第90話 インターミッション竜機兵全機集合編①
シオンとのやり取りが終わったと思っていたら、格納庫内がざわついているのに気が付いた。
何やら装機兵の整備員たちが何人も集まっているようだ。その先に何があるのかと思い近づいて見ると、俺がよく見知っている人物がいた。
まだ、頭に包帯を巻いていて痛々しい姿だが、その赤い瞳には生命力がみなぎっている。
「フレイ、必ず来てくれるって思ってたよ。でも退院するの早くない?」
「病室じゃ一日中横になっているだけだったからな。それならどこにいても同じだって事で退院させてもらった」
フレイが屈託のない笑い顔で答えてくれる。病室で竜機兵チームに来いと誘った時の反応は微妙だったので少し不安だったが、今の様子を見ると取り越し苦労だったみたいだ。
フレイが整備員の仲間たちと色々話をしている間、病院から付き添っていたフレイアが俺の所にやって来る。
「さっきは簡単に退院させてもらったように言っていたが、実際は医者に何度も頭を下げてやっと許可してもらったようなんだ。一日でも早く仲間と合流したいと言ってな」
「そうだったのか。あいつ――」
フレイが『聖竜部隊』参加をそこまで真剣に考えていてくれた事に嬉しくなる。それに、フレイが加わった事で『竜機兵チーム』がやっと全員揃った。
俺が感慨に耽っていると、フレイアが俺の耳元で囁いた。吐息が耳に当たって少しゾクゾクする。
「それと、私がお前と婚約した件を兄に話したぞ。後でその件について三人で話をしたいそうだ」
「なにっ!? もう話しちゃったの!?」
退院早々、フレイはびっくりしただろうな。まさか、戦い一筋だと思っていた妹がいきなり結婚する事になるとは。
もっとも、現状に一番驚いているのは当事者の俺であることに変わりはない。
「悪い、待たせたな」
整備員一同から解放されたフレイが俺たちの下へやってきた。そして、そのまま俺の肩に手を掛けてくるのだった。
「ところで、ハルトよ。妹から聞いたんだが、こいつと結婚するって……マジか? さらに言うと奥さん四人って話は本当なのか!?」
フレイは引き気味に俺に確認をしてきた。妻四人の素性を知っていればこういう反応をするのは当然だろう。
「はい――本当です」
「そうか。いや、何というか改めて思ったんだが、お前っていつもとんでもない事ばかりするな。普通こんな濃い面子ばかりを嫁にもらうかね?」
「――仰る通りだと思います。すごい人ばかりで恐縮です」
「ま、俺が一番何を言いたいかというとだな。――おめでとう。妹の事をよろしく頼むわ」
フレイは咳ばらいをした後、恥ずかしそうに言う。兄からの祝福を聞いてフレイアも嬉しそうに目に涙を浮かべていた。
「兄さん、ありがとう」
「ありがとう、フレイ」
この二人の兄妹仲も良くなったし、俺も嬉しくなる。ゲームではどのルートでも二人が兄妹仲良くする展開なんて無かったからなぁ。
だが、俺たちの会話が微笑ましい状態で終わる訳はなく、ここでフレイが現実を知らせてくるのであった。
「そういや、お前がフレイアの夫になるってことは俺の義弟になるってことだよな。そこも含めてよろしく頼むぜ」
「――――へ? ああっ!!」
そうだった。フレイは俺の義理の兄になるんだった。さっきはシオンが息子になる話をしたばかりだし、こうして自分の状況を見回してみるととんでもないことに気が付く。
『聖竜部隊』内に親族が増えすぎているのだ。『竜機兵チーム』にしてもパメラ以外全員親族になるじゃないか。
俺はいったい何処に向かっているのだろうか? 『聖竜部隊』におけるゴッ〇ファーザーでも目指しているのだろうか?
――さて、しばらく俺の近況報告が続いていたが、大事なことを忘れていた。この度めでたく竜機兵全機が揃い、機体強化にも進展があったのである。
今回の『リーン』での戦いと『第一ドグマ』の攻防戦においてかなりの収入があり、潤沢な資金で色々とやらせていただきました。
その前に今回はとても嬉しい誤算があった。それは竜機兵<ヴァンフレア>の件だ。
新規加入したこの機体だが、フレイアが搭乗していた<ウインディア>を取り込んだ事でその強化段階を継承していたのだ。
元々<ウインディア>は強化段階がかなり進んでいて、フル強化の一歩手前の状態でしばらく放置していた。
だが、ここで試したい事があったので、今回<ヴァンフレア>をフル強化してみたのである。
その試したい事とは、フル強化ボーナスの件だ。
<サイフィード>の時はフル強化した際にボーナス付加によって、機体性能が一気に跳ね上がった。
それと同じ事が他の竜機兵にも適用されるのか試してみたのだ。その結果は――当たりだった。
<ヴァンフレア>は、フル強化後にフル強化ボーナスが施され、さらに性能が向上したのである。
【ヴァンフレア】
HP7000 EP550 火力6000 装甲3500 運動性能275
属性:炎
アビリティ:HP回復小、EP回復大
武装:エーテルソード(二刀流)、エーテルランス、ニースラッシュ、エーテルカンショウ・エーテルバクヤ
術式兵装:エレメンタルキャノン(炎)、エクスプロードスマッシュ、フレイムクロス、ケツァルコアトル
攻撃力特化の機体だけあって、<サイフィード>よりも火力がかなり高い。
フル強化ボーナスによってEP回復大が追加された事で、エネルギー切れを起こしやすいという欠点が克服された。
さらに竜機兵専用武器であるエーテルカンショウとエーテルバクヤが追加された事で火力がマシマシになったのである。
これで『竜機兵チーム』の攻撃面が一気に強化されたのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます