげようじゃない。シオンは空に避難してカウンターの準備でもしていて!』


『頼もしい……』


 シオンは<シルフィード>を上空で待機させるとエーテルブリンガーにエーテルを集中し始め反撃の準備に入った。

 地上ではエーテル障壁を纏った<量産型ナーガ>の体当たり攻撃ボーガバティーが発動され、エーテルアイギスを両腕に装備した<グランディーネ>が迎え撃とうとしていた。


『体当たり上等! エーテルアイギスを装備した<グランディーネ>の防御力を甘く見ない事ね。――ファフニール発動、いっけぇぇぇぇぇぇぇ!!』


 全速力で向かっていく二機は互いに強力なエーテル障壁を纏いながら激突した。

 拮抗するバリアによって周囲の地面がえぐれ、吹き飛ばされた岩塊は粉々に砕け散っていく。

 体格差から<グランディーネ>が押されていく中、パメラは更にマナを機体に送り込んでパワーを底上げした。


『あんたみたいな雑魚に負けていられないのよ、私は! どらっしゃぁぁぁぁぁぁぁ!!』


 気合いの咆哮と共に敵を押し返した<グランディーネ>は、エーテルアイギスを前面に構えながら突撃し、その衝撃で<量産型ナーガ>の装甲に亀裂を発生させた。

 

『こっちはまだまだ余力が残ってんの。これはオマケのインパクトナックルよ!』


 敵がよろめいた瞬間を逃さず、<グランディーネ>は拳を敵の顔面に叩きつけ同時に衝撃波を撃ち込んで後方に殴り飛ばす。

 そこに追い打ちをかけるように<シルフィード>が高速で接近しエーテルが集中したエーテルブリンガーで目にも留まらぬ斬撃を浴びせていった。


『反撃の暇など与えはしない! 腕、肩、胴――全てを斬り刻んでやる!!』


 <量産型ナーガ>は関節部を中心に攻撃されてバラバラにされ、最後は胸部に刃を突き立てられるとエーテルブリンガーの刀身から発生した風の刃によって内部から身体を刻まれて爆散した。


『ウォーミングアップには丁度良い相手だったわね』


『油断をするなと言われただろう。幹部クラスはこいつらとは桁違いの強さだ。力を温存しつつ残りを叩くぞ!』


『合点承知!』




 時を同じくして竜機兵チームの後方支援担当<アクアヴェイル>と<ドラパンツァー>は豊富な遠距離攻撃で<量産型ナーガ>を抑え込んでいた。


熾天セラフィム機兵シリーズの弱点はエーテルハイロゥです。あれを砕かれると一時的に機体性能がダウンしますわ。その瞬間に攻撃を集中させれば』


『分かってるって、姫さん。こいつの重武装と機動性に任せておきな。<ドラパンツァー>、ゴォーーーーーー!!』


 機動性に優れたタンクフォームで雪原を爆走しながらエーテルダブルガトリング砲、レールガン、エーテルホーミングサンダーを連射し相手の動きを怯ませる。

 その隙に<アクアヴェイル>はエーテルアローを構え敵機の頭上で輝く天使の輪に狙いを定めた。


『すぅー……はぁー……!』


 深呼吸の後、高められた集中力と共に放たれた一矢はエーテルフラガラッハの魔法陣を通過し威力が増すとエーテルハイロゥを撃ち抜き消滅させた。

 パワーダウンを引き起こした<量産型ナーガ>は途端に動きが鈍くなり、そこに<ドラパンツァー>の集中砲火が浴びせられる。


『弱体化した今がぶっ潰す好機。恨むんなら弱点を頭の上に広げている自分を恨みな! ――スタンディングフォームで一気に止めを刺してやるぜ』


 <ドラパンツァー>は大地を駆け抜けながら下半身が戦車型から二足歩行型へと変形し敵が放った触手攻撃をジャンプで回避した。

 空中で武装を展開し照準を<量産型ナーガ>に合わせロックオンする。


『これで止めだ。くたばりなっ!!』


 各砲門から発射されるエーテル弾の雨が降り注ぎ巨大な蛇の怪物を大地にひれ伏させる。フレイは機体を着地させると固定用のスパイクを地面に突き刺し、背部のキャノン砲を前方に展開した。


『バレル展開、エーテルエネルギー充填率八十……九十……臨界に到達……これが本物のエレメンタルキャノンだ。落ちろぉぉぉぉぉぉ!!』


 二つの砲門から大出力の雷撃が発射され<量産型ナーガ>の上半身を跡形も無く吹き飛ばした。

 熱を帯びた砲身の強制冷却のため排熱された熱風が周囲の雪を溶かしていく。


『……よし、一機撃破!』


 強敵を撃破し確かな手応えを感じたフレイは拳を掌に打ち込んで気合いを入れる。その側に<アクアヴェイル>がやってきて破壊された敵機を見やった。


『さすがですわね。後方支援機としての枠を超えた火力ですわ』


『へへっ、姫さんと<アクアヴェイル>には上陸作戦から活躍されっぱなしだったからな。ここいらで俺も面目躍如させて貰ったぜ』


『フレイさんのお陰でこちらはエーテルエネルギーをかなり回復出来ましたわ。他の部隊の皆様も順調に敵を倒しているようですし、そろそろ本命が現れるはずですわね』


『そうだな。ここからが本番――』


 言いかけた時に大きな地響きが伝わり各所で地面が崩れ始める。崩落に巻き込まれないように各機が後退していると再び何機もの<量産型ナーガ>が姿を現す。

 ただし、今回出現したのはそれだけではなかった。

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