竜機兵物語～難易度ベリーハードのシミュレーションＲＰＧの世界に転生しましたが、鍛え上げたアバターと専用機で無双します～

第74話 炎と大地の竜の協奏曲

　＜ヴァンフレア＞は二刀流を携え、舞うように帝国の装機兵＜シュラ＞を斬り刻んでいく。

　しかし、耐久値が高い帝国の高性能型装機兵は一撃や二撃では破壊されず中々にしぶとい。

　おまけにＨＰが低くなると最後には動きを止めようと掴みかかってくる始末だ。

「まるで特攻だな。動きを止められれば他の機体が攻撃を加えてくるという戦法か。――いや、このような味方の犠牲の上に成り立つ戦い方は作戦とは呼ぶに値しない！」

　＜ヴァンフレア＞に左腕を破壊された＜シュラ＞がエーテルファルシオンを構えて踏み込んで来る。

　フレイアは斬撃に対して二刀流を交差させて受け止めるが、敵はそのまま体当たりを敢行した。

　コックピットに体当たりの衝撃が伝わる中、フレイアは舌打ちをしながら＜ヴァンフレア＞の膝のブレードにエーテルを集中させる。

　ブレードは赤熱化し表面に炎を纏う。

　フレイアは＜ヴァンフレア＞から離れようとしない敵の胴体に高温のブレードによる膝蹴りをお見舞いし、それは深々と刺さった。

「この機体は全身が武器のようなものだ。不用意に近づけば火傷では済まないぞ！」

　膝蹴りを受けた機体はコックピット部分に直撃を受け、力なく地面に倒れて動かなくなった。

　それを目の当たりにした敵部隊は、今度は二機同時に並び攻撃の意思を見せる。

『フレイア！　片方の敵は私がやるわ。もう一機をよろしく！』

　パメラがそう言いながら＜ヴァンフレア＞の隣に＜グランディーネ＞を移動させた。

　炎と大地の竜機兵が並び立ち、互いに出力を上げていく。

「了解した。そっちは任せるぞ、パメラ！」

　フレイアは攻撃態勢を取る敵に対して自機の両刀にエーテルを集中させた。二本のエーテルソードの刀身が炎を纏う。

「先手を取らせてもらう！　必殺！　フレイムクロス！！」

　＜ヴァンフレア＞の炎の十文字斬りが＜シュラ＞の身体を溶断し、機体は爆発した。

　その一部始終を見ていたパメラが気合いを入れる。

「さすがベルジュ家の騎士ね。――さあ、＜グランディーネ＞！　私らも負けていられないよ！　あれを使う！！」

　パメラの気合いに呼応し、＜グランディーネ＞が拳と拳を打ちつけるとエーテルシールドの一部がスライドし内部のエナジスタルが露出する。

「＜グランディーネ＞、アクション！　ファフニール発動！！」

　エーテルシールドの中央に位置するエナジスタルが激しく輝き、シールド表面に琥珀色の絶対防御の障壁が展開される。

　これこそが大地の竜機兵＜グランディーネ＞の竜の名を冠する術式兵装ファフニールである。

「さあて、この攻撃を止められるもんなら止めてみろ！　突貫！！」

　パメラは＜グランディーネ＞の背部にある全エーテルスラスターを全開にして、ファフニールを展開したまま突撃を敢行した。

　猛スピードと絶対防御による圧倒的なパワーで前方にいた＜シュラ＞を弾き飛ばした。

　弾き飛ばされた敵機は空中でバラバラになり、地面に勢いよく叩き付けられ爆発した。

「最強の盾による高速の突進攻撃は、最強の矛にもなり得るのよ。理解した？」

　パメラは炎上する敵機を一瞥すると再び＜ヴァンフレア＞のサポートに回るのであった。

　一方、＜ヴァンフレア＞はさらに奥の敵に本機最大の術式兵装を叩き込もうとしていた。

　再び二本のエーテルソードの刀身が燃え上がるが、その炎の勢いは先程の術式兵装のそれを大きく上回っている。

　二つの炎の剣を交差させると巨大な火柱のような炎の大剣が生まれた。

「これで決める！　奥義！　ケツァルコアトル！！」

　巨大な炎の斬撃が前方にいた＜シュラ＞数機を、斬り裂くと同時に激しく燃やしていく。

　炎の竜機兵＜ヴァンフレア＞の竜の名を冠する術式兵装ケツァルコアトルの威力の前に、帝国の誇る装機兵も今や鉄くずへと成り果てるのであった。

　竜機兵チームの怒涛の進撃によってスルード隊の陣形は瓦解した。

　Ｖ字陣形の左翼はフレイアとパメラによって崩壊し、右翼もハルトが駆る＜サイフィード＞の活躍でぽっきり折られた。

　二本の翼が破壊される間、陣形の中央にいたアグニ機は＜アクアヴェイル＞によるエーテルアローの連射によって動きを封じられ自由に動くことが出来なかった。

　竜機兵によって破壊され燃え盛る部下たちの残骸を目の当たりにして、アグニは顔にいくつもの青筋を立てていた。

「よくもやってくれたね。ここまでコケにされたのは初めてだ。――絶対に殺してやる！！」

　怒り狂うアグニ専用＜シュラ＞が向かった先には、白い竜機兵が黄金の剣をその手に携え待ち構えていた。