第284話 姦しさと逞しさと鋼のメンタルと②
『手応えあった。ここからたたみ掛ける!!』
パメラは起き上がろうとしている<パールバティ>目がけて巨大化<グランディーネ>を突っ込ませる。
雪原を滑走し積もった雪をまき散らしながらエーテルアイギスを構えて衝突、敵機に追撃を与えて吹き飛ばす。
『こいつ……ぶつかる瞬間に後ろに跳んで威力を殺した。見た目よりも動きが素早い!』
『
ニードルミサイルが一斉射され、その全てが<グランディーネ>に集中する。
強固な盾とエーテル障壁によって耐えるものの、終わりが見えないミサイルの群れによって四方八方から攻撃されその場から動けなくなる。
『くそ、このままじゃテュホンの維持限界が……。せめてどぎつい一発を入れないと気が収まらない』
『ならば僕に任せろ』
シオンは<シルフィード>を突っ込ませるとエーテルブリンガーで風の斬撃を発生させニードルミサイルを切り払っていく。
『ドラグーンモード! 一気に突破するぞ<シルフィード>!!』
増加装甲を纏った<シルフィード>は地面すれすれを飛行し<パールバティ>との間合いを詰めていく。
巻き上げられた大量の雪によってニードルミサイルの狙いがかき乱され、<シルフィード>とは関係のない所に次々と着弾していく。
その隙を突いてシオンは勝負を決めに行く。
『これで決める! アジ・ダハーカ!!』
<シルフィード>は暴風の如き風の障壁を展開し降りかかるニードルの雨を蹴散らすと<パールバティ>に体当たりを敢行した。
真正面からの突撃攻撃に吹き飛ばされるもエーテルハイロゥのアシスト機能によって<パールバティ>はすぐに体勢を立て直す。
『こんなぬるい攻撃でやられる訳がないだろ!』
『誰が一撃で終わらせると言った? ここからだっ!!』
アジ・ダハーカを維持しながら方向転換すると再び<シルフィード>は猛スピードで<パールバティ>に体当たりし、それを何度も繰り返す。
反撃にと射出したニードルはそのことごとくがへし折られ、風の暴力によって熾天機兵の強固な装甲はダメージが蓄積し亀裂が生じる。
『なっ!? アジ・ダハーカはこんなに連続して使えないハズ……』
『それはいつの<シルフィード>の話だ? これまでお前たちが観測してきた僕たちと今の僕たちとでは実力も想いも……全てが違う!! 甘く見るなぁぁぁぁぁぁぁ!!』
真正面から突撃しそのまま空高くまで<パールバティ>を押し上げ、その頭上に位置取ると<シルフィード>は纏っていた風の障壁をエーテルブリンガーに集中させた。
大気を刻む暴風の刃が形成され、真下にいる敵機に向かって高速降下する。
『
『この……! 調子に乗るなよ、新人類がぁぁぁぁぁぁぁ!!!』
怒り狂うサンダルフォンに呼応し<パールバティ>の前腕部が巨大なドリルに変形すると高速回転を開始、上空から迫ってくる<シルフィード>に向けて突き立てられる。
一方、<シルフィード>が繰り出すザッハークは暴風の螺旋を放ち二機は激突した。
暴風のドリルとセルスレイブのドリルがぶつかり合い、大気を揺るがす螺旋の衝撃波が広がっていった。
その余波で<シルフィード>と<パールバティ>は徐々にダメージを受け装甲が砕けていく。
『くっ! 持ってくれ<シルフィード>!!』
『あははははは!! 竜機兵如きが熾天機兵に敵うものかよ! パワーが段違いなんだよ。パワーがさぁぁぁぁぁ!! このままコックピットに大穴を開けてやる。死になっ!!』
暴風のドリルの勢いが衰え始め<シルフィード>が受けるダメージが大きくなっていく。その姿を見て勝利を確信したサンダルフォンは舌なめずりする。
『……戦いの最中に舌なめずりとは下品な奴だ』
『この絶対的ピンチの状態で随分余裕じゃないか。お前の仲間は援護にも来ない薄情者だし本当に哀れな奴。これまで辿ってきた
『絶望などするものか! あの二人は僕を信じて力を溜めている。だから僕は必ずお前を地上に叩き落とす!! 機体にパワー差があるのなら、その分は気合いと根性で補うだけだ!!』
『気合いと根性? この期に及んでそんな陳腐な精神論でどうにかなるとでも? 恐怖で頭がどうにかなったみたいだね。あははははははははははは!!』
嘲笑するサンダルフォンを前にしてシオンは静かだった。ただ、その目には光が灯り絶望など全く存在していない。
そんなシオンは淡々とサンダルフォンに語りかける。
『笑いたければ笑っていろ、サンダルフォン。お前が馬鹿にしている精神論を武器に
シオンの気迫が最高潮に達し暴風の螺旋は勢いを取り戻す。さらに威力が増し<パールバティ>のドリルを押し込んでいく。
『なっ……パワー負けしているだと!? まさか本当にそんな精神論で……いや、そんな事があってたまるか。クロスオーバーの叡智によって作り出された熾天機兵が、まだまだ猿な新人類如きが造った竜機兵に負ける訳がない!!』
焦り出すサンダルフォンを見てシオンは満足そうに口角を上げて笑みを浮かべる。
その挑発的な様子にサンダルフォンは怒りと恐怖がない交ぜになった形容しがたい感覚を覚えるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます