第217話 シルフィードVSゲオルギス
ドラグーンモードにより強化された<シルフィード>の姿を見るとツヴァイの口元に笑みがこぼれる。
「ようやくドラグーンモードを発動したか。それこそ竜機兵の本領発揮の形態。その状態の竜機兵を破壊しなければ本当の意味で勝利したとは言えない。お前を倒しその翼を戦利品として戴こうか」
「そうやって他者から全てを奪い、私腹を肥やしていくのがお前たち帝国のやり方だ。その精神は国民にまで浸透しているらしいようだな」
「言ってくれる!!」
再び互いの武器をぶつけ合う<シルフィード>と<ゲオルギス>。
最初は互角に斬り結ぶ二機であったが、ドラグーンモードになったことで性能が上がった<シルフィード>が徐々に優勢になっていく。
エーテルブリンガーの風の斬撃が<ゲオルギス>の身体に刻まれていき、自己修復が追いつかない。
「くっ、やるな! だがっ!!」
ツヴァイは距離を取りながらエレメンタルキャノンを連射してシオンを遠ざける。風の斬撃から解放されたことで、<ゲオルギス>の傷が再び癒えていく。
しかし、シオンはこれを好機と捉えていた。
「<ゲオルギス>の修復速度が落ちている。……そうか、自己修復には機体内を循環するエーテルを使用している。操者のマナ供給が減少すればエーテルの流れも悪くなるということか。――いけるっ!」
シオンはエーテルブーメランを
その一瞬の隙を突いて間合いを詰めると嵐の斬撃を放った。
「この距離ならばっ! ディバイディングストーム!!」
「なんのっ! こらえて見せろ<ゲオルギス>!!」
エーテルブリンガーから放たれた嵐の斬撃は<ゲオルギス>に直撃したが、同じ風属性の障壁がその威力を半減させ致命傷には至らない。
ツヴァイはこの戦闘結果から<シルフィード>の弱点を指摘する。
「やはりな。<シルフィード>は機動性が高く遠近攻撃に対応できるオールラウンダーな性能を持っているが攻撃力が低い。術式兵装に関しても広範囲の敵を攻撃するものばかりで局所的に威力を発揮する強力なものがない。その程度の攻撃力では多少のダメージを与えることは出来ても致命傷を与えることは不可能!」
ツヴァイはエーテルアスカロンに風を集中させ<シルフィード>に叩きつける。
シオンは剣で防御したにも関わらずそのパワーによって海に吹き飛ばされ、海面すれすれで体勢を立て直し高度を上げた。
二機の風の加護を持つ装機兵は空中で高速戦闘を継続し、その結果<シルフィード>は機体各所にダメージが蓄積し自己修復が追いついていない状況だ。
一方の<ゲオルギス>はその圧倒的な自己修復機能によって一見無傷のように見える。
但し操者であるツヴァイはマナを大量に消耗しており、これ以上戦闘を長引かせることは出来ないギリギリの状況に追い込まれていた。
それ故に二人が導き出した答えは同じものだった。
――余力を全てつぎ込んだ最大の一撃で勝負をつける。
<シルフィード>と<ゲオルギス>は互いの最大の術式兵装を使用する為に距離を取り、エーテルエネルギーを集中させる。
奇しくも二機が繰り出そうとしている技は機体に風の障壁を纏い突撃するという内容が酷似したものだった。
異なるのは<ゲオルギス>の風の障壁は前面が十字の刃の形状をしたものだった。
風のエーテルエネルギーを十字の刃状に集中することで殺傷力を高めた突撃。
一方の<シルフィード>は機体の代名詞とも言えるアジ・ダハーカだ。風の障壁を纏い猛スピードで接近してくる風の竜機兵を見てツヴァイは自らの勝利を確信していた。
「やはりアジ・ダハーカか。そのようなぬるい風でこのグランドクロスを破れるものか! 十字に裂けろ、<シルフィード>!!」
風の障壁を展開した二機が正面からぶつかろうと加速を開始した時、<シルフィード>は手にしていたエーテルブリンガーを突き出す。
同時に広範囲に放たれていた風の障壁の範囲が狭まっていき、機体を覆う程度の範囲に凝縮される。
更にエーテルブリンガーの切っ先から高速回転を伴った風が発生し、それが<シルフィード>の全身を包む。
風のドリルを展開しながら、シオンは前方から向かってくる<ゲオルギス>に突っ込んだ。
「くっ、互角だと!? バカなっ!!」
「ツヴァイ……僕は言ったはずだぞ。僕と<シルフィード>を甘く見るなと。この機体の弱点が火力不足だというのはずっと前から分かっていたことだ。――そんな欠点をいつまでも放っておくとでも思ったのか? それを補うためのドラゴニックウェポン、その力を最大限活かすためのドラグーンモードだ。その身でしっかり味わえ、これが<シルフィード>最大の術式兵装ザッハークだ!!」
「がはあああああああああっ!!」
<シルフィード>の高速回転する風の障壁は、<ゲオルギス>の風の十字刃を粉砕すると敵本体を抉り弾き飛ばした。
機体の左半身を破壊された<ゲオルギス>は海面に激突しながら吹き飛んでいき、ポイント
完全に破壊された左腕、左脚、左翼はもとより、先程までは瞬く間に修復されていたダメージですら現在治る様子は見られない。
敵が完全に沈黙したのを確認してシオンは自身の勝利を確信したのであった。
「はぁ……はぁ……ふぅ……何とか勝てたか。滅竜機兵……竜機兵を倒すために造られただけあって手強かったな。他の皆は……む?」
仲間の安否を気にしていると帝国の飛空艇編隊が集中している場所で異変が起きた事に気がつく。
海上からいくつもの水柱が発生し帝国の飛空艇数隻を貫通大破させたのである。
「あれは……どうやら作戦は成功のようだな。ならば――!」
シオンは<シルフィード>の羽を大きく羽ばたかせると混乱に陥っている帝国の飛空艇編隊に向けて飛んでいった。
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