第2話 式子さんの最初の怖い話~前編~

「ん?そんなところで突っ立てないで入ってきたらどうだい?」

「え!?あ、はい!」

慌てて扉を閉め、目の前の椅子に座る。

「それじゃあ改めて・・・。」

咳払いを一つして、喉を整える。

「ようこそオカルト研究会へ。私がこの研究会の代表を務める花咲式子はなさきしきこだ。」

美しい笑顔に言葉を失ってしまう。

「君の名前は?」

「あ!ぼ、僕は高宮!高宮優たかみやすぐるです!今年の新入生です!」

「ああ、新入生かい。私は2年生だ。よろしくな優君。」

「はい!」

「さて、先程も言ったがここは部活動ではない。だから入部することはできない。しかし、会員になることはできる。君はオカルト研究会の会員になるということでいいのかな?」

「は、はい!なります!オカルト研究会の会員になります!」

「よろしい。ならば、手始めに軽い話をしよう。」

「え?」

そう言うと、式子さんは何も見ずにスラスラと怖い話を聞かせてくれた。


ある夏の暑い日だった。

A君は夏休み前に失恋し、何もやる気力がなく、惰眠を貪っていた。

失恋する前は部活動に情熱を注いでいたのに、今では見る影がない。

そんなある日に、両親が気分転換の旅行を計画してくれた。

けれどA君はそんな気分にもなれず、旅行に必要な買い物を断り、家に引きこもっていた。

「はぁ。」

何をするでもなく、A君はひたすらに天井を見ては瞼を閉じる。

その繰り返し。

だが、生きている以上お腹が減ってしまう。

それはA君も同じで、二階から降り、リビングにある冷蔵庫を開けた。

中にはおかずは無かったが、プリンがあった。

「何も食べないよりかはマシか。」

お腹を満たすため、A君はプリンを飲み込んだ。

その時だった。

プルルルル・・・プルルルル・・・。

リビングにある電話が鳴ったのだ。

「めんどくさいなぁ。」

嫌々ながらも両親からの電話だったらと思い、A君は電話に出た。

「もしもし?」

「・・・。」

「もしもし?誰ですか?」

「・・・。」

「んだよッ。イタズラかよ。」

「もしもし。」

「え?」

悪戯だと思い切ろうとしていた時に声が聞こえたのだ。

「も、もしもし?」

「もしもしこんにちわ。」

聞いたことの無い子供の声が電話の向こうから聞こえてくる。

「な、何か御用ですか?」

「あなたはやり直したいと思っていませんか?」

「は?」

「思っていませんか?」

「そりゃあ・・・。」

A君の脳裏に浮かだのは失恋の失敗。

やり直せればまたあのと何でもない友達に戻れるかもしれない。

A君はそれ以外、何も考えられなかった。


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