第230話 冥竜を圧倒する聖竜
◇
『ははははははははははは! たぎる……たぎるぞ、ハルトォォォォォォォォ!!』
<ベルゼルファーノクト>の頭上に浮いているエーテルハイロゥから高出力の熱線が発射され海面を薙ぎ払う。
その影響で巨大な水柱が発生し水のカーテンとなって俺の退路を塞いでしまう。
「やろうっ!」
こっちが動きを止めた一瞬の間にアインが間合いを詰めてきた。禍々しい大剣へと変化したエーテルアロンダイトで真っ二つしようと迫って来る。
<カイゼルサイフィードゼファー>の右腕に装備されたエーテルカリバーンで敵の斬撃を受け止め凌ぐ。
このような剣戟をさっきからずっとやっている。敵は高速飛行しながら遠距離攻撃と近距離攻撃を織り交ぜたヒット&アウェイの戦法で追い詰めて来る。
『どうした、さっきから防戦一方じゃないか。そのごつい機体はハリボテか?』
「そんなわけあるか。ここから俺と<サイフィード>の華麗な反撃があるんだよ。それを特等席から見せてやるっ!!」
敵の剣を切り払うと再びヤツは距離を取って高出力ドラゴンブレスの発射体勢に入る。
命中精度を上げるため離れすぎず近すぎずのポイントで止まり狙ってくる。俺はそこに急接近しつつ左腕にエーテルエネルギーを集中する。
「そんなワンパターンで俺を落とせると思うな! 術式解凍、バハムートォォォォォォ!!」
遠距離型バハムートの射程範囲に<ベルゼルファーノクト>を収めると左腕に集中させた高出力のエーテル光弾を発射する。
それとほぼ同時にアインもドラゴンブレスを発射し双方の術式兵装が空中で衝突する。
高出力のエーテルエネルギー同士のぶつかり合いを制したのはバハムートだった。
衝突直後から敵の熱線を食い破るように押し返し、そのまま黒い竜機兵へと向かっていく。
『この程度の攻撃で!!』
アインは左腕でバハムートを防御した。左腕の装甲が吹き飛んだが次の瞬間には再生を始めて、ものの数秒で完全に元通りになる。
その間、敵の動きが緩慢になっていたのを見逃さず一気に接近しエーテルカリバーンを敵頭部目がけて振り下ろす。
アインはそれをエーテルアロンダイトで防いだ。
『甘いぞ、ハルト! どうやらお前の華麗な反撃とやらはここで終わりのようだな!!』
「甘いのはお前の方だよ、アイン! 『テラガイア』を闘争の絶えない世界にしたいとか抜かした割には攻撃が単調すぎる。――これからお前に本当の攻撃ってやつを見せてやる!!」
アインに言い放つと同時に機体の左腕で敵の右腕を掴み、エーテルカリバーンを敵の左肩に突き刺し動きを封じた。
「術式解凍、バハムート! それとコールブランドのおまけつきだ!!」
<ベルゼルファーノクト>の動き止めていた左腕と剣から同時に術式兵装を放ち、敵の両腕を破壊する。
その時エーテルアロンダイトは真下に落ちていった。
『ぐあああああああああああっ!!』
こいつの再生能力は完全破壊された箇所すら修復してしまう異常さを持っているが、なまじそんな能力があることを後悔させてやる。
「どんなに再生しようがそんなの知った事か! 嫌というほどボコボコにしてやるよ。――これも持っていけ、エーテルパイルバスター!!」
敵が両腕を失って一時的に無防備になると左手で頭部を鷲掴みにして腹部に膝蹴りを入れる。
それと同時に膝部先端に展開した魔法陣からエーテル金属製の杭を連続で打ち込んだ。
「まだだっ! ありったけをぶち込んでやる!!」
『ぐっ……くそおおおおおお!!』
アインは機体の頭部を思い切り振って鷲掴みから脱出すると下方へ全速力で逃げて行く。その際破損した頭部の一部と右腕が再生していくのが見えた。
ヤツは地面に突き刺さっていたエーテルアロンダイトを回収すると剣と機体に黒いオーラを纏わせていく。
この現象はさっき見たばかりだ。ヨルムンガンドとかいう突撃攻撃が来る。それならば――!
「目には目を、突撃には突撃だ! まずはこれだ、術式解凍――スターダストスラッシャー!」
尻尾であるブレードテイルをパージしていくつにも分割した刃を機体周囲に配置する。
『こちらの再生を許したのが命取りだ。これでバラバラにしてやる――ヨルムンガンドォォォォォォォォォォ!!』
黒いエーテルのオーラを纏った<ベルゼルファーノクト>がこっちに向かって来る。俺は機体の出力を全開にして真っ正面から敵に突撃を開始した。
「エーテルフェザー最大パワー! 術式解凍――リンドブルムッッッ!!」
前方に突き出したエーテルカリバーンから発生した黄金のオーラが<カイゼルサイフィードゼファー>の全身を包み機体が黄金色へと変わる。
黄金の竜のオーラを纏った機体周辺には予め展開していたスターダストスラッシャーが飛んでおり、バリアの強度を向上させる役割をしている。
「これがリンドブルムの完成形だ! ――突っ込むぞ、<サイフィード>!!」
俺の呼びかけに応えるように機体の出力がさらに上昇していく。<カイゼルサイフィードゼファー>自身もこの戦いに闘志を燃やしているのが伝わって来る。
この戦いは俺とアインだけのものじゃない。竜機兵の先導者たる<サイフィード>と<ベルゼルファー>の戦いでもあるんだ。
「はああああああああああああああああああああああああ!!!」
『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!』
黄金の竜と漆黒の竜が激突し、それにより発生したエネルギーが周囲にあるものを吹き飛ばしていく。
最初は拮抗していた俺とヤツのエーテルエネルギーだったが次第にパワー差がハッキリと現れた。
<カイゼルサイフィードゼファー>を覆う黄金のオーラが<ベルゼルファーノクト>の漆黒のオーラを打ち払っていく。
アインはその状況を目の当たりにして動揺を隠せないようだった。
『な……なぜだ! なぜこうもパワー負けする。俺とヤツの何が違うと言うんだ!?』
「それが分からないからボコられるんだよ! 撃ち抜けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
漆黒の竜は黄金の竜の前に屈服し消滅した。
漆黒のオーラの中から姿を現した<ベルゼルファーノクト>は機体のあちこちを損傷させながら地面を勢いよく転がっていき巨大な岩に背中を打ちつけ止まった。
俺は機体の出力を通常レベルに戻し、機体が黄金から元の純白の装甲へと戻る。周囲に展開していた刃のセグメントを連結し元のブレードテイル形態にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます