第290話 インドゥーラの秘密
「手応えあった! ――けど、これでやられるような相手じゃない。追撃するぞ<サイフィード>!!」
<カイザードラグーン>に<サイフィードゼファー>を乗せて、落下していく<ラクシャサ>を追う。
機体同士の接触部から<カイザードラグーン>にエーテルエネルギーを補充する。
操者のいない<カイザードラグーン>はドラゴニックエーテル永久機関が起動しておらずバッテリーで動いているので独立飛行している時は<サイフィードゼファー>からエーテルエネルギーを補給しないといけない。
いつもならすぐに合体していたから気にしていなかったが、今回のように合体を邪魔された場合は<カイザードラグーン>のエネルギー切れが問題になる。
<ラクシャサ>はきりもみしながら落下しているが、あれが俺を油断させる芝居の可能性もある。
反撃に注意しながら接近しもう一発ぶっ飛ばして地上に叩きつければ、
「このまま地面に叩き落としてやる。――っ!?」
もう少しで<ラクシャサ>に追いつくと思った矢先、強烈な殺気が身体を突き抜けた。
反射的に<カイザードラグーン>を急上昇させて距離を取ると<ラクシャサ>がすぐに体勢を整えた。
『……まさかあの場面で攻撃を止めるとはな。想ったよりも慎重のようだ』
「はっ! やっぱり一芝居打っていたって事か。近づいた所をその大剣で……って筋書きだったみたいだな」
『ここまで我に屈辱を与えたのはお前が初めてだ。今度こそ絶対に斬り捨ててみせる!!』
苦渋に満ちたマルティエルがモニター越しに俺を睨んでいる。これほどまでに強い殺気を隠そうともしていない。完全にブチ切れているみたいだ。
「やれるもんならやってみろよ。怒りに身を任せて戦えば自分を滅ぼすだけだと教えてやる!!」
『貴様ら転生者は居てはならない存在……消えろ、イレギュラーーーーーー!!』
殺意の塊になったマルティエルが突進してきた。
――だが、奴の攻撃が俺に届くことはなかった。俺とマルティエルの間に割って入った男がいたからだ。
その男の機体が<ラクシャサ>のラヴァナの太刀を受け止め、鈍い金属音が周囲に木霊する。
『……ほぅ、中々の打ち込みだ。――だが、俺の斬竜刀を折るには至らないようだな!!』
ラヴァナの太刀を切り払い、反撃とばかりに今度は自機の斬竜刀を大きく振りかぶって叩きつける。
再び強烈な金属音がすると<ラクシャサ>が後方に吹き飛んだ。
「ジン、助けに来てくれたのか!」
『ああ、お前の実力であれば倒せない相手ではないと思ったが油断は禁物だからな』
ジンが登場する<スサノオ>が斬竜刀ムラクモを肩に担いで前方の<ラクシャサ>にプレッシャーを与えている。
その気迫に押されてかマルティエルも無謀な突撃はしてこない。
『ハルト、あいつの相手は俺がやる。お前は敵の総大将ガブリエルを倒せ。あれと渡り合えるのはお前しかいない。それに――』
ジンが言葉に詰まる。その神妙な面持ちから考えている事が俺と同じだとすぐに分かった。
「<インドゥーラ>の能力『アムリタ』か。お前も鑑定スキルで見たんだな、あいつの能力を……」
『無論だ。敵のボスに関する情報は最優先事項だからな。奴が出現した直後に鑑定で調べた。だが、それで判明したのは信じがたい事実だ。アムリタ――『全ての攻撃を無効化する』等とチートにも程がある』
「本当にふざけた能力だよ。とにかくアムリタが本当に無敵を意味するのか確かめる必要がある。そして、それが事実だったのなら発動条件を探らないといけない。どんなに攻撃してもダメージが通らなかったら俺たちに勝ちはないからな」
『その通りだ。だが、発動条件を調べるにしてもガブリエルが大人しくしているハズがない。<インドゥーラ>の性能は圧倒的だ。それを相手しながらアムリタの検証を行う事ができるのはお前ぐらいだろう。俺の<スサノオ>は攻撃手段が斬竜刀のみで検証には不向きだからな』
斬竜刀は威力が凄いが攻撃パターンがぶった斬るという一種類しかない。アムリタの発動条件検証には様々な攻撃パターンを試す必要がある。
その中には連続してダメージを与え続けるという状況も必要とされるので、単発高火力の<スサノオ>では分が悪いだろう。
「……<ラクシャサ>の戦闘スタイルは<スサノオ>に近い。――ここは頼んだぞ、ジン」
『ああ、任された。<インドゥーラ>は強い……気をつけろよ、ハルト』
エールを送り合い、俺は<インドゥーラ>を目指して下降を開始した。すると俺の邪魔をしようと<ラクシャサ>が向かってくるのが見えた。
『ガブリエル様のもとへは行かせんぞ!!』
『お前の相手は俺だ!!』
ジンが間に入って大剣をぶつけ合う。その衝撃音がこっちの方にまで響き渡る。危険な相手だけど、ジンなら互角以上にやってくれる。
俺はあいつに託された役目を全うする事に意識を向けた。
「邪魔が入らない今なら! ドラゴニックエーテル永久機関出力、<サイフィードゼファー>と<カイザードラグーン>の同調率その他諸々オールグリーン! ――よっしゃああああああ!! 行くぞ、聖竜合体!!」
機体周囲にストレージ領域を広げて合体フィールドを形成すると<カイザードラグーン>の各パーツが分離し<サイフィードゼファー>を囲むように配置された。
まずは脚部パーツがドッキングし固定され、続いて肩部パーツ装着される。
腕部パーツが装着されると指先の鋭い手が形成されエーテルエネルギーが血液のように通い始める。
背部に<カイザードラグーン>のメインブロックが合体し二基のエーテルフェザー発生翼が展開、背部下方ではワイヤーブレード参式を素体としたブレードテイルが形成された。
同時に竜の頭部をモチーフとした<カイザードラグーン>の機首が胸部アーマーとして装着される。
そして頭部を覆う兜状のパーツが装着されると牙の意匠があるフェイスガードが下り、額のアークエナジスタルを核として左右と前方に伸びる三本のブレードアンテナが展開した。
「合体完了……聖竜機皇カイゼルサイフィードゼファーーーーーーー!!!」
合体シークエンスが完了すると<インドゥーラ>の前方へと降り立ち睨み合う。
こいつがクロスオーバーの指導者ガブリエル、そして熾天機兵<インドゥーラ>……こいつを倒せば戦いが終わる。
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