第218話 グランディーネVSカドモス①

 シオンとツヴァイが熾烈な空中戦を繰り広げている頃。地上のポイントAアルファでは四ヵ所で竜機兵チームとドラゴンキラー部隊の戦いが行われていた。

 そのうちの一つ、竜機兵<グランディーネ>と滅竜機兵<カドモス>の戦場では大地を揺るがす程の振動が続いていた。

 

「こいつ……何てパワー。<エイブラム>以上だわ!」


「中々に読みが鋭いな。この<カドモス>は<エイブラム>をベースに改造が施された機体だ。当然ベース機より全ての性能が向上している!」


 <カドモス>がエーテルハルバードを真横に薙ぎ払うと<グランディーネ>がエーテルシールドで受け止める。

 全高が十五メートル級と二十五メートル級という圧倒的な体格差がありつつも、大地の竜機兵は自慢のパワーで互角に渡り合う。

 パメラは盾の表面で巨大な矛の斬撃を逸らすとエーテルスラスターを全開にして一気に間合いを詰め巨人の懐に入った。


「どんなにでかくたって腹に重いのが入れば同じよ。――インパクトナックル!」


 <カドモス>の腹に<グランディーネ>のパンチが入りそこから衝撃波が放たれる。巨体が震え動きが止まった。


「やった……うわぁっ!!」


 有効打が入ったと思った瞬間コックピットに衝撃が走り、<グランディーネ>は岩場に激突した。

 視界がチカチカしながら敵を見やると<カドモス>は悠然とした動きでパメラの方を見ている。

 左腕を<グランディーネ>へ向けて移動を開始していた。


「くそっ、あの腕に吹き飛ばされたわけか。やっぱり身体が大きい分パワーが尋常じゃないね。さーて、ここからどうすっかな」


 パメラは顔を左右に振って視界を正常に戻すと機体を立たせてファイティングポーズをとる。

 それを見た<カドモス>の操者ドライは、パメラの戦いぶりに感心していた。


「さすがは竜機兵の操者。この程度では戦意は削がれないと見える。――では、これならどうかな?」


 <カドモス>の前腕部に装備されたエナジスタルが輝くと掌に魔法陣が展開され、その中から巨大な岩塊が幾つも出現した。


「装機兵に搭載されている術式兵装は様々な種類がある。美しさと威力を併せ持った芸術品のようなものもあるな。そのような中でこの術式兵装は非常にシンプルな部類に入る。――ただ巨大な岩を相手に向けて撃ち出すだけだ。しかし、シンプルなものほど制御しやすい。そして御しやすいとなれば連続使用も可能というわけだ」


 <カドモス>の頭上で浮いていた岩塊の群れが一斉に射出され<グランディーネ>に直撃していく。

 次々と岩が砕け、それにより巻き起こった砂煙で<グランディーネ>の姿が見えなくなってしまった。

 敵が視認できなくなったためドライは出現させた岩塊を頭上で待機させて攻撃をいったん中止する。

 

「私としたことがつい熱くなりすぎてしまったな。もっと冷静に努めなければ……む?」


 ドライが自問自答していると砂煙が爆発したように拡散し、その中から姿を見せた山吹色の機体が白金の盾を装備して突っ込んで来た。

 再び岩塊を連続発射して近づいてくる<グランディーネ>を沈黙させようとするが、今度はその足を止めることはできず一気に眼前まで接近される。


「これはいったいどういう事だ! 先程と耐久力が段違いだと!?」


 右腕で攻撃をするべくエーテルアイギスから半身を覗かせる<グランディーネ>は増加装甲を身に纏っていた。

 ドラゴニックウェポンとドラグーンモードの併用で戦闘力がアップした<グランディーネ>の前では、岩塊の群れは簡単に弾かれ意味を成さなくなっていた。


「今度はこっちの番だよ、ドライ。メガインパクトナックル!!」


 <グランディーネ>の拳は<カドモス>の腹に打ち込まれ、そこから連続で衝撃波が送り込まれる。

 パワーアップした上に連続で攻撃を受けたため、二十五メートル級の巨体が地面から浮き上がり一瞬無防備になる。

 その隙を突いて跳び上がった<グランディーネ>は、上空からエーテルスラスターを噴射しながらシールドを構えて体当たりをぶちかました。

 

「な、何だこのパワーは……これが竜機兵の力だというのか!? 想定を大きく上回っているだと」


「竜機兵は私たち操者と一緒に成長をしてるんだよ! あんた等の機体は竜機兵を倒すために造られたみたいだけど、相手が悪かったね!!」


 ドライは予想以上の力を発揮する<グランディーネ>に驚きながら地面に叩き付けられた。

 エーテルスラスターの連続使用限界に達したため、パメラは一旦敵から離れて様子を見る。

 地面に倒れた<カドモス>の半身は地面に埋まり沈黙している。コックピットにも相当の衝撃が伝わり操者も無事では済まない。

 そのように考えたパメラは勝負がついたと思っていた。

 そう思った矢先、敵は何事も無かったかのように立ち上がる。おまけに破損していた箇所が凄まじいスピードで修復されていくのが見える。


「そうか、その機体にはセルスレイブが使われてるんだっけね。装甲が厚い上に再生するとかとんでもないじゃん」


「高い耐久性と再生能力を持つ<カドモス>を破壊することは事実上不可能だ。如何に竜機兵の性能が高かろうが倒せない相手に攻撃を続けてもジリ貧になるだけ。――投降をお勧めする」


 勝利宣言をするドライに対してパメラは少し考えると、ある質問を投げかけた。

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