第256話 神楽坂さんの怖い話~何が落ちた?後編~
その夜は泣くCちゃんをほっとけなくて一緒に寝ました。
次の日の朝、様子を見に来た看護婦さんに腕の傷を見られ、すぐに先生に報告され、治療を受けました。
何があった?と、聞かれても私は本当のことを話しませんでした。
誰も信じそうになく、Cちゃんも嘘をついてくれたからです。
代わる代わるにいろんな人に聞かれては何とか適当に誤魔化し続けました。
けれど、唯一婦長さんだけは様子を見に来ませんでした。
「・・・あの。」
「ん?何かな?」
本日の担当看護婦さんが傷の手当をしてくれている時に、私は勇気を出して話してみることにしたのです。
「実は、聞きたいことがありまして・・・。」
「何でもいいわよ。何が聞きたいのかな?」
「その、信じてもらえるかわからないんですけど・・・。」
私は自分が体験したあの出来事を隠さずに話しました。
聞いていたCちゃんも何も言わずにいてくれました。
看護婦さんも最初は作り話と思っていた感じでしたが、次第に真剣な表情に変わりました。
「・・・そっか。そんなことがあったのね。」
「はい・・・あの、信じてくれますか?」
看護婦さんは何かを悩み、軽く自分の頬を叩いて言ってくれました。
「もちろん信じるわ。その、貴方たちにはちゃんと話すわね。」
「え?」
「実は、以前にもこの病院の窓から外を見た人が上から黒い影が落ちたって言っていたのよ。」
「ほ、本当ですか!?」
「本当よ。それから一時期噂になってね。けど、なぜかは知らないけど暗黙の了解でこの噂を話すことが禁じられて・・・。」
この病院には以前から上から落ちてくる黒い影の噂があったようです。
でもあくまで噂。
信じている人も少なく、噂になった時も一人が騒いでいるだけで皆が皆誰もその人の話を信じていなかったそうです。
無事退院した私とCちゃんは今では大学生です。
二人で仲良くキャンパスライフを満喫しています。
「それでねIさん。今、あの病院の全部の病室の窓に、落下防止の対策がされたんだって。」
「へ~。」
あの黒い人影、そして不気味にニタニタと笑う女性は何だったのでしょうか。
それに最初に聞こえたあの音・・・。
何かを知っていそうなのは婦長さんぐらいだと思いますが、私に聞く勇気もなく、関わり合いたくも無いので今後私が知ることはありません。
でも、忘れることもないでしょう。
あの時の傷は今も私の腕に、残っているのですから・・・。
「・・・どうだい?」
す、すごい話だ・・・。
これなら式子さんも!・・・ん?
「・・・。」
「式子?」
「星夜。」
「っ!」
何かに気づいた神楽坂さんは迷わずに膝をつき、式子さんに
それはまるで王にかしずく兵士のように。
そして王はこう言った・・・。
「成長、したな。」
「有難きお言葉!」
涙を流しながら喜ぶ神楽坂さん、それを我が子のように見つめる式子さん。
二人の背景が王宮に見え、それはさながら絵画のようで・・・。
うん、何言ってんだ僕は?
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