第108話 竜機兵チーム出撃
「敵飛空艇編隊が後退を始めましたわ。それと同時に格納庫隔壁の開放確認、装機兵の出撃準備に入っていると思われます」
炎上しながらサウザーン大陸側に下がっていく<イカロス>三隻は、この状況においてもまだ戦うつもりでいる。
ステラの報告を聴いてシェリンドンは進撃の命令を出す。
「<ニーズヘッグ>はこのまま敵飛空艇を追撃します。アメリ、竜機兵チームに地上戦に移る旨を報告して」
「はい」
カタパルトデッキで待機していた竜機兵チームにブリッジから通信が入り、トップバッターとして山吹色のマッシブな機体<グランディーネ>が出撃準備に入る。
空中戦を行っていた飛空艇四隻はサウザーン大陸上空に入り、各<イカロス>から『シャムシール王国』の量産型装機兵<アヌビス>が降下を開始した。
黒い犬を模した頭部を持つ機体が何体も飛空艇から飛び出し、砂漠の大地に下り立った。
敵が装機兵戦を行う意図を見せたことでシェリンドンは竜機兵チームへ出撃命令を出す。
<グランディーネ>がエーテルに包まれて浮遊し発進の準備が整った。
「そんじゃ私から行くからね。パメラ・ミューズ、<グランディーネ>――行くよ」
その言葉を合図に<グランディーネ>はカタパルトデッキから勢いよく射出され、砂漠地帯目指して飛んでいく。
続いて深紅の機体の発進準備が整う。機体各部にブレード状のパーツが備えられ、機体の攻撃性を象徴している。
「敵は正面か。フレイア・ベルジュ、<ヴァンフレア>――出る」
<ヴァンフレア>が深紅の装甲を輝かせながら黄土色の地に放たれる。
その次は女性を思わせるフォルムに青い装甲を併せ持つ<アクアヴェイル>がカタパルトに立った。
「最近これにやっと慣れてきましたわ。クリスティーナ・エイル・アルヴィス、<アクアヴェイル>――参ります」
先の深紅の機体とは対照的な色の<アクアヴェイル>は、発進後空の色に溶け込むようにしながら地上を目指していった。
キャタピラの走行音を響かせながらカタパルトデッキに入って来たのは先日完成し、今回が初陣となる<ドラタンク>だった。
操者のフレイがコックピット内に表示される自機の情報をチェックし、全て異常なしと告げている。
専用機での初戦闘を前にしてフレイは緊張していた。そこに発進を控えるハルトとシオンが早く出るようにせかすのであった。
『機体の調子はいいみたいだな。そんじゃ、フレイ。気合いを入れて発進シーケンス行ってみよう』
『気合いを入れるのは良いが、何処かの誰かみたいに空回りして舌を噛むなよ』
『……シオン、それは忘れてくれないかな』
「お前等やかましいんだよ、人の集中を乱すな。ふぅー……よし! フレイ・ベルジュ、<ドラタンク>――出るぞ」
機体重量が重い<ドラタンク>であったが、エーテルの浮遊効果は問題なく機能しカタパルトから勢いよく外へ射出された。
その姿を見ていたシオンは、すぐさま<シルフィード>をカタパルトに移動させる。ライトグリーンの機体の背には既に白い翼が展開されていた。
「発進後は空中から攻撃を仕掛ける。シオン・エメラルド、<シルフィード>――発進する」
<シルフィード>は船の外へ出ると背部の翼を羽ばたかせながら飛行速度を上げて味方機の後を追って行った。
最後にカタパルトに現れたのは隊長機である純白の機体<サイフィード>である。コックピットではハルトが指をならしながら気合いを入れている。
「砂漠戦は初めてだな。それに転生者も出て来る可能性がある。気合いを入れていくぞ相棒。ハルト・シュガーバイン、<サイフィード>――行きます」
エーテルの浮遊効果で勢いよく発進した<サイフィード>は外に出ると即座に飛竜形態に変形し、急加速しながら地上を目指す。
搭載していた装機兵の全機出撃を見届けたブリッジクルーたちは、これから始まる地上での戦いを見守っていた。
「ハルト、皆、無事に帰って来て」
ティリアリアは両手を組んで、仲間たちが無事に戻ることを祈るのであった。
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