第398話 神楽坂さんの怖い話~裸の子供と走る老婆 中編~
それからもバイト帰りに兄はその猫を見たそうです。
「餌欲しさじゃねぇんだよな~。猫缶置いても食わねぇし。何なんだあの猫。」
気になっていた猫も、バイトや大学の課題、合コンと、忙しい日常の中に消えて行ったそうです。
「あ~酔ったな~。」
それからしばらく経ったある日、兄はまたしても奇妙なものを見ることになったのです。
「トゥルッルッル~トゥルッルッル~っと!んぁ?」
酔った兄の目の前を5~6人の裸の子供が通り過ぎて行ったそうです。
「はだか?ん~酔いすぎだな俺。」
酔いのせいにした兄は子供たちを見なかったことにし、マンションに帰ったそうです。
けれど、次の日も、そのまた次の日も兄は裸の子供が通り過ぎるのを見てしまったのです。
「さ、流石に酔いのせいには出来ねぇな。てか、あの子供達ってAちゃんが行っていた・・・いやいや気のせいだろ。うん、そうだ気のせいだ。質の悪い子供のイタズラだ。うん、そうだ。」
そう言い聞かせようとした矢先、兄は裸の子供が、あの猫を抱えているのが眼に入ったのです。
その猫は、兄を睨んでいるようにも見えたそうです。
「・・・は?あの猫って・・・え?」
言い知れぬ恐怖を感じた兄は次の日、無理矢理Aちゃんに会いに行ったんです。
「え?Aちゃん?そういえば最近あの子見てないのよね~。」
「そんなこと言わずに!聞きたいことがあんだよ!」
「いや無理だし。あの子って数合わせだったから仲良くもないし。ここに通えばそのうち会えんじゃね?んじゃね~。」
Aちゃんに会えぬまま、兄は毎晩のように裸の子供を見る羽目になったそうです。
「ほんと何なんだよ・・・はぁ~。テレビでも見るか。」
裸の子供に悩んでいる時、兄は気を紛らわせようとテレビを付けたそうです。
何回かチャンネルを回していると、ある番組が目に留まったんです。
それは農作業着のようなものを着た老婆がひたすら走る映像でした。
田園風景を背に走る老婆。
普段なら興味すら湧かないのに、何故かその時は気になって見入ってしまったそうです。
「なんだこれ?映画、か?ん?林の中に変わったな。」
ボーっと、その映像を見ていると背景がどんどん変わり、見覚えのある風景に変わっていたんです。
「・・・へ?今映ったのって・・・。」
そして一瞬ではありますが、兄の通う大学が映ったのです。
嫌な感じがした兄はテレビを消し、寝て忘れようとしました。
ベットに入って目を閉じようとした時、テレビは勝手についたのです。
「へ?」
そこには包丁を持った鬼の形相の老婆が映っていたのです。
背景に自分の住んでいるマンションと共に。
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