第39話 トリプルアタック

「こっちの被害はなし、か。『絶対防御』を使ったのは初めてだったけど、ちゃんと機能したみたいで良かった。クリスティーナさん、パメラ、こっちはダメージなし、戦闘継続に問題はありません」


 <サイフィード>に問題が無いことを報告すると二人ともホッとしていた。同時に、卑怯な手段を使った<エイブラム>の操者に対して怒りがわいてくる。


「あの操者は『第二ドグマ』を直接狙えば、俺たちが庇うだろうと考えてさっきの攻撃をした。理に適ってはいるけど、実に卑怯な手口だ。これ以上時間はかけない! 一気に叩き潰す!」


『それなら、僕も接近して術式兵装で攻撃する。それなら短時間でダメージを稼げるはずだ』


 その時、俺はモニターの頭上に映る機影を見て笑みがこみ上げてくるのを抑えられなかった。


「いや、シオン大丈夫だ。作戦はさっきのままで行く。ようやく全員集合だ」


 俺の言葉を聞いてシオンも気が付いたらしい。あのクールな少年から少し笑い声が聞こえた。

 

『二人とも、あのデカブツまたさっきの術式兵装を使うつもりよ!』


 パメラの慌てる声を聞いて敵を見ると再び両手をこっちに向けて掌にエーテルを集中し始めていた。

 完全に<エイブラム>の操者の意識はこっちに向いているようで、自分の頭上にまでは気が回らないらしい。

 

「パメラ、大丈夫だ。二発目はない。その前にあいつは破壊する」


 俺は<サイフィード>を<エイブラム>に向けて走らせる。俺の後ろには<シルフィード>が付き、最後の攻撃に向けて移動しながら術式兵装の準備をしていた。

 敵は後ずさりして俺たちと距離を取り時間稼ぎをしようとしているが、その努力は実を結ばなかった。

 空から舞い下りた一機の装機兵による攻撃が<エイブラム>の首筋に突き刺さる。

 

『どうやら間に合ったようだな』


「最高のタイミングだ、フレイア」


 装機兵<ウインディア>のエーテルランスは敵の重装甲を貫通し大打撃を与えた。

 奇襲を受けた敵は頭上にいる装機兵を引き剥がそうと手を伸ばし、エレメンタルバスターの発射は中断された。


『そんなノロマな動きで私を掴まえられるものか!』


 <ウインディア>は敵から離れつつ持っていたエーテルランスを投げつけ<エイブラム>の左肩に刺さった。

 

「いいぞ、フレイア! このまま一気に決める!」


『任せろ!』


 <ウインディア>はエーテルブレードを装備し、<サイフィード>の横に並んで<エイブラム>に向かって行く。


「! ヤツはさっきの攻撃で左腕が動かないみたいだ。フレイアは<エイブラム>の左側から攻めてくれ。俺は右側から攻撃する。シオン、援護頼む!」


『了解した! 僕が牽制をするから、その間に敵に取りつけ!』


 シオンは<シルフィード>のエレメンタルキャノンを連発し、ダメージを与えながら動きを鈍らせる。

 その隙に俺とフレイアは<エイブラム>の左右に取りついて、それぞれのエーテルブレードで斬りつける。

 三機からの同時攻撃を受けて、<エイブラム>は膝を折りバランスを崩した。

 そのまま倒れるかと思いきや、右手に持ったエーテルハルバードの柄を杖のようにして身体を支え転倒を防ぐ。


『しぶとい奴だ。ハルト、私が先に術式兵装でヤツをパワーダウンさせる。その後ダメ押しを叩き込め!』


「待て、フレイア! 迂闊に近づくな!」


 体勢を立て直しながら、<エイブラム>はエーテルハルバードを<ウインディア>目がけて勢いよく振り下ろす。


「こいつ、まだこんなに動けるのかよ!」


 俺はワイヤーブレードも装備し、二本の剣をクロスさせて敵の得物を受け止めた。  

 ダメージが蓄積しているものの、それでも<エイブラム>のパワーはものすごく、攻撃を受け止めた<サイフィード>の各関節が軋む。


「耐えろ、<サイフィード>! フレイア、今の内だ! ありったけの一撃を叩き込め!」


『分かっている! もう少し辛抱しろ! 刀身へのエーテル伝達完了、術式兵装リアクターブレード!!』


 <ウインディア>の刀身に高密度のエーテルが集中し、鋭く重い斬撃が<エイブラム>の左腕を破壊し、胴体にもダメージを与えた。

 その影響で、<エイブラム>はバランスを崩し<サイフィード>を襲っていた攻撃の手も緩む。

 

「今だ! 術式解凍!」


 ワイヤーブレードをストレージに戻すと同時に<サイフィード>左腕の一部装甲が開放、アークエナジスタルが露出し作動開始する。


「これでどうだ! バハムート!!」


 左手に超高密度のエーテルが集中し、そのまま<エイブラム>の胸部に叩き付けた。

 術式兵装バハムートが直撃した部分は装甲が破壊されていき、HPも一気に低下し二万をきる。

 こいつを倒すにはもう一度強力な攻撃が必要だ。


「フレイア、シオン! 十秒間こいつを抑えておいてくれ!」


『分かった!』


『了解した!』


 二人が<エイブラム>をその場に留めている間に、俺は<サイフィード>を飛竜形態にして距離を取った。

 止めの攻撃に必要とする十分な距離を取ったところで旋回し、前方で仁王立ちする敵に向かって加速する。

 俺はバトルスキル『抹殺』と『大富豪』を発動し、次の攻撃を二倍にするのと敵撃墜時の入手金額三倍の効果を持たせた。

 <エイブラム>は撃破時の入手資金が大変おいしいので、撃破時の『富豪』または『大富豪』は必須だ。


「二人とも退避してくれ! 術式解凍! リンドブルム!!」


 <サイフィード>は強力なエーテルのバリアを纏って巨大な敵目がけて飛翔する。翼はエーテル光の輝きを放ち、通常時とは段違いの加速を生み出していた。

 エーテル光の翼が作り出した猛スピードで<サイフィード>は<エイブラム>の胸部に突撃した。


「さっきのバハムートで胸部装甲がボロボロなのは分かっている! そこから一気に食い破ってやる! 貫けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」


 <エイブラム>の破損していた胸部装甲を貫通し、<サイフィード>は敵機の上半身を粉々に破壊した。

 こうして『第二ドグマ』と竜機兵二機を脅かした重装甲の巨人は撃破され、ここに四機の竜機兵が揃ったのであった。

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