第3話 式子さんの最初の怖い話~後編~
「やり直したい。」
A君の口から自然と言葉が出てくる。
「そうですか。では、やり直しましょう。」
「無理だろ。もう終わったことなんだぞ。」
「出来ますよ。貴方が望むの、ならね。」
「望むって・・・。」
「・・・。」
「あれ?」
その言葉を最後に電話は切れてしまった。
「・・・何だったんだ?」
よくわからないままにA君は部屋に戻ると、先程の言葉に従い夏休み前の告白する前のことを頭の中に思い描いた。
前日、明日告白しようと考えていた自分を。
だが、何も起こらない。
「・・・やっぱりな。はぁ、寝よ。」
A君はそこそこに満たされたお腹で眠りに着いた。
しばらくしていい匂いでA君は目を覚ます。
「ん?」
匂いにつられ、リビングに来ると母親が料理をしている。
「あら?いつ帰ってきたのよ?」
「はぁ?帰ってきた?何言ってんだよ。俺はずっと家に・・・。」
「あんたこそ何を馬鹿なことを言ってるのよ。今日は学校があったでしょうが。」
「はぁ!?」
慌てたA君がカレンダーを見ると、8月ではなく7月のままである。
「は?へ?え?」
「寝ぼけてんじゃないわよ。帰ってきたんならさっさとお風呂に入ってちょうだい。」
「え・・・あ、はい。」
A君は言われるがままにお風呂に入り、何が起きたかを自分に言い聞かせる。
これは夢なんだと。
「以上。お話しはこれでお終い。」
手を軽く叩き、式子さんはお辞儀をする。
「え?これで終わりなんですか?」
「そうだよ。これでお終い。」
「幽霊が出るとかしないんですか?」
「さぁ?」
「さぁ?って・・・。」
「でも、このお話はとても怖いんだよ。」
「え?」
「まず、A君に電話をかけてきたのは誰なんだい?」
「それは・・・。」
「A君は本当に夢の世界にいるのかな?」
「えっと・・・。」
「A君が仮に夢の世界ではなかったらA君はどうなってしまい、振られたA君はどうなってしまったんだろうね?」
「・・・。」
「このお話を聞いた時は少しだけゾクッときたよ。だってA君が目を覚ましたとも、元の場所に戻れたとも言っていないんだ。だからこのA君が過去に戻ったとも言えないしね。」
「確かに。そう言われるとだんだんと怖くなってきました。もしかして電話をかけてきたのは幽霊?なんて。僕はそんな風にも考えてしまいます。」
「ふふっ。これがオカルト研究会の活動だよ。」
「え?活動?」
「そう。会員になった君にも活動してもらうよ。それじゃあ今日の活動はお終い。また、明日だね。」
そう言い残した式子さんは振り返ることもなく部屋から出て行ってしまった。
式子さんが話してくれたこの奇妙な、何とも言えない怖い話は、僕の記憶にしっかりと刻まれた。
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