第257話 麒麟園さんの怖い話~二人の彼女前編~

「それで?どうかな千夏。」

「いや~すみません式子総司令。なかなかに手強いでありマス。」

今日も元気に部室に訪れると、申し訳なさそうに笑う麒麟園さんと少しだけ不安そうな顔の式子さんがいました。

理由はおそらく総合会議のことだろう。

麒麟園さんや式子さんの顔からあまり良くないことだけはわかる。

「ん?やぁ、優君。」

「優二等兵!」

僕を見た二人は心配かけないように笑顔になってくれる。

それがどこか、寂しい。

なんて、僕の贅沢ぜいたくな悩みだ。

「その、すみません。お話の内容が少し聞こえてしまって・・・。」

「あははは。すみません。自分に与えられた任務もこなせないで。面目無いでありマス。」

「そんな!麒麟園さんは何も悪くないじゃないですか!」

「優二等兵・・・いや、優殿。そう言って頂けると、とても嬉しいでありマス。」

よかった。今度は作り笑いじゃない。

「優君の言う通りだ千夏。あの生徒会長が頭硬すぎるのだ。いい年して娯楽の一つも興味ないなど・・・本当に同じ人間か?」

それは・・・言いすぎのような気が・・・。

「まったくでありマス!昔は『千夏ちゃん!千夏ちゃん!』って後ろをついてきて可愛かったのに。あのような暴君に成長してしまって非常に悲しいでありマス。」

生徒会長の知らないところで暴露される生徒会長の幼少期。

「あ~もう!あの分からず屋に娯楽を叩きこんで篭絡ろうらくさせたいでありマス!!」

「まぁまぁ千夏。そう怒るな。」

え!?怒ってたの!?

笑顔のままだから冗談言ってるのかと思った・・・。

「こういう時は怖い話に限るでありマス!」

肯定しかねるけど怖い話を聴けるのは大歓迎だ!

「今日は自分が話すでありマス!!」

「ああ。では、聞かせてくれ。」

「これは、とある夫婦の不思議な話でありマス・・・。」


30歳の春、僕は大学時代から付き合っていた彼女と結婚した。

正直、ここまで待たせてしまって申し訳ないという気持ちが無いわけではないが、僕にはこうなる未来が分かっていた。

彼女と結婚する。

これは僕が彼女と出会う前から決まっていたのだ。


あれは、小学校六年生の頃だった。

朝目覚めると、僕の部屋に綺麗な女性が笑顔で立っていた。

初めは親戚か誰かかと思い、目をこすりながら彼女に聞いたんだ。

「あの、どなたですか?」

「・・・。」

「ここ、僕の部屋なんですけど・・・。」

「・・・。」

彼女は笑うばかりで何も答えてくれない。

でも、決して不愉快な気持ちにはならなかった。

何故だかわからないけど、彼女を見ていると安心したのだ。

それからしばらく、朝に目を覚ますと彼女がいた。

朝だけではない。

彼女はずっと僕の部屋にいたのだ。

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