第241話 転生者たちの協奏曲

「うちのリーダーは相変わらず派手ねぇ。――さてと、それじゃこっちも温まって来たところだし仕掛けるとしましょうか」


「そうですね。<量産型ナーガ>の攻撃パターンも大体分かりましたし、ここからは私たちのターンですね」


 ノイシュとロキはそれぞれの搭乗機である<ドゥルガー>と<フェンリル>を自在に操り<量産型ナーガ>と互角に渡り合っていた。

 <フェンリル>は爪状の武器である左腕で敵機の槍を受けきって右手に携えたエーテルグングニルで刺突攻撃を連続で行う。

 

「同じ槍系統の武器でもこちらの方が性能は上の様ですね。……あら?」


 エーテルグングニルで与えたダメージが見る見る修復されていくのを見てロキは溜息をもらす。


「やはり一撃で破壊できないと自己修復機能が働いて厄介ですね。ノイシュ、そちらの準備は出来ていますか?」


「勿論よ。――行くわよ、<ドゥルガー>。カーリーモード起動、サブアーム展開、ブラッディソード、アブソーブソード、エーテルトリシューラ装備完了!」


 強化形態であるカーリーモードが発動した事により、<ドゥルガー>の黄色を基調とした装甲が黒く染まっていく。

 同時に背部に四基設置されているサブアームが展開され、それぞれがストレージから武器を取り出し装備した。

 これにより<ドゥルガー>は両腕にエーテルカタール、サブアームには四つの武器という計六つの武装を構えるのであった。


「フレイアに負けてから特訓に特訓を重ねてようやくカーリーモードを任意に扱えるようになった。今の私と<ドゥルガー>を相手にして簡単に勝てるとは思わない事ね!」


 戦闘態勢を整え<ドゥルガー>は<フェンリル>と交戦中の敵機に向かって行く。

 ロキはタイミングを見計らって<フェンリル>を離脱させると、入れ替わるようにして<ドゥルガー>が間合いに入った。


「ブラッディソードの攻撃力ならっ!!」


 ブラッディソードから繰り出される血の様に赤い斬撃波が<量産型ナーガ>に直撃すると、エーテル障壁を貫通し装甲をズタズタに斬り裂いていく。


「――! まだ浅い、それなら全部くれてやるわよ!!」


 <量産型ナーガ>による槍攻撃をアブソーブソードで斬り払うと、接触時に敵機からエネルギーを奪い吸収する。

 そのままノイシュは装備している全ての武器を連続で敵機に繰り出し装甲と内部フレームを破壊していった。


「アブソーブソードによるエネルギー吸収を起点とした連続攻撃――これが<ドゥルガー>必殺のフルウェポンインフィニティコンボよっ!!」


 六つの武器で<量産型ナーガ>のコックピットブロックを破壊すると、頭上のエーテルハイロゥは消失しデュアルアイの光も消える。

 ノイシュが<ドゥルガー>を後退させた直後、稼働停止した<量産型ナーガ>は爆発四散した。


「まずは一機撃破……どう、ロキ。今の私ならあんたにも――」


「私に……何ですか?」


 ノイシュの目に映ったのは他の<量産型ナーガ>のコックピットブロックを一突きにして撃破している<フェンリル>の姿だった。

 ノイシュが無表情で自分を見つめている事に気が付いたロキは、至極当然と言った感じで状況を説明する。


「ああ、これですか。どんなに自己修復が優秀でもマナの供給を断ってしまえばいいのではと思いまして。それで試してみたら上手くいきました」


 最後に「うふふ」と言いながらにっこり笑うロキを見てノイシュは先を越された感が拭えず苛ついていた。


「くっ……あんたはそうやっていつも私の一歩先を行くのよね。あー、むかつくー、ネカマのクセにぃぃぃぃ!」


「あら、それは違いますよ。転生した今では身も心も乙女です。何なら身体を隅から隅まで確認してみますか?」


「それは断る! 元々女の私よりナイスバディの元男とか自信喪失するわ」


 二人がだべっているとコックピットに敵の接近警報が鳴り響く。モニターには近づいてくる<量産型ナーガ>が映っていた。

 

「新手が来ましたね。それでは参りましょうか」


「分かってる――行くわよ!!」


 思考を戦闘モードに切り替え、ノイシュとロキは次の獲物へと向かって行った。




 一方、見事なコンビネーションを見せる<ハヌマーン>ヤマダ機とヒシマ機はメイン武器である伸縮自在の棒――フリーダムロッドを伸ばして中距離から一方的に<量産型ナーガ>を叩きのめしていた。

 しかし、相手の自己修復機能は高く致命傷には至らない。


「やっぱり回復しちまうかー。火力が高くない<ハヌマーン>じゃ分が悪いかなぁ。ヒシマ、あいつを一気に倒す名案はないか?」


「勇者は……負けない!」


「……お前に訊いた俺が馬鹿だったよ。――ここは大人しくノイシュやロキと合流しよう。<ドゥルガー>と<フェンリル>の高火力ならヤツを倒し切れるはずだからな。俺たちはサポートに回る。それでいいか、ヒシマ」


「分かった。確かに<ハヌマーン>は支援向きの機体だから、その方が上手く立ち回れそうだな」


「……そういう建設的な意見は最初に言ってくれる?」


 群がる<量産型ナーガ>を迎撃しつつ味方と合流する為、ベテラン戦士の二人は氷原を全速力で駆けるのであった。


 ――そして、長く続いた氷原での決戦は終局を迎えようとしていた。

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